核燃サイクルの原子力小委「最終案」記事について

二つ目です。
日経16日(水曜日)朝刊2面の真ん中7,8段を使った大きな記事に、内閣府原子力委員会の小委員会が16日に示した核燃料サイクルに関する政策選択肢の最終案について書かれています。
ところが、これが何とも分かりにくい説明です。記事を何度読んでも要領を得ません。
<「全量再処理」、再処理を止めて全て地中に埋める「全量直接処分」、「再処理と直接処分の併存」の3つに決定。不確実な情報を見極めるための「留保」案は選択肢に含めず、利点とデメリットの評価にとどめた。>というリードの部分から分りません。
本文記事(部分)を読むと:

 全量再処理について、中長期的には原発の比率を維持・拡大する場合、使用済み燃料の管理・貯蔵などの観点から「最も有力な選択肢」と指摘。ただ、将来の原発比率が不透明になると「経済的に最も劣る」と言及した。
 再処理と直接処分の併存は、将来が不透明な場合に「政策の柔軟性があることから最も優れている」と評価した。
 全量直接処分では、原発比率をゼロにする「脱原発」へ明確に進む場合は「経済的に最も優位となる可能性が高い」と評価。一方で「短期的には政策変更に伴う課題が最も多く、使用済み燃料が行き場を失う可能性がある」と指摘した。
  新政策の決定を「留保」する案に関しては、青森県六ケ所村の再処理工場など核燃料サイクルの活動をある程度継続しながら留保帰還後の意思決定に備える「活動継続・留保」案など2つを示した。いずれも「政策変更がある場合の準備期間が得られる」とする一方、「追加費用が発生する」「核燃料サイクル事業に関する地元同意の先送り・撤回」がデメリットだと指摘した。

同じ内容の記事を「らいるのひび」(http://blog.rairu.com/?eid=677)さんでは北海道新聞を取り上げて、(表を読んで)<簡単に言うと「原発依存を0にして、再処理もしないで、プルサーマルもしなければ、8兆円くらいで済むところ、原発動かし、ちょっとでも再処理かプルサーマルをすると14兆円くらいになる」ということです
つまり「使用済み燃料をリサイクルしないともったいない」という主張は全く嘘で、「使用済み燃料をリサイクルするともったいない」ということを国が明らかにしたということです>と明快です。
同じく「生き生き箕面通信」(http://blog.goo.ne.jp/ikiikimt/e/e99cb91f23418e8bf7a54811ef7c957b)さんでは、「まだ『核燃料サイクル』を継続しようとしています」と題して、<「核燃料サイクル」は、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再び原子炉で燃料として使うという構想です。処分がやっかいなプルトニウムを再利用できるので、使用済み核燃料の処分量を大幅に少なくできるうえ、発電にも利用できるという「夢のサイクル」のはずでした。ところが、いくらカネをつぎ込み、何年かけてもその技術は確立できず、失敗に継ぐ失敗。計画は破たんしたことが明確になりました。アメリカもフランスでさえ、とっくに撤退している構想です。ところが、今回の小委員会の出した選択肢は、プルトニウムを何んとか使い続ける道を残そうとする”答申”です>と批判されています。

日経の記事の書き方の一番不思議な点は、「全量再処理」を最初に持ってきて説明しているあたり「再処理」前提で、あたかも日本において現実に「再処理」が上手くいって核燃料サイクルが可能であるかのように印象付けているところです。

ところで、困ったときには小出裕章氏に聞くのが一番です。(昨年、事故の状況の説明で、メルトダウンだのメルトスルーだの、後から先生が仰っている通りの事故の進展に驚いたものです。最初はそんな〜と思っていても、先生の説明の正しさは事故の状況が証明していました。)
今回はどんな解説でしょうか。
小出裕章(京大助教)非公式まとめ」の「使用済核燃料「再処理」行き詰まり「早くこんな夢から醒めなければいけません」 小出裕章http://hiroakikoide.wordpress.com
書き起こしブログさんの「小出裕章氏の使用済み核燃料「再処理」行き詰まりの説明がわかりやすい5/16](http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65805868.html)から中略で引用です。
これを読んでいると、小出氏の理解では、「再処理」はいずれ撤退だけど「撤退」と言えば間違いを認めなければならないので、「再処理」については黙っておいて、地中に埋める処理も考えるというのが今回の最終案なんだ」と取っていいのか…と思いますが、皆さんはどんなふうに読まれるでしょうか。

