「”核のゴミ”処分の前提(岩盤と地下水の安全性)が崩れた…」(10/1「クローズアップ現代」その1)

10月1日に放送されたクローズアップ現代を録画していました。最初に見た時もこれは大事な話だからキチンと残しておきたいと思っていたのですが、今回見直して改めて大事な内容だと思いました。本来、原発は産業としても技術としても存在してはいけなかったのに・・・ということがハッキリと分りました。それなのにどうして?というところで、導入時の問題がアメリカとの関係で浮かび上がってきますが、もう一つは日本だけではなく世界でも同じ問題を抱えています。それでも、1978年に選挙で脱原発を決めたオーストリアは、チェルノブイリ以後の1999年には「原子力のないオーストリア」と宣言までしています。またチェルノブイリから教訓を得て学んだ国は多く、人々は原発廃止の方向を考え始め、去年のフクシマ をキッカケにドイツやイタリア、ベルギーやスイスが方針転換を打ち出しています。
問題は日本です。日本の私たちが脱原発を考えるために もう一度、原発の持つ問題点をこの番組でおさらいです。

「10万年の安全は守れるか〜行き場なき高レベル放射性廃棄物〜」   

みなさんは想像できますか? 10万年という途方もない長い時間を。
今、10万年という長い時間が私たちにとって大きな問題となっています。
原発で核燃料を使用した後に残される高レベル放射性廃棄物、人が近づけば20秒で死ぬほどの極めて強い放射能が安全なレベルになるまで10万年もの時間を要します。その為地下深くに埋めて人間社会からやりくりする地層処分が国の方針となってきました。しかし、去年の東日本大震災原発事故のリスクに加え、この地層処分にもリスクがある可能性を浮かび上がらせてきました。
国の特別機関・日本学術会議は現代の科学では安定した地層を見つけるのは難しいと地層処分の方針を白紙に戻すべきだと提言した。「地層処分を日本のどこかでやるというのは、大きな賭けみたいなものです」と専門家は言います。10万年の安全が問われる高レベル放射性廃棄物の最終処分.私たちはどう向き合えばいいのか考えます。

国谷裕子キャスター:「今晩は、クローズアップ現代です。原発には事故のリスクがあることが、去年の3月の事故で私たちは痛感しました。事故によって拡散した大量の放射性物質によって住み慣れた故郷を奪われた多くの人々、又、事故によって破壊された原発放射能汚染されたガレキの処分という難しい課題にも直面せざるを得なくなっています。
事故のリスクと共に原発にはもう一つの大きな問題があります。それは使用済み核燃料から出てくる核のゴミ・高レベル放射性廃棄物の捨てる場所が見つかっていないという問題です。高レベル放射性廃棄物は使用済み核燃料をリサイクルするときに出て来るもので高さ130cmのステンレス製の筒に入れられています。
平成12年、国はこの高レベル放射性廃棄物を地下300mを超えるところに数万年にわたって埋めるという地層処分を決定しています。しかし、処分場の候補地選びは全く進んでいません。現在、各地の原発には大量の使用済み核燃料が貯まっています。
国の計画通り高レベル放射性廃棄物の処理計画が進展しないなかで、国に対して政策の提言や勧告を行う権限を持っている日本学術会議が、先月(9月11日)、原子力委員会に対して1つの報告書を出しています。地層処分を安全に行うための地層を見つけることは現在の科学では限界がある。国は計画を白紙に戻す覚悟で見直すべきであると提言した。処分場の候補地が見つからないというだけでなく、そもそも地層処分を行うことが難しいのではないかと突きつけたのです。」


青森県六ヶ所村にある日本原燃の高レベル放射性物質貯蔵センターには1400個ほどのガラス固化体が1時保管されている。再処理でウランとプルトニウムを取り出した廃液は、人が近づけば20秒で死亡するほど危険、これをガラスで固めたガラス固化体にして保存する。
岐阜県瑞浪みずなみ)市には地層処分の研究施設である日本原子力研究開発機構・東濃地科学センターがあって研究がつづけられている。地下300mにトンネルがあり、研究しているのは地下処分の安全性を決定づける「岩盤の性質」と「地下水の流れ方」。
廃液を入れた鋼鉄製の容器は岩盤のなかに埋められます。鋼鉄は年月とともに腐食し、漏れだすまでの1000年は耐えられる。その後溶液は地下水で運ばれる可能性もあり、地表にまで達するのは数万年。その頃には放射能は安全なレベルまで下がっているという試算。鋼鉄という人工バリアと岩盤という天然バリアで10万年をクリアする計画である。


地層処分が法律で定められる根拠となったのは、1999年の「地層処分研究開発第2次取りまとめ」という国の研究機関によってまとめられた地質や地下水の調査報告だった。日本原子力研究開発機構地層処分研究開発部門 梅木博之部門長:「飽くまでも日本の地質環境条件というものを総じて論じてあります。結論としては日本に置いて地層処分という技術が適応できることを当時の技術的レベルで一般的なことですが可能であるという結論になったということです。」


しかし、今回、学術会議は地層処分を行うことは地震の多い日本では困難だと結論づけた。
日本学術会議検討委員会の今田高俊委員長:「千年から万年、10万年先なんてのは、責任もって大丈夫といえるような状況ではないです。」


学会が一つの参考としたのは地震学を専門とする神戸大学の石橋克彦名誉教授の意見です。それまで『地震を起こす活断層を避けて処分を行えば安全』としてきた国の方針に対して、石橋さんは活断層の見つかっていない場所でも大地震は起こると主張してきた。その根拠の一つが2000年10月の鳥取県西部地震です。震度6強地震が起きたのは活断層が無いとされてきた場所だった。

石橋教授:「「第2次取りまとめ(1999年)」段階で日本列島の活断層は赤い線が引かれていて、地震の起こらない真っ白の土地が広大にあると言ってるわけですけれども、2000年の鳥取西地震というのは赤い活断層が全く引かれていない所でマグニチュード7.3の地震が起こったわけですから


さらに、東日本大震災1か月後の去年4月11日、福島県いわき市で起こった震度6強地震。この時、石橋さんが指摘していたもう一つの問題が発生していた。地震による地下水の変動です。住宅地の真ん中から大量の湧き水が噴き出している。バケツを水のなかに一瞬突っ込んで水の量を測ってみると、「毎秒4リットルくらい」。産業技術総合研究所地質情報研究部門・風早康平博士:「全然終わる気配がなくて1年半経っても出続けているということになってます。」活断層がずれたことによって地下水の道に大きな力が加わり水を一気に地表に押し上げたと考えられる。(右上図)


(←)地震学を専門とする神戸大学名誉教授の石橋さんはこう指摘します:「大きな地震が起きると、岩盤という天然のバリアが機能しなくなる可能性がある。今現在、我々の世代で、ここなら10万年間大丈夫ですという場所を選べるか具体的に指定できるかというと、それはできない。 一言で言えば、この日本列島で地層処分をやるというのは、未来世代に多大な迷惑を掛けるかもしれない可能性のある本当に無責任な巨大な賭けだと思う。」
一方、(→)地層処分を推進する国の機関である日本原子力研究開発機構地層処分研究開発部門 梅木博之部門長は:「研究を進めながら安全性を追求していきたい」としている。「今までいろいろ計算したり、検討したりした結論から言えば、大きく覆(くつがえ)ることは今のところ私は無いと思います。ただし、そこは、十分に最新の知見で再度論理構成をチェックするということになるかと思います。」

これから以降、国谷裕子さんの質問にゲストの京都大学大学院教授・植田和弘氏が答える形での解説に入ります。つづく。