「ウクライナでは、福島のように避難すべきかどうかを個人で悩むことはなかった」

本日も二つ目です。

お気に入りに入れているブログを読んでいたら、スイスの週刊新聞の編集者が、チェルノブイリと福島を比較している記事を見つけました。 引用先のブログは「Various Topics(海外、日本、10代から90代までの友人、知人との会話から見えてきたもの)」:http://afternoon-tea-club.blog.ocn.ne.jp/
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2012/03/09


理解に苦しむ


昨日のIBtimesに、以下のインタビュー記事が載っていました。


『3.11から1年、「低線量被ばくとの終わりなき戦いは続く」』

(by swissinfo ch 里信邦子氏)

http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?cid=32255512&rss=true



3・11から1年が経過する。しかし原発事故による放射線被害は改善を見ないままだ。「低線量被曝と戦う親や子どものストレスは並大抵のものではない。しかもそれに終わりはない」と、スーザン・ボース氏は語る。
 ボース氏は、左派の重要なスイスの週刊新聞「ヴォッツ(WOZ)」の編集長。昨年2回福島県を訪れた。その計40日間にわたる滞在で、東京電力福島県庁の関係者、南相馬市飯館村の村長、さらに多くの県内の一般市民と対話を重ね、今年1月末に福島についての本を出版している。


(中略)


チェルノブイリでの体験と福島を比較しながら、ボース氏に原発事故を多側面から聞いてみた。

swissinfo.ch : チェルノブイリでは、甲状腺がん以外にも心臓病などの疾患が多発したといわれますが、実際どんな状況だったのでしょうか?

ボース : もちろんがんや、子どもでは甲状腺がんが多発したが、血圧の疾患、心臓病、免疫力の低下といった症状が重要な問題になっていた。また、原発から半径30キロ地点の学校の先生たちが、子どもの集中力や記憶力が低下したとも証言している。


低線量被曝の被害は「まるで20歳年を取ったような状態になる」といわれるが、実際、避難者や現地に住む人を見るとそうだった。放射線は細胞レベルのストレスを引き起こす。つまり、人間にはDNAの損傷を修復するシステムが本来備わっているが、放射線を絶えず浴びるとこの修復システムが追いつけなくなる。それがこうした病気の原因となる。

日本でも今後、汚染された地域で同様の現象が起こることは確実だと思う。


ただ、福島では汚染の放射性物質の種類が違う。骨に溜まり体外に出ないストロンチウムチェルノブイリで多量に排出されたプルトニウムが福島にはほとんどない。これは良いニュースだ。問題はセシウム137。このセシウム137との戦いが福島では続いていく。


チェルノブイリの話に戻ると、チェルノブイリ事故のもう一つの問題は、甲状腺がん以外の疾患についてのレポートがなかったということだ。実際はウクライナやロシアの学者が、こうした疾患についての研究を行っていた。しかし、それが国際的に認められるには、英語で書いて科学雑誌に投稿しほかの研究機関によって承認されなければならない。だが彼らはこうしたプロセスを踏まなかった。そのため、WHO(世界保健機関)などがこうした研究を承認していない。また、研究が正しかったとしてもほかの言語に翻訳されていないため、我々も目にすることができない。

同じようなことがこれから福島でも起こると思う。というのは、すでに多くの研究が発表されているが、公式のものが英語に翻訳されていない。これは深刻な問題だ。


(中略)


swissinfo.ch : そのほか、チェルノブイリと福島で、違いに驚いたことがありましたか?


ボース : ウクライナでは、福島のように避難すべきかどうかを個人で悩むことはなかった。年間線量10ミリシーベルト以上の所は強制避難。つまり旧ソ連体制だったため、有無を言わせず「全員すぐに移動」と決行した。


また、一般市民の保護においても、ウクライナの方が優れていたと思う。例えば汚染された地域の学校では、汚染されていない地域から食品を輸送させ何年間もそれだけを使用し、朝、昼、晩三食を学校で食べさせた。こうすれば子どもたちに、内部被曝は起こらないからだ。家では、大人たちが(貧しいが故に)家庭菜園のものや森のキノコなどを食べていたが。