水野「で…今回、まあ、…原子力委員会の小委員会が、最も望ましいやり方だと、いうふうに結論づけたのは、使用済み核燃料を再処理する、のこの取り出したプルトニウムを再利用するっていうやり方ですね」

▼参考:なぜコストは圧倒的に「直接処分」が安いのにプルサーマル温存なのか 再処理・直接処分コスト最終案

小出「はい」

水野「これと、あわせて、え…地中への廃棄をすすめること、であると。こういう結論を出してきたようなんですね。」

小出「はい」

水野「ただ、これわたくし、意味がよくあんまりわかりませんで。」

小出「はい」

水野「使用済み核燃料の再処理とあわせて、地中への廃棄をすすめることって。これどういう意味ととったらよろしいんですか」

小出「(苦笑)。要するに彼らが混乱している、のです」

水野「(苦笑)はあ…」

小出「はい。…もともと、地球上にあるウランというのは」「大変貧弱な資源、でして」「え…普通の原子力発電所でウランを燃やして、それを使用済みになったということで廃棄をしてしまいますと、原子力なんてエネルギー資源にならないのです」
水野「あっ。もう次々ウランを使い果たしてしまったら、枯渇するってことですね

小出「もうすぐに枯渇してしまう。」「だから、え……困るので、使用済みの燃料の中からプルトニウムを取り出して、それを高速増殖炉という特殊な原子炉で燃やすことによって、初めて原子力を意味のあるエネルギー源にしようとする計画だった、のです」「え…ですから再処理をしてプルトニウムを取り出せない限りは、もう原子力なんてもともとやる価値がなかったということで。」
水野「はあ」

小出「これまではとにかく、あの、再処理を何でもかんでもするんだという、」「路線で日本は来たのですが」

水野「全ての、使用済み核燃料は再処理するんだというのが国策だったんですよね」「で、実際できたん、ですか」

小出「実際何もできなかった

水野「なーんにもできてないんですね」

小出「はい。高速増殖炉の実験炉「常陽」も潰れてしまいましたし、原型炉として作った「もんじゅ」も、1キロワットアワーの発電もできないまま潰れてしまっている、のです。」「え…再処理工場自身も、作ってはみたものの、あちこちトラブル続きで、結局動くこともできないという、」「ことになってしまっていて。え…これまで原子力を進めてきた人たちがかいた夢が全く実現できないまま、巨額な国費を捨ててしまった、のです」

水野「で、それだったら、」「いままで、描いた夢は無理でしたごめんなさい」「今度こういうふうにしますって、言うんだったら私も意味がわかったと思うんですよ」

小出「はい」

水野「でも、再処理もする、それとあわせて、まあ土地の中に」「捨てるって言ってるんでしょ」

小出「そうです」

水野「それで余計意味がわからないんです」

小出「そうです。全くだから意味がわからない選択を彼らがまた言い出した、のですね」

水野「と言うことはですね。」

小出「はい」

水野「え…使用済み核燃料の再処理とあわせてというけど、これはもう、もともとできないということが、もうわかってきて」

小出「はい」

水野「もうできないと、本当は、あ…言ってるというふうにとっていいんですか

小出「え…私ははっきりというべきだと思いますし」

水野「ええ」

小出「まだ、片足をそっちに突っ込んでいる状態なわけですけれども

水野「はい」

小出「いずれその足も抜かなければならない日が来ると思いますので。」

水野「はあ…」

小出「早くこんな夢から醒めなければいけません

水野「そうですね」

小出「はい」

水野「無理なら無理と言って、次を考えるしかないですよね」

小出「そうです」

水野「それでも、なんで片足ツッコミ続けたいんですか

小出「え…それを言ってしまうと、原子力が全く意味のないものであることを認めてしまうことになるからです

水野「そうか。ウランの燃料はすぐ枯渇するんですから

小出「はい」

水野「土台、原子力でやっていくということは無理であるということに繋がるわけですね」

小出「そうです」

水野「じゃあ実態は、これ、地中に廃棄ってつまり地面掘ってそこに、使用済み核燃料を埋めるっていう意味ですよね」

小出「そうです」

水野「で捨ててしまう、そのままほっとくっていう意味ですよね」

小出「そうです」

水野「結局これを100%するしかないんですという意味になるんですか?」

小出「え…私自身は再処理などということをやってはいけないと、発言をしてきましたし、使用済燃料をそのままの形で何か処分をする方法を考えるべきだと主張をしてきましたので。」

