「市民科学者 高木仁三郎」と小沢問題

日曜日、朝9時半、息子の運転で母と入院中の父に新聞を届けに行ってきました。10時を過ぎてテレ朝の番組を見ていると、何と先日からブログにその著書の感想を書き、今、その本の途中まで読んでいる高木仁三郎氏を取り上げています。
テレ朝の「フロントライン」とかいう番組、「反原発のカリスマ 市民科学者 高木仁三郎というタイトルで「発掘人物秘話」というコーナーでした。

画面を写真で取りましたので、紹介する前に、見過ごせない新聞記事(日経7月2日朝刊より)を。
すでに、テレビのニュースでも報道されていましたが、小沢一郎氏の政治資金問題についてです。

小沢一郎民主党元代表資金管理団体陸山会」の政治資金規正法違反事件で、元秘書の衆院議員、石川知裕被告(38)らが小沢元代表に収支報告書の虚偽記入を報告し了承を受けたとする供述調書などについて公判での証拠採用を却下した東京地裁(登石郁郎裁判長)の決定の全容が1日明らかになった。決定理由で「威迫ともいうべき心理的圧迫や小沢氏の不起訴という利益誘導があった」などと特捜部の取調べを強く批判。石川議員が虚偽記入を認めた調書も不採用としたことも新たに判明した。

記事は、「今秋予定の石川被告ら元秘書3人の判決や、小沢元代表の公判に影響を与えるのは必至だ」として、38通の供述調書のうち12通を却下した理由を決定の文書からかなり克明に記事にされています。
村木さんの冤罪事件を生んで有罪となった大阪地検の元判事が、転勤で大阪に来る前に、この事件を担当していたと言う報道もあったと覚えています。
小泉政権によって罠にかけられた「外務省のラスプーチン」こと佐藤優さんの著書で「国策捜査」を知りました。当時、国会で追求された「ムネオハウス」問題で、私も全く無批判に乗せられて、乗っかって、ついには鈴木宗男さんの顔が悪党顔に見えてしまうというマインドコントロール状態を体験していました。佐藤さんの本を読んで、目が覚めた思いがし、政治の世界の恐ろしさと、自分の愚かさにショックを受け、二度と騙されてはいけないと反省もしました。
そういうことで、この小沢問題、発端当初からあまりにタイミングが良すぎて、当時の民主党を苦境に陥れる意図が見え見えでしたので、ピンと来たものがありました。仕掛けてくる勢力の力は大きく、世論誘導もあって、どうなる事かと思いましたが、なんとか、ここに来て、特捜の取調べを問題視し調書を却下する決定が出ました。(民主党の方は見事に政権交代にかける国民の夢を粉々にするほどの壊れようで、これだけで仕掛けは成功?) これも、日本の民主主義が試されている事件です。見守り続けたいと思います。

さて、民主主義といえば、この人物も、日本の民主主義が誇るべき市井の科学者で活動家だった人でした。
日本のシンドラーと言われる杉原千畝さんを発見?した時と同じような思いを抱きます。
日本にも、日本人にも、世界に誇るべき人物が居るという幸せです。

原子力神話からの解放」のカバーから人物紹介を。

高木仁三郎略歴:(たかぎ・じんざぶろう)− 1938年、群馬県前橋氏生まれ。東京大学理学部化学科卒業。理学博士(東大)。専門は核化学。東京都立大教授、マックル・ブランク核物理研究所客員研究員をへて、原子力資料情報室の設立に参加。87年から98年まで同代表。原子力発電、とりわけプルトニウム利用の危険性について、専門家の立場から警告を発し続けた。著書には「プルトニウムの恐怖」「プルトニウムの未来」「市民科学者として生きる」「原発事故はなぜくりかえすのか」「(以上、岩波新書)、「いま自然をどうみるか」(白水社)、「鳥たちの舞うとき」(工作舎)など多数。2000年10月没。

昨日の朝の番組は奥様のインタビューやお兄さんも登場してかなり詳しく生い立ちから、「市民科学者」として生きるまでが紹介されました。原子力黎明期に核化学者として一時は企業にも就職して開発にもたずさわります。そのなかから、核の危険性を訴え原発推進に反対する活動家になります。
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相次ぐ国際的な原発事故に国内の反対運動も盛り上がり、朝まで生テレビで、反原発を科学者の立場で述べた時期が。
この頃、ポストに嫌がらせの手紙が投げ込まれたり、運動から離れるよう3億円積まれたことも。活動家と研究者の狭間に悩み、脱原発法が国会で無視され、落胆、挫折、医者である兄の勧めで一時期運動から遠ざかるのですが、考え直して、今度は活動家であり科学者でもある道、市民科学者として生きることに。

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1997年、自身のプルトニウムの研究が国際的に認められ、もう一つのノーベル賞と言われる大きな賞を受賞します。しかし、その後、大腸癌が発見され、2000年、「原子力神話からの解放」を書き終え、10月、永眠。
奥様は、悲惨な人生ではなく、充実した人生だったと思いますと仰っていますし、高木氏本人も、「とにかくも反原発の市民科学者としての一生を貫徹することができました」と結んでいます。(写真の並べ方は放送どおりではありません)

高木氏のこの本「原子力神話からの解放」では「9つの呪縛(=神話)」は第2章から始まり、第1章は「原子力発電の本質と困難さ」というタイトルで原子核と核エネルギーの解説からはじまって、「核分裂とその連鎖」、「原子力開発の不幸なスタート」では、「ナチスの脅威」から始まったそもそもの不幸、そして「パンドラの箱」を開けてしまった人類、放射能と「死の灰」、遺伝子への影響、消せない火ー原子力発電の基本的困難さ、エネルギー転換率の悪い原発、そして、つねに抱える破局的な事故の可能性。小見出しを並べただけでも、論旨明快、知りたい事ばかりの内容です。他のエネルギーとは根本的に異なる核エネルギーの持つ危うさが良くわかります。
そして、第1章では、日本に導入されるいきさつと世界情勢が語られます。昨夜、10時からNHK教育(今ではEテレ?)のETV特集で「大江健三郎が問う核兵器原発」という放送がありました。大江氏が元第五福竜丸乗組員の大石又七さんと核を巡って対話します。ここで、高木氏がこの章で述べている時代とピッタリ一致した内容が語られました。この番組については叉別に感想を。
冷戦時代の中、アメリカの世界戦略に組み込まれていく日本の不幸の始まりです。アメリカの核戦略の中で、日本の原子力発電推進が切り離しがたく結びついていたということです。そして、そのアメリカの政策に呼応して日本の政治家や新聞、財界がアメリカの心理戦略を実践し、私たち日本人はまさにその戦略に見事にはまっていったということです。警告を発してくれていた人々も居たのに、あからさまな非難、中傷、差別、妨害で、声はかき消され、多くの人々にはその声は届かずじまい。福島以後、同じことが繰り返すようでは・・・繰り返さないために頑張りましょう。