「産業界の自家発電を自由に送電してフルに活用すれば夏の電気不足はない」という広瀬氏の説が広く知られて、政府や経済界が本気になって、発送電分離を実現する決断をしてくれればいいのにと思います。それと同時に自然エネルギーの有効活用にも本腰をいれて、新たな産業として発展して欲しいとも思います。
海外の地熱発電の機械やプラントは日本製なのに国内での利用は余りされていないとニュースで知りました。日本では地熱発電、温泉発電ともに、国立公園や国定公園内にあり、一方は厳しい規制が、もう一方は温泉所有者や利用者による複雑な利害関係があって、なかなか難しいとも聞いています。その、公園規制を破らず、公園の外から「斜め掘」するという興味深い記事が。
27日(月)の日経朝刊・「科学技術」頁・「自然エネルギー実力診断」というコラムの「地熱発電」から引用。
十和田八幡平国立公園の隣接地にある、東北電力の澄川地熱発電所(秋田県鹿角市)で、7月、公園の景観を壊さずに地下に眠る熱源を回収する国内初のプロジェクトが始まる。
公園区域の外から真下ではなく若干斜めに2・5km掘っていくと、100〜200mほど公園内に入る。熱源は300度以上と、公園の外(250〜300度)より高く、発電効率の高い熱源を回収できる。澄川発電所の発電能力を1割強増やせるとみている。掘削から蒸気の回収までを担当する三菱マテリアルの番場光隆地熱・電力部副部長は「12月に発電を開始し、冬の電力需要に間に合わせたい」と意気込む。この「斜め堀事業」が日本の地熱発電の転換点になるかもしれない。
火山国の日本は、インドネシア、米国に次ぐ世界第3位の地熱資源国。すべてを発電に利用すると、約2350万kw、原発23基分に相当する。しかも、地熱発電用タービンでは日本勢が世界シェアの7割を持つ。
資源も技術もあるのに、熱源の8割が国立公園内に集中して、現在の発電容量は約54万kwと世界8位にとどまる。規制は旧環境庁と旧通産省が1972年に出した「公園内の地熱発電の開発を当分の間、推進しない」との通知に基ずく。当分の間としながら、40年間も放置してきた。ようやく緩和したのが昨年6月で、環境省は斜め掘で公園内の熱源を回収する事業を個別に審査していく事を決めた。認可の条件を明確にして利用を広げるため、28日には指針作りに着手する。
環境省によると、公園内の熱源が利用できない場合の導入可能量は220万kwだが、斜め掘で公園区域から内側1.5km未満が開発可能になれば636万kwになる。
技術開発が進んで掘削距離を2倍に伸ばせば、導入可能量は1022万kwと原発10基分で、国内にある全熱原料の43%を活用できる。環境省は掘削距離を伸ばす技術開発を後押しする方針だ。
地熱発電の一種で、120度以下の蒸気を使う温泉発電も実用化が目前に迫る。地熱技術開発は産業技術総合研究所などと共同で、新潟県松之山温泉で11月から実証試験を始める。温泉水の熱でアンモニア水を沸騰させ、出てくる蒸気でタービンを回して発電する。
産総研の試算では、既存の温泉だけで72万kw分の発電可能な熱量があるという。地熱発電と同様、天候に左右されない稼動率の高さも魅力。太陽光発電は12%、風力発電は20%だが、温泉発電だと約90%を見込めるそうだ。温泉発電は出力50kwの設備で、家庭100世帯分に太陽光発電を設置したのと同じ発電量を確保できる。実験機で1億円するが、家庭100世帯に太陽光発電を導入すると2億〜3億円かかる。コスト競争力も見込めるという。
地熱発電も温泉発電も、「事業推進のためには、地元の理解が得られるかが壁であり、また推進のカギでもある」ということです。
早く、脱原発に転換して、こういった安心・安全な自然エネルギー産業に力を入れて欲しいです。
そのためには、原発で利益を得ていた方たちが、この悲惨な終わりのない事故を切っ掛けとして、一個人一企業一地域の利害を超えた、日本人としての大きな考え方に変っていただくことが大切だとおもいます。