[あの戦争から遠く離れて」

あの戦争から遠く離れて―私につながる歴史をたどる旅 4月中頃からNHKで放送された土曜ドラマ「遥かなる絆」の原作を読み終えました。
            この作品はすでに大宅壮一ノンフィクション賞の受賞作品で高い評価を得ています。 
            「帯」と「カバー」の紹介分を引用しておきます。

 21歳の秋、旧満州に飛び込んで、中国残留孤児だった父の壮絶な半生を追うー 
 二つの国の間で揺れ動く「日本生まれの中国残留孤児二世」が、10年がかりの旅の果てにみずみずしい感性で描く壮大な感動のドラマ。

 「私」が生まれるはるか前の、「私」につながる大切な物語。
 私には、父の人生を知ることが必要だった。日本人でありながら「残留孤児の子」であり、残留孤児や二世、三世からは「ただの日本人」に見えるという「日本生まれの残留孤児二世」。 そんな、どちらでもありながらどちらでもない私の「存在(identity)」が、そうすることを求めていた。まるで居場所のないイソップ童話のこうもりのような自分は、どこからやってきたのかー を確かめるために。


第一部「家族への道」(父の時代)、第二部「戦後の果て」(私の時代)という構成になっています。
ドラマでは城戸幹さんの帰国までが丁寧に描かれていましたが、娘である城戸久枝さん自身の体験を描いた第二部が良かったです。
2年間の中国留学体験、中国での「反日」感情の体感? 父親の家族・親せきとの交流、
日本に帰ってから残留孤児の国家賠償訴訟に関わるなかで知ることになる父親の国家に対する思い、
そして、「軍人」であったという祖父が実は「満州国軍」という日本人でありながら外国軍(満州国)の軍人という奇妙な身分、
面影の祖父と父の数奇な運命を丁寧にたどって行くなかで、かけがえのない「私の存在」を自分のものとして行く過程、
隣国中国の人と国家とが複雑に絡んだ、個人史であり日本の歴史でありという「物語」が、胸に迫ってきます。