中村哲氏のペシャワール会報(112号)が届いています。
アフガニスタンの過酷な自然環境の中で闘っているペシャワール会の会報は、いつも自然から少し遠ざかった都市生活者の私には人間と自然の関係を改めて考えるキッカケになります。
今回も冒頭の中村哲氏の2011年度現地事業報告の一部を取り上げてみます。
自然とは人の命運をも支配する摂理である
必要なものは多くない。恐らく、変わらずに輝き続けるのは、命を愛惜し、
身を削って弱者に与える配慮、自然に対する謙虚さである。
現地事業がその思いに支えられる限り、恐れるものは何もない。
PSM総院長/ペシャワール会現地代表 中村 哲
<前略>
医学を含め、今日私たちに突きつけられている最大の課題は、「自然と人間の共存」である。私たちは自然を操作し、人の意に従えるよう努力してきた。それが文明の発展であり、豊かさをもたらす最善の道だと教えられてきた。
だが、アフガニスタンで見る限り、事態はそうでもない。自然とは人の命運をも支配する摂理であり、人の意識の触れることができない一線を画して厳存する。
私たちは荒唐無稽なカルト集団の考えを笑うが、時代が共有する迷信や倒錯から誰も自由ではない。近代技術が長足の進歩を遂げた今日、ともすれば、科学技術が万能で、人間の至福を約束するかのような錯覚に陥りがちではなかっただろうか。また自然を無限大に搾取できる対象として生活を考え、謙虚さを失っていなかっただろうか。自然はそれ自身の理によって動き、人間同士の合意や決まり事と無関係である。
大震災を経て、市場経済の破たんが世界中でささやかれる今、命はただ単に経済発展や技術進歩だけで守られないというのが、ささやかな確信である。
その一方で、新たな模索も又、あらゆる分野で静かに始まっている。その声は今でこそ小さくとも、やがては人類生存を掛けた大きな潮流にならざるを得ないだろう。
必要なものは多くはない。恐らく、変わらずに輝き続けるのは、命を愛惜し、身を削って弱者に与える配慮、自然に対する謙虚さである。現地事業がその思いに支えられる限り、恐れるものは何もない。
この一年間、立場を超えて人の温もりと良心に励まされ、無事経過したことを、感謝し以て報告し、12年度もさらに力を尽くしてゆきたい。
▽2011年度の概況、PMS事業の概況、2012年度の計画は省略しました。
▽写真はご近所Yさん宅のブッドレア、ここのは今が盛りです。