なでしこ「悠・遊・結」の境地?

昨夜のNHKスペシャルは「なでしこジャパン-世界一への道」、はとても考えさせられました。
勝戦の戦いと選手のお話を交えて勝因を探っていくような内容でした。
澤穂希さんという女子サッカーの歴史を文字通り背負って先駆者の役割を果たす名選手と、その存在に憧れてサッカーを始めた若手の選手たち。
見事に精神的支柱を務めるリーダーの存在と、自発的なプレーを引き出す監督、そして厳しい環境にあっても好きだから楽しいからとサッカーに賭ける若手の選手たち。大きな目標に向かって各々の持ち味を活かしながら自由に自在に試合の中で成長しつつ勝つことに燃えるチーム。
番組の取材を受けるアメリカのワンバク選手の言葉を聞きながら、思いました。日本に負けたことの無いアメリカチームは、点を入れる度に、これで優勝間違いないと思い、追いつかれる度に、精神的には追い込まれていった様です。前半20分までの優勢な状況から一転日本ペースに持ち込まれた前半。それでも後半、あっけなく一点を取った時点で優勝を確信した、それなのにへこまず攻撃を仕掛けるなでしこ。追いつかれて延長、自らのヘディングで2点目を取った時点でも、これで優勝とワンバク選手は思いました。延長戦で追いつくなんてことは考えられないほど困難なことだからと。ところが、相変わらず日本は果敢に攻めてきます。まさかの2点目が入った時点でアメリカの選手たちの気持ちは萎えてしまったようです。とても平常心ではなくPK戦に。海堀の好セーブがあったとはいえ、アメリカチームは精神的にすでに力尽き勝負ついたという感じだったのでしょう。
なでしこ側は、後半の一点があっけなく入った時点では、さすがアメリカ、これは負けるかもと思ったらしいですが、澤選手の一喝があって、目が覚めたようにゲームに集中。自分たちのペースに持ち込むと余裕も生まれて、その後は負ける気がしなかったという選手も。ボランチの阪口と澤の守備と攻撃の役割分担や、川澄の守備位置の自主的な交替なども功を奏します。あきらめない”なでしこ”のチームワークが、延長後半のセットプレーからの宮間と澤の絶妙な1点につながります。こうやって、あの試合を振り返ってみますと、美しい理想的なチームワークの結実のドラマを見るようです。
勝戦が終わった後、アメリカのワンバクさんと澤選手が抱き合って言葉を交わしました。ワンバク選手の話では、「オメデトウ」とお祝いの言葉を贈ると、澤選手は、「ありがとう。1対1では日本はアメリカに負けていた。私たちはみんなで闘って優勝できた」と言ったそうです。
勝因は、技術とか精神力とかの違いというより、「境地」の違いにあったようです。
なでしこの彼女たちは、楽しんでいました。プレッシャーも緊張感も当り前に感じながら、それでも、今、生きて、サッカーできる幸せに、心を悠々と遊ばせながら、美しい心の連携を紡いで結い上げていった時間だったようです。
 綿(わた)の花が咲きました。