ところが福島では今でも子どもたちに地域の産物を食べさせている。それには驚いた。また現在、食品に含まれる放射性物質の量は1キログラム当たり500ベクレルと高い。今年4月から100ベクレルに下げられると聞いたが、なぜ事故直後に100ベクレルにしなかったのか、それも理解に苦しむ。

民主主義国家の方が、個人の意思を重視するが故に原発事故が起こった場合は複雑になるのかと思ったりする。



<<蛙の割り込み:全体主義だから、民主主義だからの違いではなくて、福島・日本の場合は、「安全神話」のため、危機的状況の想定がなく、対応の仕方は国のリーダーも東電の現場ですら、わからなかったのでは。メルトダウンはありえない、メルトダウンしたら終わり、お手上げ・・・と東電の現場の人達もそう思っていた(NHKの番組で)ようです。シビアアクシデントはありえないという安全神話があったので、全住民に避難を呼びかける事態、子どもたちにヨウ素を配る事態は日本では起こらないという前提です。…恐ろしいほど非科学的ですが「神の国・日本」で、「原発は危険」という考えは非国民扱いと同じです。だから、避難するという判断もできず、汚染の基準値も危険な時ほど高くして危険が遠のくと低くするというような馬鹿なことを国のリーダーが平気でするような恥ずかしい国なのです。国民の命と健康が第一の国ではないのです>>


もう一つ、福島で驚いたのは、放射能ホットスポットを示す標識が一つもなかったことだウクライナではあちこちに立っていた。ところが福島では、20キロメートルのボーダーでさえこの標識がなかった


さらに、日本が外国の専門家の調査協力を拒否したことは、大きな問題だと思う。例えば、スイス政府が管理する「アク・ラボ・スピーツ(ACLabor Spiez)」は、詳細な放射線量の測定を専門とする組織でチェルノブイリにも派遣された。汚染地図作成に優れ、ホールボディーカウンターも備えていた。それらを全てを持ち込んで日本で協力したいと申し出たが断られた。

こうした外部団体による客観的なデータを市民に与えることは、安全と信頼性を確保する上で非常に大切だ。病気でのセカンドオピニオンに当たる。それに民主主義の国では、困難な状況にあるときは助け合うのが当然。それにあれだけの事故だったのだから。なぜ拒否されたのか理解に苦しむ。

ただ、もしスイスで同じことが起これば、スイス政府も混乱し同じような対応をしていたかもしれないが。


swissinfo.ch : 今の福島第一原発の状況をどう捉えていらっしゃいますか?

ボース : 東電と話したが、彼らさえ、何が内部で起こっているか把握していない。もともと、あれほどの放射能がどこから出てきたのか理解に苦しんでいる


また、今後どうなるのかもよく分かっていない。高線量のため(格納容器近辺)には近づけず詳細に把握できないからだ。今のまま、水で冷やし続けるとしても炉心溶融(メルトダウン)した核燃料を取り出すのに30年はかかる。また、今の方法で冷却が続けられていること自体、多くの学者が「奇跡」で人類が経験したことのない唯一のケースだと言っている。

皮肉でだが、あるロシアの物理学者は「チェルノブイリはラッキーだった」と言っている。なぜならチェルノブイリでは、核燃料のほぼ7、8割が放射能として外部に出てしまった(もちろん汚染を引き起こしたが)。したがって、残った仕事はいかに除染するか、いかに原発に覆いをかけるかだけだった。

ところが、福島の場合、核燃料の8割は格納器内にとどまっているとされる。今後、これをどう扱っていくかは、物理学者にとって「まるで月での探検のような」、未知のチャレンジになるという。


(全文はリンクからどうぞ。)


インタビュー中、ボース氏が、「理解に苦しむ」と続けざまに言っていますが、本当に理解に苦しみます。そして、理解に苦しむことが更に増え続けているのも、理解できません。


福島も含めた原発問題をきちんとクリアしないままに、現在、「原発を稼動させないと電力がたりなくなる」という電力会社、これも本当に理解できません。

(本音は単に、「原発を稼動させないと、自分達が大変」ということでしょう。)