「おくりびと」を見て

この映画を観る前夜、テレビで日本アカデミー賞の授賞式を見ていたら、「おくりびと」が作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞助演女優賞、録音、撮影、などなど10部門総なめでした。昨年9月に見た人からも、また、東京の息子からも見るように勧められていましたが、近くの映画館にかかることになったので、土曜日(21日)、自転車で行ってきました。

いい映画でした。台詞が少なく、表情のやり取りで事が進んでいくという風で、山形県、酒田の自然、風景、人、訛り、などの空気と音楽が織りなすドラマが心地よい。海外で先に評価されて逆輸入、日本でも評判になってロングラン上映、半年後に地元でも見られるようになりました。映画は確かにローカルで日本的、しかしテーマは普遍的。生と死、親と子、夫と妻、差別とその克服というような普遍的なテーマを、納棺師という極めて独特の職業を通して時にユーモラスに描いています。

ところで! 夫が今この映画を見に出かけているうちに、とキーをたたき始め、気になるのでお昼のワイドショーを見ると、本場アメリカのアカデミー賞外国語映画賞」受賞!!のニュース。オメデトウ!! 実は、土曜の深夜、この映画のことで東京の息子と長話になって、「ひょっとして行けるかも!!」と言っていたところでした。

さて、この映画の納棺師の彼は流れに漂うように生きていますが芯がないわけではない。けど、声高に抗いはしない。妻に仕事のことで責められても、言葉で説得しようとはせず、ただ悲しい眼差しで受け止める。かといって誇りがないわけでない、という青年を本木君が上手く演じています。そして、山崎努演じる社長も、訳ありの事務員の余さんもとってもいいです。奥さんを演じる広末涼子、今回初めていいな〜と思いました。日本アカデミーのステージ上のインタビューで「私の役が一般観客の代表なんだからと言われ、辛いセリフを言うのに苦労しました」と涙ぐんでいましたが、「この映画がそこを避けて通らなかったのがすばらしい」と電話で息子も絶賛。見終わって私は「人間の絆」が描かれていると感じました。

授賞、本当に良かったです。文学(村上春樹さん)と映画では日本は立派に日本人としての存在意義を世界にアピールし、受け入れられ、かつ、正当に評価されています。本当に嬉しいことです。スポーツでも、科学でも、音楽でもそうでした。ということは、後は、政治と経済ですね。がんばれ日本!

昨日の「サンデープロジェクト」で「私は“グローカル”と言ってるんだが、グローバルでかつローカルでなければ」と姜さんが発言していましたが、「おくりびと」ではそれが本当に上手く表現できています。グローバルであることが無国籍であってはいけないということです。普遍的なテーマを極めてローカル(日本的)な表現で提示することに成功し、かつ評価された、ということで、本当にお目出度い!!

因みに、この映画の英語タイトルは「DEPARTURES =旅立ち」で、これもいいネーミングですね!