普天間問題から考える日本

5月に入ってからの鳩山首相の沖縄についての言動については、ビックリもし、ガッカリもしますが、並みの発想で事を運んできた首相ではないので、5月末まで、まだまだ解らないと、かすかな期待もしつつ、自分でも意外と落ち着いています。それに、総攻撃の矢面に立って難局に悩む首相は今の日本の姿そのものにも見えますし。
岡本行夫氏、あの小泉政権時代から外交の助言者・相談役というか、自衛隊イラク派兵を推し進めた人でした。そのごNHKの番組で、イラク核兵器があると言ったのは間違っていたと認めた人、その時、「アメリカが掴んでいると思ったんだけどな〜」とはからずも本音をもらしたのを聞きました。「アメリカが持っていると言ったからイラクにあると思った」ということです。正直な人ですが日本人としてはガックリな人でした。
その岡本氏が、去年の12月、首相官邸に入って鳩山首相と話をしたというニュースが流れ、この時からヒョッとして変わったかな…と不吉な感じがしました。政権交代実現当初、首相の助言・相談役?として寺島実朗氏の名前が挙がっていましたが、今年に入ると、寺島氏からは、首相を見限ったような批判的発言が聞かれるように。これはもう駄目かな〜という気がしないでもありません。でも、常識的判断では予想できない宇宙人の鳩山さんなので、豹変の可能性はあるかも・・・とやはり、5月末を待っています。
「日本辺境論」の内田樹氏が普天間問題について書いておられます。
是非、ご覧になってください。内田樹さんのブログ:http://blog.tatsuru.com/ 一部、引用してみます。

日本国民は国内の米軍基地を「いずれ撤去すべきもの」と思っているのか、「恒久的に存続すべきもの」と思っているのか、どちらか、である。
私は「日本国内にある駐留米軍基地がすべての撤去されること」を求めるのは主権国家として当然の要求であると思っている。
メディアの論調を徴するに、国内に治外法権の外国軍基地が恒久的に存続することを「望ましい」と思っている人たちもおられるようだが、その方たちにはその理路をお示し頂きたいと思う。
そして、多少想像力があったら、私に向かって説いたのと同じことを、例えば幕末の京都の四条河原や、日露戦争中の日比谷公園で道行く人に声高に説き聞かせた場合、誰にも殴られずにいる可能性がどれくらいあるかについて考えてみるとよろしいかと思う。
私はとりあえず、「国内に治外法権の外国軍の駐留基地を持つ限り、その国は主権国家としての条件を全うしていない」という一般論についての国民的合意を形成したいと願っている

普天間基地移設の問題は、内田氏の言われるように、米軍基地が日本国内にこんなに沢山、敗戦以後こんなに長くある事態を主権国家としてどう考えるのか?という問題であり、先日の「通販生活夏号」の寺島実朗氏に言わせると、「不自然と思わないのは常識が欠落している、対米協調・対米依存外交を不自然と思わない思考停止状態だ」ということになります。
政権交代をきっかけにこれ以上の基地を望まないのなら、基地移設は「県外」ではなく「国外」でなければならなかった。
普天間基地撤去、返還でなければ、鳩山さんの言う「少なくとも県外」となり、日本国内たらい回しの行き先探しをしなければならなくなります。もし探さねばならないとしても探すのは日本に基地を置くアメリカの仕事です。鳩山首相としては、一生懸命やってみたけど、沖縄も徳之島も駄目だった、日本国内どこも引き受ける場所はありませんので、どうぞお引取り下さいと、日本の首相として覚悟を決めてアメリカに伝えることになれば、今度は自民党だってそういう鳩山さんを攻撃できないのではありませんか。まだ、まだ、チャンスはあるので、鳩山首相の決断が待たれます。

日本人が本気なら、アメリカも応じるはずです。もともとグアムへ移動させる計画があるのです。なぜ辺野古に拘るかといえば、お互いの前政権が決めたからであり、決まっているなら、既得権益をみすみす手放すことは・・・というだけのことです。外交官OBや政治家の中には「現政権が馬鹿なことを言っても、どうか見捨てないで下さい。日本を守ってやってください」とお願いしている方たちもいるそうです。こういう人たちが多数派だと思われているから日本での既得権益を失いたくない勢力がアメリカでもまだ幅を利かせているわけで、日本人が本気で日本の米軍基地の適正数や規模を考え始めたり、あるいは基地撤廃を本気で願えば、アメリカも変わらざるを得ません。現にフィリピンや韓国では国民の反対で米軍基地はなくなっています。
要は、日本人の本気度が試されているわけです、今!

龍馬伝」の幕末に、攘夷、開国と命がけで自主独立の国民国家日本を目指して戦っていた先輩たちが、敗戦後65年経ってなお首都圏に占領時代のままの外国の軍隊が治外法権に近い状態で存在し、いま、沖縄の普天間問題で揺れるこの日本の現状を見て、どう思うだろうか? 
アジアの独立先輩国として明治政府は、隣国の韓国の「自主独立」を清国に求めたこともあります。
政治的な立場や考え方が違っていても、「自立した日本」を目指すという一点で日本人は一つになれるかもしれません。

在日米軍が抑止力だとか、中国や北朝鮮の脅威論を説く人たちがいますが、あれは日米関係(軍事的にも政治的にも)の現状維持を唱える日米両勢力が変化を怖れ、既得権を失いたくないための理屈であることを見抜く必要があります。その為には、米国内にも日米関係を別の見方をする人たちがいて、その人たちがどういう意見をもっているか知る必要もあります。(例えば:http://blog.tatsuru.com/2010/05/11_1158.php) また、日本のマスメディアの多くが一方的に現状維持派の考えで論評し、バランスの取れた情報提供をしていないことも批判すべきです。過去にワザと無視したり、誤った情報を訂正しない例があったことも思い出すべきです。

鳩山首相の哀れに見える様子はあれは今の日本の姿そのものです。アメリカの抑止力論に乗ってしまい、普天間移設を国内でと、アメリカに一切問題を投げかけないで全部日本で引き受けてしまえば、おろおろ持って行き先を探さなければならなくなります。勇気を出してこれ以上の基地はもう沖縄にも日本にも要らないと、沖縄の9万人の集会のような集会が本土の大都市で起これば、世界のニュースになり、アメリカや日本の辺野古固執勢力だってごり押しは出来なくなります。鳩山首相がもう一度豹変するチャンスはありますし、本土の人間が立ち上がる機会もまだあります。


日米同盟とか、対等の日米関係というのは自立した国同士のこと。首根っこ押さえられて言いたい事を言わず、言えず、弱いものに押し付けて知らない振りをするでは、恥ずかしい。自立した日本、国家主義でもなく、民族主義にも陥らず、もう一度、日本の安全保障についてよく考え、自立の方向を目指しながら、日米関係を新しい関係にしていく。その為に必要なのは、米軍の存在が生活と直結して利害関係にある人たち(沖縄や徳之島、日本にある基地・横田や三沢、横須賀、岩国などの基地周辺に住んでいる本当に困っている住民、また基地なしでは困るという住民、米軍の存在を前提とする今の日米関係が継続することを生活の糧としている文筆言論人、恩恵を得ている企業や政治家などなど)以外の私たちが、日本人としてどう考えればいいのかを本気で考えて行動(投票以外にもアピールのための)する事ではないでしょうか。
一人ひとりが今龍馬や今海舟にならなくっちゃ!
 五月の花の季節の白昼夢に終わらぬことを