「原子力神話からの開放」

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水中歩行のプールへ行く途中、唐池公園の夾竹桃が満開を迎えているのが見えました。
大きな滑り台の所まで行ってみようと自転車を止めて歩き出すと、意外にあちこちに花が植えられていて咲いています。

原子力神話からの解放 -日本を滅ぼす九つの呪縛 (講談社+α文庫)

原子力神話からの解放 -日本を滅ぼす九つの呪縛 (講談社+α文庫)

昨夜は注文していた本を、息子が週末で本屋へ立ち寄って買い求めてくれました。昼間はプールのあと、イオンで買い物をした折に、お玉さんのブログで話題にされていた「クロワッサン」の記事を確かめたくて、これも入手。生命科学者の柳澤桂子さんの「「放射線によって傷ついたDNAは、子孫に伝えられていきます。何万年か後に、突然変異の恐れが」が問題になっていました。ジックリ読んで見たいと思っています。
夜、文庫本の高木仁三郎著「原子力神話からの解放」をパラパラと。そして、あとがきの「パンドラの箱は閉じることができるのかー結びに代えて」を読みました。短い「あとがき」の最後の行は、「開けてしまったパンドラの箱を閉じることはできないでしょうが、その中に残った「希望」を取り出し、育てていくことはできるのではないでしょうか」。そして日付は「2000年7月」です。
「文庫版まえがき」によりますと、高木氏はこの本を光文社カッパ・ブックスから刊行した後、10月に亡くなっています。執筆の切っ掛けは1999年9月30日の東海村のJCOウラン加工工場での「臨界事故」だったとあります。

目次には「日本を滅ぼす九つの呪縛」とあり、第2章から「安全神話」が9項目に渡って並べられ、各項目ごとに「神話」のウソが暴かれていきます。神話の内容を並べてみますと、「原子力は無限のエネルギー源」という神話、「石油危機を克服する]という神話、「原子力の平和利用」という神話、「安全」という神話、「安い」という神話、「地域振興に寄与する」という神話、「クリーン」神話、「核燃料リサイクル」神話、「日本の原子力技術は優秀」という神話の9つです。
「あぁ、10年前に読んでおくべきだった〜」とつい口に出てしまいました。そして、思い当たります。3・11以後、普通ではいられなくなったのは、この焦燥感なのではと。
プロローグでは、2000年6月15日にドイツのシュレーダー首相が、ドイツ国内の原発20基を順次廃棄することで電力会社と合意したニュースを歓迎しながら、東海村の臨界事故についての日本の事故調の最終報告書を取り上げて、こう書かれています。
「『安全神話は崩壊した。そんなものに頼れないというところから出直そう』と言いながら、その同じ報告書によって日本の原子力が再構築できるかのごとく言う」、「そういう意味では、原子力利用そのものの転換は全然行わずに、この報告書によって新しい原子力神話を構築しようとしているのではないかと、私には思えてなりません」。
東海村の臨界事故でピカッと光ったあの光は、私達に『目を覚ませ』と言っているのではないか、そんなふうに私は感じて、そういうメッセージを読み取ったからこそ、この本を書くことにしたのです。」

高木氏の「原子力神話再構築」の心配は見事に的中し、今年の3月11日まで神話は生き続けていました。

そして、今また、11年前の臨界事故後の事故調の最終報告と全く同じことを日本政府は繰り返そうとしています。
しかし、国民は11年前の国民ではありません。
臨界事故ではまだ目覚めなかった国民も、今回の福島第一原発の事故では目覚め始めています。
神話の効力も失われつつありますし、何よりも、高木氏の遺書ともいうべきこの本があります。
そして、脱原発を唱えている科学者も発言を始めていますし、メディアも取り上げつつあります。
11年前は、私も情報不足でしたし、情報を求めようとしなかった思考停止を恥じています。
今回はインターネットで情報を求めたり、ブログで考えを発表すれば、同じ考えの方たちとも情報や意見の交換ができます。今度は、怒りを持続させながら、脱原発が実現するまでへこたれないぞと思っています。