11月のお茶のお稽古

今回は急な御用で一人お休みのため2人でのお稽古でした。

お部屋を開けるといつもは感じなかった濃厚なお香の香りが漂っていて、つい「いい香り〜」と口に出していました。
後から聞くと11月というのはお茶にとってはなかなか大切な始まりの月のようです。
まず、床の間にかかっている軸は筆捌きも大胆・黒々と「開門多落葉」。門を開けると落葉がたくさんという意味でしょうか、晩秋の時期にピッタリです。お花は山ぼうしの紅葉と椿の固い蕾。私は「山茶花ですか?」と訊ねたのですが、山茶花はお茶席には使わないそうです。香合は陶器の石臼を象(かたど)ったもので思わず「可愛い!」。中のお香は白檀ではなく、練り物が入っています。そして、今月からは炉を使っての炭手前なので炭火の中にも香が入れてあって、それでお部屋中いい匂いが漂っていたわけです。
さて、床の間を見たとき一番目立っていたのがこれ! 見たことがなかったのですが、これが茶壷なんだとか。上に着せてある網目の覆いを取って見せてもらいました。木の蓋がついていて、壷は底から10cmほどまで黒い釉薬が掛かって正面には色が入っています。新茶の時期に壷の真ん中に濃茶を入れ、周りに薄茶の葉を詰め密封・封印して11月初めの炉開きまで置いておくのだそうです。耳が4つ付いているのが茶壷とか。
風炉先屏風の前には山里棚。下が四角で上の段が三角、棚板は生地のままで端は竹で囲ってあります。この棚は幅を取るので風炉の時には使えず、また格式ばった席でも使わないそうです。置いてある水差しの形や色と棗(なつめ)の色の調和が素敵でした。お菓子鉢は今月からは陶器ではなくて塗り。今回の朱色の物は二人用の小ぶりで琉球塗り。お干菓子の菓子入れは「箕(み)」を象ったもので塗ってあります。箕はかき集めた落葉を入れる道具なのでこの時期のもの。お茶碗はピッタリの京焼の吹き寄茶碗。イチョウ、カエデ、松葉などの葉が吹き寄せられた絵柄です。もう一つはツタの葉と実を描いた同じく京都のもので押小路焼き。もう一つは箕面焼きのお茶碗。よく知っている箕面焼きの最近のものは赤が勝っていますが、30年ほど前の物ということで落ち着いたエンジ色に真っ赤な色が少しだけ。形は柔らかくて手のひらに馴染んでいました。

そう、そう、主菓子を頂くため取り箸の黒文字を手にして、思わず「あれ! シットリしてる〜」と声に出したら、先生が「湿らせているのよ。乾いたままだとくっ付くでしょ。余り早く湿らせたら乾いてしまうし、難しいのよ」と教えて下さいました。お迎えの為の準備に心を配(くば)るのもお茶なんですね〜。

最後に棗(なつめ)。落ち着いた朱色に金の線描で水が描かれています。蓋を開けてみますと、裏には千鳥が数羽飛んでいます! その一羽が螺鈿(らでん)(貝細工)で薄暗がりの中で輝いています。「すご〜い!!」と二人で声をあげてしまいました。この千鳥も11月を表しているそうです。
お茶の世界は奥も深く間口も広い大きな世界です。季節感を鋭敏な感覚で捉えた工芸の世界でもありますが、人と人の一期一会の出会いを演出する場でもあったり。先日、新幹線の車中で読むのに千宗屋著「茶 利休と今をつなぐ」を買って、ザーと読んでみました。解ったのは教えていただく先生がよい先生であることが大事だということ。私の今年の大収穫の一つがこの先生にお茶を教えてもらえるようになった事です。誘ってくれたNさんにも感謝です。