「平和宣言」と「パグウォッシュ会議」

朝のNHKニュースであのネグレクトで亡くなった桜子ちゃんと楓くんの若い住人たちのその後を取り上げていました。
若い人たちの感受性と行動力の素晴らしさに涙が出ました。隣の部屋に住んでいた青年は、壁の向こうで助けを求めていた幼い命の事を考えると普通ではいられないと云いますし、若い女性はたとえもっと大きな声で泣き叫んでいたとしてもそのときの私は誰かが通報してくれるだろうと人任せにしていただろうと涙ながらに悔いています。そして彼女、彼たちは住人同士で話し合いを持ち、せめてこのマンションに住んでいる人同士はお互いに関わり合おう、あの母親だって声をかけていれば救われたかもしれないと事件について語り合いました。これからも話し合いを続けお食事会を持ったりするそうです。
幼い二人の死が無駄にならないように若い人たちが動き始めました。本当に嬉しいニュースでした。


広島の昨日の平和記念式典、初参加の米英仏と国連事務総長、やはり、昨年のオバマ大統領のプラハ演説の影響が大きいようです。この流れが勢いを増す方向に行って欲しいと思います。パン国連事務総長の積極的な関わり方が力強いですが、やはりルース米大使の厳しい顔が印象に残ります。夕刊によると、大使の出席そのものが「無言の謝罪」であり、承服できないと、広島に原爆を投下したB29 爆撃機エノラ・ゲイ」機長の息子(66)が批判したとか。「われわれは戦争を終わらせた」と原爆投下の正当性を強調、大使の出席は「歴史の書き換え」に繋がると主張しているそう。テレビの夕方のニュースでは、アメリカでのインタビューで街行く人が「当然のこと」「いくら戦争中とはいえ落としたことは謝罪してもよい」と言う人もいるくらい。アメリカにおいても、世論の大きな流れが核廃絶の方向であれば嬉しいのですが。

全く関係のない、でもちょっと気になる話題を。ユネスコの前事務局長の松浦という方のワインのお話から(日経5日夕刊「こころの玉手箱」)。
1937年(昭和12年)は、半世紀に一回というようなフランスワインの当たり年だそうです。パリの有名レストラン「マキシム」で98年、倉庫の古いワインを競売にかけることになって、ボルドーの1937年ものの高給ワインを数本手に入れたそうです。当時、小渕恵三首相を囲む「丑の会」があり、参加者は首相を含め全員同級の37年生まれ。松浦氏は99年初めのその会で、37年ものワインの中からとっておきのシャトーマルゴーを開けて、同じ年のワインを大いに堪能してもらった。その翌年、小渕首相は急逝された、という思い出を書いておられます。美味しいワインと同じ年生まれならではのエピソードです! ちなみに1937年はスペインのゲルニカで世界初の無差別爆撃があった年だという事を昨日のNHK吉永小百合の原爆詩朗読の番組で知りました。

もう一つ、同じく木曜の夕刊、「ひと脈々」から、原爆に関する話題で、科学者の平和運動についての記事を。
核廃絶、湯川・朝永の志継ぐ」という大見出しで科学者の立場から核軍縮を訴えるパグウォッシュ会議について取り上げられています。

パグウォッシュ会議
 米国とソ連の水爆開発競争が頂点に達した1955年、アインシュタインと英国の哲学者バートランド・ラッセルが中心となってラッセル・アインシュタイン宣言」を提唱。核兵器廃絶と科学技術の平和利用を訴え、湯川秀樹ら科学者11名が署名した。
 それを受けて57年、カナダの漁村バグウォッシュに10カ国22人の科学者が集まって開いたのが「バグウォッシュ会議」。湯川や朝永振一郎らも参加した。同会議は95年にノーベル平和賞を受賞した。

ここで紹介されているのが、核抑止力についての興味深い話。平和宣言で秋葉市長が日本政府に「核の傘」からの離脱を求めましたが、政府側は「核抑止力は必要」と答えました。その「抑止力」についての35年前の話です。引用してみます。

 1975年8月、京都市で開かれたパグウォッシュ会議シンポジウム。議長の朝永はいらだっていた。
 湯川は5月に前立腺がんが見つかり、2回の手術の後遺症に苦しんでいた。医師の反対を押し切って車椅子で開会式に現れ、「核抑止の考えが、核拡散を招いている」と主張。核廃絶を目指す「湯川・朝永宣言」への賛同を呼びかけた。だが現実論として核抑止を支持する参加者は多かった。
 「あれを使おう」。朝永は”秘密兵器”を出す。投下1ヵ月後の被爆地を科学者が調査した記録映画「原子爆弾の効果 広島・長崎」(当時の題名)を上映したのだ。会場の雰囲気は一変し、ソ連を除く28人が宣言に署名した。帰りの新幹線で朝永は上機嫌だった。
 これが57年に発足した同会議が核廃絶という原点に戻る契機となり、95年にノーベル平和賞を受賞する。

そして、脈々とこの科学者の良心は日本の若い科学者たちに受け継がれているという記事です。
 
普天間の問題で、鳩山政権が核抑止力を認めたことは、最大・最悪の失政ではないかと思います。残念なことです。