「戦後史の正体」と「NRCが原発新設認可凍結」

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書1)

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書1)


終戦(敗戦)記念日の前日に読み終えました。
70年近い戦後をこうやって元外交官の立場から対米追随か自主路線かという目で見てみると、アメリカの占領政策が見事に「成功」している日本の現実に打ちのめされる思いがします。今日本人にとって大事なのは、こういう現実を意識できるか、それを屈辱的だと感じることが出来るか、ということ。
竹島に韓国大統領が上陸して、「天皇が韓国に来たければ謝罪してから」と言われれば、日本人なら誰もが「屈辱的」と感じるでしょうが、70年近く時間をかけて、真綿で首を絞めるように徐々に、それも、今では同じ日本人の手で・・・となると意識が朦朧として・・・気持ちいい〜ぐらいになってるのかな〜と思わなくもないです。アメリカにも日本を民主国家として再生させ新たな隣人として対等な関係を望んだ人たちもいたのに、残念です。
今となっては対米問題というより、日本の側でアメリカの意向を忖度してひたすらアメリカを怒らせない様に、アメリカの利益イコール日本の利益という従米絶対の政治家や官僚、経済人、マスコミ、学者達らで出来ているこの国のエリート(アメリカムラ?)と、言うべき時、言うべきことは言う自主路線でと考える人たちとの力関係、という気がしてきました。
15日の「生き生き箕面通信」さんの記事「67回目の『敗戦の日』―『侮辱の中で生きるのをやめよう』」と一致しますので、コチラも:http://blog.goo.ne.jp/ikiikimt/e/253bb5888c8463ec0ff463945192a7c3

「戦後史の正体」の感想にかえて、あとがきから端折りながら引用してみます。
その前に、私が驚いた岸信介佐藤栄作両首相が「自主派」に分類されていた件。岸首相は、当時、高1の私には朝日新聞が唯一の社会の窓でしたので、朝日の論調に無批判だったということが分りました。「安保反対」より「岸退陣」は、実感としてわかります。佐藤首相については沖縄問題で国民を騙したという点でしか見ていなかったのですが、若泉敬氏が結んだ「沖縄密約」には同時に「繊維密約」があり、「密約はない」という立場を貫いた佐藤首相に対する、キッシンジャーからの報復があの突然のニクソンの訪中だったという。もちろん報復はこれに留まらず…というこのあたりは、リアルタイムで知っている事項が新たに繋がってきて驚きました。ただ、抵抗したから自主派という分け方もちょっと大雑把かな〜という気はしますが。
それでは引用です:

 ここで指摘しておきたいのは、占領期以降、日本社会のなかに「自主派」の首相を引きずりおろし、「対米追随派」にすげ替えるためのシステムがうめこまれているということです。
 一つは検察です。なかでも特捜部はしばしば政治家を起訴してきました。この特捜部の前身はGHQの指揮下にあった「隠匿退蔵物資事件特捜部」です。終戦直後、日本人がかくした「お宝」を探し出しGHQに差し出すのがその役目でした。したがって検察特捜部は、創設当初からどの組織よりも米国と密接な関係を維持してきました。 
 次に報道です。米国は政治を運営するなかでマスコミの役割を強く認識しています。占領期から今日まで、米国は日本の大手マスコミのなかに、「米国と特別な関係をもつ人びと」を育成してきました。占領時代はしかたがなかったかもしれません。しかし今日もまだ続いているのは異常です。さらには外務省、防衛相、財務省、大学などのなかにも、「米国と特別な関係をもつ人びと」が育成されています。 
  そうしたシステムのなか、自主派の政治家を追い落とすパターンもいくつか分類できます。 <略>


 この六つのパターンのいずれにおいても、大手マスコミが連動して、それぞれの首相に反対する強力なキャンペーンを行っています。今回、戦後70年の歴史を振り返ってみて、改めてマスコミが日本の政変に深く関与している事実を知りました。