水野「ええ」

小出「え……う……再処理をやらないという決定はいいのですが、ただ私自身も、使用済燃料をそのまま地面に埋め捨てにするなんてことをもちろんいいと認めたことはかつて一度もありませんし。」


  <中略>(ガラス固化体の話です)

もうそれもやめちゃうってのは、なんでそんな計画になるんですか」

小出「え…ガラスに…するためにはまず再処理という作業をして、」

水野「あっ。はあー…」

小出「プルトニウム等を取り出して、」

水野「あ」

小出「で残った核分裂生成物をガラスに固めるという作業だったわけですが

水野「ええ」

小出「再処理自身がもうできない状態に今陥っていますし」

水野「ああー」

小出「六ケ所村の再処理工場でも、とにかく分離はしてみた、核分裂生成物の分離をしてみたわけですけれど」

水野「はい」

小出「それをガラスにしようと思ったらぜんぜんできないで」「こわれてしまった(苦笑)、のです、装置が

水野「へえー…。じゃあもう世の中に、どうしていいか、処方箋は無いってことですね今は」

小出「はい。まあもともと、あの、原子力発電所はトイレのないマンションと呼ばれてきましたし。生み出したゴミをどうすればいいのか、だれも知らないままここまで来ているのです

水野「もしですよ、使用済み核燃料を、なんにもしないそのままの形で、地中に埋めますね」「ほっときますね」「どうなるんですか」

小出「え…100万年間安定であって、貰わないといけませんので。え…私は多分いつの時点かでそれが環境に漏れてくるだろうと思います。」

水野「…ねえ、地震もありますよね」

小出「はい、まあ」

水野「活断層もあります」

小出「そうです。もう日本なんていう国は活断層のない場所はありませんし。年がら年中地震が起きてるわけですから」

水野「ええ」

小出「100万年なんて言う(苦笑)、時間の長さにわたって保証できるような土地はどこにもありません」

水野「…はあ…。近藤さ〜ん…」

近藤「はい。」

水野「なんかものすごいことを、つきつけられてるんですね」

近藤「そうなんですよね…。だからまあそういうことは、だからある意味最初からわかった上でもう、見たくないものを考えたくないもの(笑)は考え無いできたんじゃないんですかねえ。」

小出「おっしゃるとおりです、はい」

近藤「うーん…」

水野「わたし去年、映画でですね、フィンランドの「100,000年後の安全[DVD]」という映画を見ました。」

小出「はい」

水野「これはあのフィンランド、での高レベル放射性廃棄物を最終処分するところを地下に作ってるっていう話だったんですよ、ドキュメンタリーで」

小出「そうです」

水野「あれたしか地下500メートルまで」「硬い岩盤をずうーっと掘っていくっていう」「でものすごい地下都市みたいになってますよね」

小出「そうです。」

水野「あんなところにフィンランドは、まあ置こうと、捨てようとしてるわけですよね」

小出「まあ世界中それしかもうないから、なるべく深い穴を掘ってそこに埋めようとしている、のです。日本もまあそれしか無いだろうということで、再処理をした、うえにできたガラス固化体をそうしようという計画だったのです。」

水野「はあ…しかしそれさえも破綻したと」

小出「はい」

水野「それなら破綻したとはっきり言ってくれたら」

小出「(苦笑)」

水野「まだ、まだしも、現実が見えやすいんですが」

小出「そうですね。」

水野「う、う、見えたら困る人がいはるんですか」

小出「まあ原子力の世界というのは、私何度もこの番組でも聞いていただいたと思いますが。
失敗をしても誰も謝りもしない、責任も取らないという、そういう世界なのです。」

近藤「まあなんて言うんでしょう。今さえ良かったらいいみたいな感じですよね」

小出「そうですね」

水野「実態は100万年後まで続くわけですよね」

小出「はい」

水野「はい。どうもありがとうございました」

小出「はい。ありがとうございました」

水野「京都大学原子炉実験所助教小出裕章さんにうかがいました」

◎参考:「小出裕章氏のプルサーマル発電批判がわかりやすすぎる!」(http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65720917.html