「星守る犬」

星守る犬

星守る犬

昨日、息子が手渡してくれた本。泣かせる本のトップに選ばれたマンガだそうです。[「ダ・ヴィンチ」BOOK OF THE YEAR 2009、「泣けた本」ランキング第1位、「読者が選ぶプラチナ本」第1位 W受賞]という赤い帯が巻いてあります。

読み出すと確かに引き込まれて止められなくなります。一話が終わったあとで「日輪草ひまわりそう」という別のストーリーがあるのかと思うと、これが一話を補完するというか、2話で犬つながりの一つのお話という仕組みになっていて、上手く出来ています。

リストラされ、妻にも離婚を求められた「ごくごく普通の父親」だった男性が犬を連れて最後は動かなくなった車の中で餓死。可愛がられた犬が死後何ヶ月も寄り添ってやはり死んでしまって・・・というのが一部。第二部は孤独なケースワーカー(50歳くらい)がたまたま後始末することになり・・・
今朝、息子に感想を求められて、答えました。
無心の犬の可愛さは憐れを誘うし、本当に何も悪いことをしているわけではない弱い立場の人たちの物語が発信されるのはよいことだし、こういうお話が読まれるのは良いことだと思う。でも、先週、NHKの「クローズアップ現代」で30代の青年たちのホームレスや路上で亡くなる人が増えている話が取り上げられて、現実はこの本を超えていると思う。この話は50代くらいの話になっているけれど、いまはもう、30代の、本当だったら働き盛りの青年たちが、仕事に就けなくて、それも悪いのは自分だと思い込んで自分を責め、惨めな姿を親にも見せたくないと孤立する。
この本の中にも「小泉改革がもたらしものは こういうことだよ!!」「ひとはおうおうにして 我が身の不幸を何かのせいにして − 精神のバランスをとろうとするんだ」と言わせています。私は小泉政権が「自己責任論」で国家の果たすべき役割をサボる免罪符にしだした時、本当に日本はどうなってしまうんだろうと思いました。
この本は初出が2008年8月となっています。その当時の世相を物語りにしたものです。それから衆議院の選挙があり、こういう世の中を変えてほしいと政権交代が実現しています。そして、30代のホームレスや路上死者が増えているという現実。マンガを現実が超えているという事態に、私は、どちらかというと、クローズアップ現代の方が泣けた・・・(マンガを読んだ時期が悪かったかな〜?)