<略>


 ではそうした国際政治の現実の中で、日本はどう生きていけばよいのか
 石橋湛山の言葉に大きなヒントがあります。・・・・・「あとにつづいて出てくる大蔵大臣が、おれと同じような態度をとることだな。そうするとまた追放になるかもしれないが、まあ、それを二、三年つづければ、GHQ当局もいつかは反省するだろう」
 そうです。先に述べたとおり、米国は本気になればいつでも日本の政権をつぶすことができます。しかしその次に成立するのも、基本的には日本の民意を反映した政権です。ですからその次の政権と首相が、そこであきらめたり、おじけづいたり、自らの権力欲や功名心を優先させたりせず、またがんばればいいのです。自分を選んでくれた国民のために。 

 それを現実に実行したのが、カナダの首相たちでした。まず、カナダのピアソン首相が米国内で北爆反対の演説をして、翌日ジョンソン大統領に文字通りつるし上げられました。カナダは自国の10倍以上の国力を持つ米国と隣り合っており、米国から常に強い圧力を掛けられています。しかしカナダはピアソンの退任後も、歴代の首相たちが「米国に対し、毅然と物を言う伝統」をもちつづけ、2003年には「国連安全保障理事会の承認がない」というまたくの正論によって、イラク戦争への参加を拒否しました。国民も七割がその決断を支持しました。

<略>

 「米国と対峙していくことはきびしいことだ。しかし、それでもわれわれは毅然として生きていこう。ときに不幸な目にあうかもしれない。でもそれをみんなでのりこえていこう」 

 という強いメッセージがこめられているのです。

「維新の会」の教材に是非この本を取り上げて読んでほしいと思います。
昨夜のNHK終戦・なぜ早く決められなかった」の中で、この本の出だし、8月15日を「終戦」とすることで、全面降伏して負けた事実を誤魔化し、戦争の責任追及や反省がおろそかになったと指摘していたことが事実だったことが分りました。「受け入れやすいように」「ごまかすために」「終戦という言葉を私が使った」と言った人が。情報の共有が出来ず、決められず先送りという戦前の戦争指導者たち、戦後も日本は余り変わっていないんだな〜とも。

●●●15日の日経朝刊の記事から:

米 原発新設に冷や水 / 「核燃料処理に新たな指針を」 規制委が認可凍結


原子力発電所で使い終えた核燃料の中間貯蔵や最終処分を巡る問題が米国で再浮上してきた。米原子力規制委員会(NRC)が使用済み核燃料の取り扱いに関する新たな指針を策定するまで、原発の新設や運転期間延長を認可しないと決めたためだ。策定作業が長引けば新設計画や既存原発の運転に支障が出る可能性がある。米政府が使用済み核燃料の扱いで慎重姿勢を決めたことは日本などの核燃料サイクル見直し論議にも影響を与えそうだ。


<大きく省略>


 新型天然ガスシェールガス」の増産で、米国ではガス価格が大幅に下落。福一事故を教訓とした安全対策の強化で、もともと割高な原発の建設費は一段の上昇が見込まれており、電力会社のガス依存は加速している。
 業界には「今期あの決定で、ただでさえ冷めていた米国内の原発新設熱が一段と失われるのは避けられない」(米原発事情に詳しいコンサルタントのロジャー・ゲイル氏)との声もある。
 今回のNRCの決定は、原発を取り巻く環境が大きく変わる中、使用済み核燃料の安全な貯蔵と最終処分が難題であることを改めて示した格好。日欧などの原発保有国の核燃料サイクル原発の寿命を巡る論議にも影響を与えそうだ。
(記事中の写真:ジョージア州のボーゲル原発3,4号機の建設現場=「指針策定が遅れれば新設計画に影響が出る可能性も」)
(写真の下の囲み記事:「最終処分、各国で課題/ 現状、具体策なく稼働」という見出しで記事)

写真は上から、オカメヅタの上のセミの抜け殻、こぼれ種のユリ、メドウセージ、白蝶花、そして百日紅サルスベリ)の花。