セザンヌのエクス・アン・プロヴァンスへ <4日目>

8日(月曜日)
ニースを後にする朝、ホテルの前のコートダジュールの美しい海岸と海の色をもう一度よく見て、長距離バスターミナルまでタクシーで。これから2時間半ほどかけてエクス・アン・プロヴァンスへ。
車窓の変化がよくわかる。麦畑から低く剪定する独特のブドウ畑が現れ、地層むき出しの荒々しい山が飛ぶように見えてくる。ひょっとするとあれがセザンヌが何枚も描いたサント・ヴィクトワール山?というような山影が見える。
[  ]
噴水のある広場近くのアールヌーボスタイルのホテルに11時半到着。すぐ荷物を置いてプラタナスの大木が並木になっているメイン・ストリートのミラボー通りを歩いて、一筋入った裏道においしいパン屋を見つけた。早速斜め向かいのカフェで昼食。人気のパン屋らしく長い行列ができている。

さて、いよいよセザンヌのアトリエ探し。広場の近くの旅行案内所(インフォメイション)を訪ねて地図をもらい、バス停を教えてもらう。高台の中ほど、13時40分頃にバスを降りる。誰もいないし、看板もなく、路肩に腰かけている若い人に尋ねても多分というような返事。
らしき門扉は閉じている。14時まで休憩らしい。サント・ヴィクトワールが見えるというローヴの坂道を歩いてみようということに。
坂道のテッペンに着くと、石の門柱と鉄製の古い門扉だけが建っている。鉄の格子を覗いてみると下り坂が見え、自分の目の高さの上方になんと!あの山が。セザンヌはここで11点の油絵と17点の水彩画を描いたという。山の形に見覚えがあるはずだ。

ルノワールのアトリエによく似た木の扉が今度は開いていた。中に入ると木が茂った中にアトリエが。二階に上がるとフランス人の団体さんがフランス人ガイドの解説を熱心に聞いているところ。私たちは生前そのままに置かれている様々な道具や飾ってある果物、鞄、椅子、外套などを見て歩く。
1839年生まれのセザンヌルノワールと同じく晩年(1901〜1906没)にこのアトリエを建て、毎日自宅のアパートから通って絵を描いた。「大水浴の女たち」という大きな絵はここで制作され、搬出のための幅約30センチ高さ3メートルほどの穴が2階の部屋の隅に開けてある。素敵なたたずまいのアトリエで庭を一巡りして置いてあるイスに腰掛け、あちこちにあるガラスのオブジェを眺めたりして過ごした。

本日の目的を達して帰りはゆっくり歩いて下りながら観光しつつ市街へ。サン・ソヴール大聖堂。フランスで最も古い時代(2世紀とも5世紀とも)の建物が含まれている。12世紀ロマネスクの回廊は入場制限があって外から眺めるだけに。近くのカフェのテーブルに腰かけて、ビールとジュースで乾杯して一息いれる。

明日は移動を兼ねての観光ドライブ。現地の日本人スタッフから確認の電話が入り、この人に、バスの中へリュックを置き忘れた夫が頼んでみると「やってみるが駄目だと思って」という返事。ところが、ここで携帯に電話が入って「見つかった。奇跡! 4時半にボナパルトのバス停で運転手から受け取るように」という連絡が入る。3人はゆっくりウィンドウショッピングしながら戻るからと夫のみバス停へ。合流して広場のセザンヌの像の前で記念の写真。一度ホテルへ。

出直して、ミラボー通りを歩く。プラタナスの巨木が続くこの通りはお土産物屋が思い思いのプロヴァンス自慢を出展していてお祭りのよう。アヴィニヨンで見たプロヴァンス柄の生地やランチョンマット、テーブルクロスなども勿論並んでいるし、中にはヤシの実で作った自作の楽器を並べている人も。父から頼まれていたコーヒーカップがないか探しながら歩いていると、薄焼きの白地の陶器を並べている屋台を見つけ、よさそうなカップ&ソーサーが2客。英語は通じなかったが、カップはスペイン寄りのフランスで作られたもの。作った人本人なのか、その知り合いなのか、名刺も貰った。

さて、そろそろ夕食にと適当なレストランを探すが、どこも怪しげで決められない。大噴水ロトンドのあるド・ゴール広場に面したレストランの親父さんに立て看板のようなメニューを夫が英語で確かめるが英語が通じていない。「ドッグ」と言うので「ドッグ(犬か)?」と聞くと「そうだ」。「CANAL」とあるのを夫が勘違いしてラクダの双コブを手で描くと「そうだ」と言う。何を食べさせられるかわからないし、ここだけ異様に先客がいない。結局「地球の歩き方」にも載っている私達が今日一泊するホテル「サン・クリストフ」のレストラン「ブラッスリー・レオポール」が安全、安心ということで戻る。

ホテルは古いが便利な場所にあって、ここで一人旅の旅慣れた感じの日本人女性に話しかけられた。演奏会や美術展を巡って一か月くらいプロヴァンスを歩いているとかで、ピカソ展を薦められたり、コンサートはチェックすべきと助言される。夕食のレストランでも外側のテーブルにこの女性が。
評判のレストランなので「お薦めは?」と聞くと「ウサギ」というので、犬やラクダよりマシと挑戦してみることに。味付けが濃くウサギの味はわからない。デザートに果物を頼むと一皿4人分?というほどの量でビックリ。件の女性が去り際にご挨拶、明日は早朝別の町のコンサートへとのこと。
学生時代にオーケストラでフルートをやっていたF氏は大いに心ひかれた様子。この旅行中にコンサートの予定が入りそう。