カーニュ・シュル・メールの午後(7日・日曜日)<3日目>

ルノワールの樹齢数百年のオリーブの木々越しにはるかに見えたグリマルディ城のあるオ・ド・カーニュには無料バスで。
バスを降りて、中世の城門が残る城壁を回って広場に出ると奇妙な形の一本松が見えて、素晴らしい見晴らし。
青空に雪を頂いた山並みまで見えます。きっとアルプスでしょう。
ここもそうですが、ルノワール美術館も12時から14時までは休館。広場にあるレストランの外、パラソルの下で食事にしました。
時間が来てお城の中に。今日は月初めの日曜なのでルノワール美術館との共通券が無料とか。ラッキー!!

お城は外観は石造りのがっしりした中世のものですが、内部はルネッサンス式のなかなか優美な装飾が施されています。
たくさんの展示品があって、ザーッと見ながら、窓から見える景色にどうしても目が行ってしまいがち。
一部屋に特別の展示が、それはある一人の女性を沢山の画家が描いたもので一杯になっています。
この女性、1930年代に活躍したシュジー(スージー)・ソリドールという歌手だそうです。生涯で244人の画家のモデルになったとか。その内の40点が寄贈されて展示されていました。なかには藤田嗣治、キスリング、デュフィコクトーのもあったとか。
とにかく窓越しの外の景色に気を取られ、広いお城の中を上へ上へと、進みますと、いよいよ狭く急な階段がどこまでも。
まさかと思ったテッペンにでてしまいました。広さ4畳半ほど、広場の下で食事中鳴っていた音はここに立っている旗が強風をうけて音をたてていたのでした。なんとなんと青い地中海が見えます。アルプスらしき山々も見えます。360度の景観です。山里も山並もそして海まで。絶景かな、絶景かな〜です。

このお城の一階にはオリーブの木博物館があって、これも見ごたえがありました。最初入口の外側に転がしてあるような大きな穴あき石を見たとき、思わず「お金?」とか言ってしまいましたが、石器時代じゃあるまいし、で、これはオリーブをしぼる石臼の石でした。オリーブの実の徹底利用の工夫の跡です。前日のお土産やさんで見た穴の開いたまあるい柄杓、いったい何に使うの?と思っていたらオリープを掬う柄杓でした。穴からオリーブ油がでて、柄杓の中にオリーブの実が残るわけです。

帰り、途中まで歩いて、前日のエズ村でみたような中世の石畳、石造りの家々の小路を下っていくと、運良く無料バスに出くわしてバス停まで。
ニース行のバスで3時過ぎに着。お昼のレストランの昼食や、昨日のエズシャトーでの豪勢な昼食のコース料理の余韻がまだ残っているので、今夜はパンや飲み物を買いこんで、F氏の広い方の部屋でニース最後の夜のルームパーティということに。

フランスのパンはどれもおいしい。12年ほど前、オーストリアのウィーンでEさんとおいしいサンドィッチの店を見つけ、翌日リンツへ向うカラヤン号の列車に昼食代りに持ち込んだことがあったのを思い出しました。こちらのサンドィッチも生ハムやツナと野菜をはさんでおいしいものでした。

さて、ルームパーティ。約束の7時にお部屋を訪ねるとお二人がサイドテーブルを移動させ上手にセッティング。

夫が誘ったF氏とは、技術屋のF氏と営業の夫が二人で組んでヨーロッパを日本の製品を売り歩いた30代の頃からのお付き合いで、夫の方が去年行ったスイスと食べ物が美味しいプロヴァンスへと強い希望を持っていました。私は、いつも二人の弥次喜多道中の話をきいて楽しそうでいいなぁ、旅をするならこんな旅がしたい、と思ってきました。お互い夫たちは出張先では泊めてもらったり泊まってもらったりでしたが、今回、F氏の奥さん、Fさんとは去年東京でお会いしていましたが、正直、大丈夫かな〜と心配もありました。でも、話が30代の頃の夫たちの働きぶりになり、Fさんがその頃から私と同じようなことを言っていたと知って不安も解消。

二人とも仕事熱心ではあっても上司や社長の覚えめでたくあるわけでなく、逆に本人たちは、二代目社長が取り巻き連におだてられてと批判的なくらい。うまく立ち回ることもできないし、しないし。誰もやったことのない欧州市場の開拓は自分たちのアイデアでやりたい放題…実は苦労も努力も人一倍なのは身内としてはわかっても、社内的には面白く思っていなかった人たちもあったろう、とあれから2,30年も経った今、F夫妻は定年後の第二の仕事で家を娘に預けて川崎のマンション住まい、わが夫は大震災の年に会社を辞め、転職五回目の在宅仕事をする身、当の本人たちも、すっかり冷静になって、4人で昔話になりました。
そんな中、お互いがお互いを理解しカバーし合える最良、最強のコンビだったと感謝している、と私が言ったら、Fさんも同じと。それに、F氏も会社の悪口を言うと、「その会社のおかげで子育てが出来たんじゃないの」と奥さんに言われたとか。Fさんも私と同じことを言ってたようです。一気に親しみを覚えてしまいました。同い年の一か月違いということも分かってビックリしたりも。

話が弾んでお二人の馴れ初めを聞き出すことに。30年以上もつきあっていて夫も聞いたことがなくて知らなかったとか。若いころの話や長期出張中の子育ての話など、あれやこれや尽きない中、10時半でお開きに。ニースの最後の夜も終わりました。
明日は長距離バスでセザンヌの街、エクス・アン・プロヴァンスへ向かいます。