[在日」を読んで

在日 (集英社文庫 か 48-1)

在日 (集英社文庫 か 48-1)

先週、新書の「悩む力」を借りたとき、同じ著者の姜尚中(カン・サンジュン)著の文庫本「在日」も借りていました。

先に「悩む力」を読んだのは、こちらの「在日」の方が内容が重そうだと思ったからです。
2004年に講談社から刊行されたものに2008年、文庫化の際に大幅加筆されたもので、写真入り、8章に渡って書かれています。
1950年(昭和25年)朝鮮戦争の年に熊本で生まれた在日2世永野鉄夫が姜尚中になるまでと、なってからの自分史です。

予想通り重い内容で、昨日、金美齢さんがざこばさんの案内で在日の方たちと会って、「いつまでも差別、差別と言って過去に囚われていないで! 一緒よ、いっしょ!」と仰っていたことを思い出します。在日の方たちが体験されてきた日本人や日本社会からの差別と台湾出身者への日本人の対応を一緒に出来ないのでは?と日本人の私でも思ってしまいます。金さんの励ましは分かりますが、差別の拘りや記憶の深さや重さは計り知れないと思います。
時系列の自分史ですので当然日本と韓半島(韓国と北朝鮮)の1970年代からの出来事や、姜尚中になってから、ドイツへの留学や、マスコミを通して発言をしていく1990年の湾岸戦争以降、また、2000年の金大中大統領の太陽政策について、と語られ、読み進むうちに日米中韓の関係史やソ連崩壊、イラク戦争と世界の動きを紐解く思いがします。
昭和が終わって、世界も冷戦構造が終わり、時代が音を立てて崩れるように変化し、日本がまるで壊れていくようなあたり、姜さんは、「日本国民の在日化」という、いかにも在日の方でしか言い表せない表現をされていますが、的確です。
いつも、議論が白熱化すればするほど冷めた調子で発言される不思議な存在だった姜尚中さんの人となりが分かったような気がします。
NHKの金曜の討論番組にも出演されて発言されていましたが、姜さんの悲願である「戦争によらない平和的な南北統一を目指して」という姿勢はいつも変わらずです。日曜日の「たかじんのいつまでも反中でいいんかい」の中で三宅さんが流された涙は「だから戦争はやってはいけない」に繋がるのだと
私も思っています。 アスパラガス・スマイラックスの花