畠山重篤著「鉄は魔法つかい」

鉄は魔法つかい: 命と地球をはぐくむ「鉄」物語

鉄は魔法つかい: 命と地球をはぐくむ「鉄」物語

アンテナの「リアスの海辺から〜カキじいさんのつぶやき」の6月4日のブログに新刊本の案内がありました。

「カキじいさん」こと重山重篤氏のブログを覘くようになってから、あの3月11日の東日本大震災が起こり、ブログがしばらく途絶えた時は心配しましたが、その後、高台の自宅をご近所の方と一時避難所のようにして暮らしておられたこと、残念なことに施設におられたお母様をなくされたことも知りました。
船を救うために津波の押し寄せる海にめがけて船を出したという息子さんも、船は諦めて命からがら島にたどり着き自衛隊員に助けられたというお話を日経新聞の三浦豪太さんのコラムで知りました。
ご本人の重篤さんはテレビでもカキ養殖業の全滅で取り上げられたり、その後は復興に意欲という点でも取り上げられるのを見たり、文藝春秋での被災日記のようなのを読んだりもしました。そして、先日、この「鉄は魔法つかい」の出版をブログで知り、すぐ息子に頼んで買い求め読みました。
これが素晴らしい!! こんなに冒険小説のようにワクワクしながら読んだのは「15少年漂流記」以来かもしれません。
いつものように表紙や帯のキャッチコピーで内容紹介と致します。

命と地球をはぐくむ「鉄」物語
鉄は魔法つかい 畠山重篤・著 スギヤマカナヨ・絵


三陸気仙沼で「森は海の恋人」運動が始まって23年
再生への願いを「鉄」にたくして

2011年3月11日、三陸を襲った大津波で、海の生き物はすべて姿を消した。
でも1ヶ月が経ったとき、小魚が現れ、日ごとに、その数が増えはじめた。
森・川・海のつながりがしっかりしていて、鉄が供給されれば、
美しいふるさとは、よみがえる。
そう思ったとき、勇気がわいてきました。            著者 畠山重篤


さて、この本は鉄を求めて旅する冒険小説、鉄を介した人間のつながり、きずな、ご縁をたどる冒険の旅の物語です。
私にとっては、むか〜し昔見たNHKのドキュメンタリー番組のあれやこれやを思い出しながら、それらを鉄によってつなぎ合わせるような体験です。そして、ブログを通して知った「リアスの海辺から」のブログの主”カキじいさん”の正体を訪ねる旅でもあります。
文章は読みやすいし、挿し絵は楽しいし、こんなに新しい知識と考えに満ちた有益で楽しい本はありません。

太古の地球創世記からのお話から、イトカワはやぶさ、まで、日本から、オーストラリア、ビスケー湾アムール川と世界を廻ります。
脱原発を考える上でもこの本は有意義です。人間がこんなに宇宙的、地球的規模の大きな環境の中で生かされているという奇跡のお話であり、それを知る冒険の旅物語です。科学のお話あり、宮沢賢治金子みすず赤毛のアンや、気仙沼歌人熊谷武雄とその孫の龍子さんの歌も出てきます。
たくさんの日本や外国の学者さんも登場します。気仙沼の漁師の畠山さんが、CWニコルさんと一緒に京大の「社会連携教授」となりますが、どうして?
そして、最後に畠山さんにとって「魔法のフィナーレ」が待っています。
2010年10月10日の夜9時からNHKで放送された「日本列島奇跡の大自然 第2集 海 豊かな命の物語」です。
畠山さんにとってこの番組が「なぜ魔法?」なのかは読んでのお楽しみとして、私にとっても、この番組のアムール川の鉄の話から「森は海の恋人」という運動を思い出し☆でつながった畠山さんとが鉄でつながったのです。

私自身は40歳手前で胃の手術をした後遺症として血液の中の鉄分不足を増血剤を服用して補い続けるというのが10数年ありました。そういうこともあって、鉄が血を作るのに欠かせないというのは理解できていました。でも、ここで知る鉄物語はスケールが違います。
酸素と鉄の生まれる海・シャーク湾と世界最大の鉄鉱石のハマースレー鉱山をオーストラリアに訪ねる辺りが一番面白い所かも。子供向けにも書かれていますが大人も十分に楽しめますし、感動的です!
畠山重篤(はたけやま・しげあつ):1943年中国・上海生まれ。宮城県気仙沼でカキ・ホタテの養殖業を営む。
1989年、「森は海の恋人」を合言葉に植林活動を始める。
一方、子どもたちを海に招き、体験学習をおこなっている。
牡蠣の森を慕う会」代表。京都大学フィールド科学教育研究センター社会連携教授。