TPPからCEPEA?まで

TPPに始まってこのところ略称が一杯、今朝の日経にはCEPEAという新手まで。チョッとまとめて整理してみたくなりました。

FTA自由貿易協定(例外アリ)

TPP=環太平洋経済連携協定(例外ナシ)
APEC(エイペック)=アジア太平洋経済協力(会議)
ASEAN(アセアン)=東南アジア諸国連合
EAS=東アジア首脳会議
「19日インドネシアで開催される東アジア首脳会議(EAS)の宣言草案が明らかになった。
ASEANプラス6(日中韓、豪、ニュージーランド、インド)の16カ国で広域自由貿易圏を目指す。宣言案には『東アジア包括的経済連携協定(CEPEA)』を結ぶ方向で調整すると盛り込まれた。CEPEAはASEANに6カ国を加えた自由貿易協定(FTA)構想。」↑図は日経(日)より
日経によりますと、「中国はASEANプラス3(日中韓)の13カ国案を主張していたが、米国主導でTPP交渉が加速するのを警戒。16カ国に歩み寄って、米国をけん制する姿勢と見られる。」


ところで、野田首相、国内向けの玉虫色の発言の「それ以上でもそれ以下でもない」と相変わらずぬらりくらり。
ところが目くらましのあいまい表現がそれ以上にもそれ以下にも取られるのが国際舞台。
アメリカからは早速「all=全」と表現されて、日本側は慌てて打ち消しても、無駄。
アメリカ側はミスではなくて、敢えて、あいまい表現のムシ!!(と私は思っています)
出だしから押し捲られて「国益」は貪られてしまうのが目に見えています。
それまでに本気でヤル気があるのかわからぬ改革とやら間に合うのでしょうか。
今の政府は、1億2千万日本国民が路頭に迷わぬようにと経世済民を本気で思っているのか、それとも、一部エリートが栄えればそのおこぼれで全体が潤うと思っているのか。その結果がどうなるか、内田樹先生のブログ「グローバリストを信じるな」(http://blog.tatsuru.com/2011/10/25_1624.php)が、アメリカと日本のグローバリストの考え方が良くわかって面白いです。

(途中から引用)
アメリカでは、高付加価値産業だけが生き残り、生産性が低い代わりに大きな雇用を創出していた産業セクターは海外に移転するか、消滅した。
だから、「才能のある若者」以外には雇用のチャンスが減っている(失業率は2010年が9・6%だが、二十代の若者に限ればその倍くらいになるだろう)。
ウォール街でデモをしている若者たちは「まず雇用」を求めている。
これまでアメリカ政府は彼らに「我慢しろ」と言ってきた。
まず、国際競争力のある分野に資金と人材を集中的に投入する。それが成功すれば、アメリカ経済は活性化する。消費も増える。雇用も増える。貧乏人にも「余沢に浴する」チャンスが訪れる。だから、資源を「勝てそうなやつら」に集中しろ、と。
選択と集中である。
でも、それを30年ほどやってわかったことは、「選択されて、資源を集中されて、勝った諸君」は、そうやって手に入れた金を貧乏な同胞に還元して、彼らの生活レベルを向上させるためには結局使わなかった、ということである。
それよりは自家用ジェット機買ったり、ケイマン諸島の銀行に預金したり、カリブ海の島を買ったり、フェラーリに乗ったり、ドンペリ抜いたり、アルマーニ着たり(たとえが古くてすみません・・・)して使ってしまったのである。
選択-集中-成功-富の独占というスパイラルの中で、「選択から漏れ、集中から排除された、その他大勢の皆さん」が絶対的な貧窮化にさらされ、今ウォール街を占拠している。


