「蟹工船」、海外で新たなブーム

バンクーバーでの冬季五輪も大詰め、白熱の競技に寒さも感じず?(暖かい日が続いています)毎日楽しませてもらっています。
ところで、先日、NHKの番組(24日・歴史秘話ヒストリア「「たった一人のあなたへ〜“蟹工船小林多喜二のメッセージ〜」)で、小林多喜二の「蟹工船」がブームになっていることを取り上げていました。
私は中学生のとき学校の図書室でこの作品を読んで、続けて「党生活者」を読みました。去年か一昨年あたりからの日本でのブームのニュースに、余りに時代錯誤?なブームで何でだろう? それも若い人たちの間で?と不思議でした。でも、若い人たちが今の自分たちの境遇を蟹工船の労働者たちに重ねて見ているということを知って考え直しました。

毎朝、隣に住む両親を呼んで私たち夫婦とコーヒータイムを持っています。祭日か休日の朝で、珍しく息子も加わって5人で話していました。世相の話か何かのときに、「今は大変だ」という話をしていて、私が「両親の世代は戦争もあって、戦後はもっと大変だった時もあったでしょう?」と話をふったら、大正5年生まれの無口な父が、「失業の心配はなかったからな〜」といいました。一同、し〜〜んとしてしまいました。昭和18年生まれの夫も、失業の体験は何度も?ありましたし、転職も何度もしています。30代の息子は卒業時が就職難の時代と重なっていましたし、転職の経験もあり、今は外資の傘下にある企業で正社員が自宅待機を迫られているような環境で働いています。隣に住んでいて、今まで何にも言われたことはありませんが、自分より若い世代が直面している大変さを父なりに感じていてくれたのかと思いました。

蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

それが、日本に限らず、世界で「蟹工船」がブームになっていて、ヨーロッパでも、アジアでも翻訳されて読まれているというのです。フランス語版や中国語、韓国でも「蟹工船」が読まれているといいます。労働環境が世界的に「時代錯誤」なほど劣悪なものになっているという現実です。
多喜二は、東京に出ても弱い立場の労働者の側に立って生き、共産党に入党、警察に執拗に追われながらも作品を発表し続け、拷問の末に命果て、仲間がとったデスマスクが小樽の記念館にあるといいます。29年の生涯だったといいます。

25日の読売夕刊によりますと、郵便不正事件で、虚偽有印公文書作成などの罪に問われている厚生労働省元局長・村木厚子さんの大阪地裁の公判で、「ウソ」の証言をした元係長が「取り調べ検事に心理的圧迫をかけられた」と証言した。「冤罪」が仕立て上げられるシーンを証言したということです。同じ日の日経夕刊ではもっとハッキリと書かれています。まず、見出しが<「供述調書でっち上げ」元係長、元局長と共謀否定>とあり、<「(村木被告から指示を受けたと認めた)供述調書は検事のでっち上げの作文」「(供述調書の)生々しいやりとりは全部うそ。検事が怖くて署名した」と取調べの当時の状況を述べた。>となっています。

こんな<検察「特捜部」は本当に必要か>と、あのオウム事件で徹底追及したジャーナリストの江川紹子さんが書いているブログを見つけました。
http://www.egawashoko.com/c006/000319.html(←ここをクリックしたら入れます)

検察のリークをそのまま流した新聞(テレビの報道番組も)は間違っていても訂正記事を書かないことがあります。私たちは間違って流された「事実」から描いた印象で感情的な結論を持ってしまいます。たとえば、小沢事件では、「5000万円をホテルで紙袋に入れて渡すのを見た」というニュースは間違っていたという訂正を載せた新聞もあったそうですが、渡したことが前提で話されています。アメリカで駐米大使が「呼びつけられた」と報道され、クリントンさん自身が否定されたことは記事にもならず、「アメリカが怒って呼びつけた」ことが前提で話されています。
マスコミが流したニュースは、それがたとえ間違っていたとしても「事実」として、それを前提で、「世論」は形成されます。
こういう検察やマスコミに対して、権力の横暴と闘ってきたはずの共産党小林多喜二が入党していた共産党も、なぜか何も言わない時代です。
事実はどうなのか? 判断の材料がゆがめられていたのでは、正しい判断は出来ないし、なぜ、ゆがめられるのか? を知りたいとも思います。