「菜の花畑の笑顔と銃弾」(NHKスペシャル23日月曜)

新聞番組欄の副題:「アフガンに捧げた青春・涙と感動の記録 *日本人青年の格闘と死」

これは昨年8月28日、アフガニスタンで拉致され非業の死を遂げた農業支援の日本人青年・伊藤和也さん(31歳)の死を考える番組でした。この事件の後、責任者の中村哲氏は日本人ボランティアを全員帰国させましたが、番組の映像で一人残った中村氏が現地の人達と一緒に活動している姿をみることができました。

伊藤さんの残した沢山の写真がどれも本当に素敵でした。2003年12月にアフガニスタンの現地に入った当初は作物の成長記録のような写真で、日本にいる農業の先生に教えを乞うための記録であったとのこと。それが現地の子供たちの「写して」というおねだりに応えて撮っているうちに人間的な交流が生まれ、それとともに写っている子供たちの表情に変化が表れます。それを見ていると伊藤さんが現地の人たちに受け入れられて信頼されていく様子がわかります。

アフガニスタンでの水路の完成にともなって茶色の大地が緑色に変った映像には驚きました。水が景色をこんなにも劇的に変えてしまうのか!と思いました。水を引くことによって不毛の大地にも野菜や果物、トウモロコシやサツマイモが育ち、人々は生きていくことができる。そのお手伝いを日本の青年が懸命にやっている。

ところがアメリカ軍が増強されるにつれて情勢が危うくなり、日本の自衛隊が洋上で給油を引き受けると日の丸をつけた車も危険になり、最後には日の丸を消して走ることに。このあたり、日本に居ては分らない日本の役割が見えてきます。アフガニスタンの復興に伊藤さんたちがやっていることと、日本の自衛隊のやっていることと、一体どっちが本当にアフガニスタンの人々の役に立っているのか。

菜の花畑でほほ笑む青年の志がなぜ途中で断ち切られなければならなかったのか。本当に残念なことです。でも、広場にお墓を作って伊藤さんの遺志を継ごうとする現地の方たちの農作業や水路を作る活動と、伊藤さんのカメラが捉えていた2年にわたる苦労の末に実ったサツマイモをかざす子供たちの胸の中に、そしてアフガニスタンの大地に、彼が生きた証は生き続けると思います。

アメリカは、イラク撤退のあとはアフガニスタンに兵力増強と言っています。アメリカと違って、日本には中村哲氏のペシャワール会があります。現地で尊い活動を文字通り命がけでやっている日本人の声を聞かずして日本政府のアフガニスタン政策があっていいはずはないと思います。
伊藤さんのような活動をしているアメリカ人が一人でもいるでしょうか?
伊藤さんの死を無駄にしないでほしいと思います。日本とアメリカは同じではありません。
明日、オバマ大統領と会う麻生総理のお土産?の中身が気になります。