彼らの運動に「政策的な主張がないから、政治的には無力だろう」と冷たく言い捨てる人々が日米に多いが、それは間違いだと思う。
彼らが政府に何を要求していいかわからないのは、「完全雇用は経済成長に優先する」という(日本の高度成長を理論づけた)下村治のような「常識を語る人」がアメリカでは政府部内にも、議会にも、メディアにもいないからである。
ウォール街を占拠している若者たち自身「成長なんか、しなくてもいい。それより国民全員が飯を食えるようにすることが国民経済の優先課題である」という主張をなしうるだけの理論武装を果たしていないのである。
「生産性の低い産業分野は淘汰されて当然だ(生産性の低い人間は淘汰されて当然だ)」というグローバリストのロジックは貧困層の中にさえ深く根付いている。
だから、彼らはこの格差の発生を「金持ちたちの強欲(greed)」という属人的な理由で説明することに満足している。
「属人的な理由で説明することに満足している」というのは、それを社会構造の問題としては論じないということである。
「強欲である」というのは「能力に比して不当に多くの富を得ている」という意味である。
問題は個人の倫理性のレベルにあり、国家制度のレベルにはない。
アメリカはこれでいい」のである。


話を続ける。
情報と教育の他、あと、アメリカが商売にしようとしているのは司法と医療である。
これについては、専門家が的確に危険性を指摘しているから、私の方からは特に付け加えることはない。医療については、前にご紹介したYoo先生の『「改革」のための医療経済学』をご一読いただければよろしいかと思う。


そして、アメリカの最大の売り物は農産物である。
驚くべきことに、アメリカが「かたちのあるもの」として売れるのはもはや農産物だけなのである(あと兵器があるが、この話は大ネタなので、また今度)。
農産物はそれは「その供給が止まると、食えなくなる」ものである。  <略>


基幹的な食料を「外国から買って済ませる」というのはリスクの高い選択である。
アメリカの農産物が自由貿易で入ってくれば、日本の農業は壊滅する。


「生産性を上げる努力をしてこなかったんだから、当然の報いだ」とうそぶくエコノミストは、もし気象変動でカリフォルニア米が凶作になって、金を出しても食料が輸入できないという状況になったときにはどうするつもりなのであろう。同じロジックで「そういうリスクをヘッジする努力をしてこなかったのだから、当然の報いだ」と言うつもりであろうか。
きっと、そう言うだろう。そう言わなければ、話の筋目が通らない。
でも、こういうことを言う人間はだいたい日本が食料危機になったときには、さっさとカナダとかオーストラリアとかに逃げ出して、ピザやパスタなんかたっぷり食ってるのである。


TPPについて私が申し上げたいことはわりと簡単である。
「生産性の低い産業セクターは淘汰されて当然」とか「選択と集中」とか「国際競争力のある分野が牽引し」とか「結果的に雇用が創出され」とか「内向きだからダメなんだ」とか言っている人間は信用しない方がいい、ということである

そういうことを言うやつらが、日本経済が崩壊するときにはまっさきに逃げ出すからである。
彼らは自分のことを「国際競争に勝ち抜ける」「生産性の高い人間」だと思っているので、「いいから、オレに金と権力と情報を集めろ。オレが勝ち残って、お前らの雇用を何とかしてやるから」と言っているわけである。
だが用心した方がいい。こういう手合いは成功しても、手にした財貨を誰にも分配しないし、失敗したら、後始末を全部「日本列島から出られない人々」に押しつけて、さっさと外国に逃げ出すに決まっているからである
「だから『内向きはダメだ』って前から言ってただろ。オレなんかワイキキとバリに別荘あるし、ハノイジャカルタに工場もってっから、こういうときに強いわけよ。バカだよ、お前ら。日本列島なんかにしがみつきやがってよ」。
そういうことをいずれ言いそうなやつ(見ればわかると思うけどね)は信用しない方が良いです。
私からの心を込めたご提言である。

今TPP参加、乗り遅れるなと言っている日本の方達がアメリカの先輩方と同じような”greedy"な方達ばかりとは思いたくありませんが・・・・と言うのが間違いなんですね。属性ではなくて社会構造、国家制度の問題なんですね。なんでもアメリカがお手本の日本ですので、アメリカよりはスケールが小さくて同じようなことが起こる可能性は大きいと思います。
そうならないよう、頑張って政治家さんたち!