ジャック・アタリ氏に聞く

寒風の中、年越しで咲いていた冬薔薇もいよいよ切花に
                色もやさしいサーモンピンクに


9日(日曜日)の日本経済新聞の9頁、「検証 海外からの処方箋」は、3人の「知日派の外国人に聞く」となっていて、その一人が「21世紀の歴史」の著者ジャック・アタリ氏でした。(私のブログでは最初の「はじめまして」と09年5月10日で取り上げました)
アタリ氏の紹介記事では:「アルジェリア出身のフランス人。国立行政学院(ENA)などで学び、1981年に38歳でミッテラン仏大統領の特別補佐官、91年に欧州復興開発銀行(EBRD)の初代総裁に就任。現在は経済学者、思想家、作家、評論家として多彩に活動。著書「21世紀の歴史」では、13世紀末以降の世界の歴史を振り返りながら21世紀を展望。日本経済への知識も深い。」

長い記事ですが、少し端折りながら引用してみます。聞き手は欧州総局編集委員の藤井彰夫氏

衰退招く人口減 外国人もっと受け入れを
ーーーこの20年の日本の長期停滞をどうみるか。「日本の状況はミステリーだ。成長に最も重要な要素である技術革新では、日本はいまだにナンバーワンだ。特許出願数も高水準で、多くの有望な未来への技術を持っている。だが、それは持続できないだろう。」「日本が衰退する理由は、企業に資金を充分に供給できる金融システムの再構築が進まなかったこと、そして人口減少を受け入れる選択をしていることだ。」
「日本は外国人を受け入れようとしていない。これは危険な選択だ。いったん人口が減り始めると、どこで止まるか分らなくなり、高齢化を乗り切るのに難しい調整が必要になる。日本はフランスが実施したような政策を取るべきだ。子育てをする人々への金銭的な支援だけでなく、幼稚園や学校の整備、母親の就業支援など総合的な対策を実施すべきだ」


今は韓国が主導
ーーーアジアの中での日本をどうみるか。「中国、韓国、ロシア、オーストラリア、インドネシアベトナム、インドなどに距離が近いことは、日本にとって大きなチャンスだ。日本はアジアの頭脳になる機会がある。欧州でドイツがしたように過去と決別し、アジアの一員として地域の知的リーダーになることは可能だ。だが、現状では、アジアの知的リーダーとして、より受け入れられているのは韓国だ。」
ーーー世界の中心都市が時代と共に移り変わるという考え方を示した。「1980年代には日本が中心都市になる可能性もあったが、もはやなれないだろう。そうなるには真の政治大国になる必要があるからだ。軍事力を持ち、自国通貨を準備通貨にする意思がないと中心都市になれないことを歴史は証明している。日本は政治大国になる意思を示さなかった。」


危うい「遊牧」
ーーー日本のネットカフェに入り浸る若者を心配しているようだが。「現代では非定住型の生活をするノマド遊牧民)が世界中で増えているが、日本のそういう文化はバーチャル(仮想現実の)ノマドの一種だ。家に住んでいるのにネットの世界をさまようノマド。この種の日本の若者は自己陶酔的で危うい状況だと思う。」
ーーーこれは世界的な傾向なのか。「世界的な潮流だ。個人の自由が最優先される世界では個人は利己的になる。利己的であるということは孤独でもある。だからこそ日本は生き残りのため、他のアジア地域との関係を築くことが重要なのだ」

2項目、「ドイツのように過去と決別して」という点、残念ですが、日本は駄目だな〜と思います。
日本の一部の保守の方たちは過去と決別できず、過去を受け入れることもなく、新しいスタートを切るつもりがありません。
その前提がないのであれば、「アジアの一員として地域の知的リーダー」にはなれないし、アジアの国々に受け入れてももらえないでしょう。
「過去との決別」とは「戦後」を終わらせるという事にも通じます。
戦勝国アメリカに単独占領された戦敗国日本が、政治的にも精神的にも法的にも軍事的にも自立することであると思います。
今自立できていないという意識なく、「過去と決別」する覚悟も無く、押し付けられた憲法だから「憲法改正を」と唱える事は、戦勝国アメリカが戦後一貫して日本に求めてきたアメリカの世界戦略の中の日本の地位(従属)をいよいよ固定化し、形の上では日本国民が自主的(独立しているかのように)にアメリカの言いなりになることを選択してしまうことにつながります。
押し付け憲法を捨ててスッキリ最初から作り直したい」と言っても、「憲法」と「日米安保」の抱き合わせの歴史を葬り去り過去を忘れたフリをしながら、「日米安保体制」をそのままに「憲法」だけを新しくするのでは、片手落ちです。今以上、これ以上の、マヤカシ・誤魔化しは、もうゴメンです。(昨日「たかじんの…」の番組を途中から見たので、それに反発して書いています)たかじんさんが言う、「戦後65年も経ってんから憲法ぐらい・・・」というのは、本当は、戦後65年も経っているのに日本はまだ政治的にも自立させてもらえず、基地も沖縄もそのまま状態でいいのかという問題意識の方に向かうべきだと思います。たかじんさんのような考え方が政治的な力を持っている限り・・・ 
 今の押し付け平和憲法下、自立の方向を目指す方がまだマシかと…。