「やはり『人災』と判明!」大前研一(「SAPIO」より)

小林よしのり氏の「脱原発論」を読みたくて買った「SAPIO」の12月7日号に大前研一氏の記事があります。
記事によりますと、大前氏が細野豪志原発相に「必要な情報にアクセスさせてくれたら、ボランティアで事故原因を分析して3ヶ月以内に再発防止策の「セカンド・オピニオン」をまとめる。次の3ヶ月でIAEA(国際原子力機関)に説明し、電力業界に必要な改善策を実行させる。そして次の3ヶ月で地元住民の理解を得て再稼働できる原子炉は再稼働する。つまり9ヶ月あれば、全原発が止まるという事態は回避できるかもしれない。そのためには今すぐ作業に着手しなければならない」と提案。細野氏から「ぜひ、お願いしたい」と任されて、「東京電力日立GEニュークリア・エナジー東芝などの関係企業も原発の実務経験者、原子炉の設計者などプロ中のを集めて協力してくれた」そうです。

「調査・分析は2ヶ月で終了、10月28日に「福島第一原発事故から何を学ぶか」という中間報告書を細野氏に提出。(報告書の内容はBBT(ビジネス・ブレークスルー)のサイト(コチラ:http://pr.bbt757.com/2011/1028.html)やYouTubeで全面公開)」 その間、大前氏がそういう作業に携わっていることを公にしてこなかったし、また政府が大前氏の報告に則った報告をIAEAにしなかったので、大前氏自らによる「告発」?の意味を込めて”スクープ公開”と書いているようです。

この内容については「keniti3545」さんの25日のブログでも取り上げておられます:(コチラで:http://d.hatena.ne.jp/keniti3545/

サピオの記事に従ってまとめてみますと、<「その結果わかったことが2つある。1つは、必要なデータは、ほとんどがすぐに入手可能だった、質問してデータが出てくるまでに、1週間以上かかったケースはなかった。もう1つは、政府が説明していること、今やろうとしていることには真実のかけらもない、ということだ。」>と政府を批判しています。

 原子力安全・保安院が実施しているコンピューター・シミュレーションによるストレステスト(耐性検査)も、電力会社に支持している安全対策も完全にポイントがずれている。なぜなら、そもそも政府は福島第一原発の事故原因を間違えているからだ


 政府がIAEAに提出した報告書は、今回の事故原因について「津波の発生頻度や高さの想定が不十分であり、大規模な津波の襲来に対する対応が十分なされていなかったためにもたらされた」としている。つまり、想定外の大津波がきたから起きた、と言っているのだ。


 しかし、事故を起こした福島第一原発1〜4号機と同じ大津波に襲われながら、福島第一原発5,6号機、福島第二原発女川原発、東海第二原発は事故にならなかった。ということは、大津波は事故のけっかけにすぎず、メルトダウンに至った直接の原因は他にあることになる。

ここから、大前さんをリーダーとする調査・分析が始まり、「福島第二、女川、東海第二も首の皮一枚だった!」のは事故を起こした原発の全電源喪失を免れたからだった。「非常用電源の冷却ポンプが常用電源の冷却ポンプの隣に並んでいる『設計思想』そのものがおかしいと、原子力安全委員会の『設計思想』を読み直したら、『全交流動力電源喪失は、考慮する必要がない』、『設計上、全交流動力電源喪失を想定しなくてもよい』と書かれている。「なぜ原子力安全委員会がこんなバカげた文章を入れたのかわからないが、その担当者を明確にして、きちんと責任を取ってもらわねばならない」。

大前氏は続けて、「確率論」の誤りと「格納容器の安全神話」を指摘しています。
「例えば、原子炉の寿命が50年とすれば、千年に一度の大津波に襲われる確率は20分の1。その20分の1は運が悪ければ今日起きるし、運が良ければ50年の間に起きないのだ。そして確率というのは事故が起きなければ0%だが、起きてしまったら100%だ。政府は今、福島第一原発を襲った津波の高さが最大15.5mだったことから、各原発に高さ20mの防潮堤を建設しているが、そんなものは高さ21mの津波が来たら何の役にも立たない。
 つまり、確率論は意味がなく、それを使った設計思想は誤りなのである。そもそも、交流電源の長期間喪失の問題のように、確率が低ければ想定しなくて良い、という発想そのものが原子炉に関しては誤りだ、ということを規制当局が認めなければならない。」

「解決策は何か?」と問いかけて、大前氏が解答を。
「冷却さえできればメルトダウンは起きないのだから、『どんなに大きな地震津波に見舞われても(或いは旅客機が墜落したり、テロリストに襲撃されたりしても)原子炉の電源と冷却源(最終ヒートシンク)を確保する』という設計思想に転換しなければならない。
逆に言えば、何が起きても電源と冷却源を確保できる原子炉でなければ、再稼働してはならない、ということである。」
「対策は意外とシンプルだ。」 電源と冷却源を「多様化・多重化」すればよいのである

 つまり異なる原理の電源と冷却源を用意し、その数も増やすのだ。具体的には、外部交流電源や非常用のディーゼル発電機・交流電源・直流電源の水密性・耐圧性の確保もしくは高所設置、貯水槽・貯水池・湖・河川・海など複数個所からの給水の確立、冷却系設備の水密性・耐圧性の確保や高所設置、建屋の水密性・耐圧性の確保ーなどである。
 これらはさほど難しいことではない。現在建設しようとしている高さ20mの防潮堤よりコストは格段に安く、工事も数ヶ月で完了するだろう。

そして、締めくくりの大前氏の言葉がとても印象的です。推進派の一人に名前を挙げられる大前氏ですが、自ら科学的な検証の結果得られた大前氏のこの言葉はとても説得力があり現実的でもあると思います。"原発は即止めることが出来る"から、"30年後にはゼロになる"という、この間で、私たちの脱原発の思いが一日も早く実現するよう政治を変えていかなければと思います。それでは、大前氏の締めくくりの言葉です。
もはや日本は新たな原発を建設することは出来ないだろうし、既存の原発の延命も今後は難しいと思われるので、どのみち30年後には国内の原発はゼロになる。それまでは『何が起きても電源・冷却源を確保できる』という条件をクリアした原子炉は、地元住民の理解を得た上で再稼働して、寿命が来るまで利用し、その間に再生可能エネルギーへの転換を勧める。それが現実的な選択ではないだろうか。」