ふたたびの「愚かで痛ましい我が祖国へ」

◇「Various Topics」さん「フランスのマリ軍事介入とウラン」(http://afternoon-tea-club.blog.ocn.ne.jp/blog/2013/01/post_d95d.html

◆◆月曜日のモーニングバードで日本原電の「発電ゼロなのに過去最高の純利益」は「どこから生まれてくるのか」を取り上げていました。慌てて撮った写真を並べてみます。取材で河野太郎自民党衆院議員が答えています。「携帯電話と同じで基本料金を電力会社が払っている。半年で700億円ものお金を電力会社が払っていて、そのお金は電気料金に上乗せしている」「不思議というか異常な支援の仕方は改める必要がある」と。茂木俊充経産相は「関西電力の電気料金値上げ申請の原価に日本原電に対する支払いが含まれているわけでありまして、その妥当性については現在電気料金審査専門委員会において審査中であります」と。

電力会社が半年で700億円支払って日本原電の2012年度上半期の純利益は209億円ということです。官民挙げて原子力発電を何が何でもという異常事態が、本来なら世界トップクラスの技術を持つ他のエネルギー産業の成長を阻害しています。そのことにも触れた、精神科医・久邇晃子氏の記事「愚かで痛ましいわが祖国へーどうか原子力政策を転換してくださいー旧皇族出身の女性が3・11に思うこと」(「文藝春秋」12月号)を読み直して一部再録することに。
その前に本日の「shuueiのメモ」さんから:

脱原発デモ 参加者増の兆し 自民政権に危機感


2013年1月12日 東京新聞


 主催する首都圏反原発連合によると、十一月末〜十二月初めは最も参加者が少なく五千人ほど。増加傾向に転じたことに、スタッフの戸原貴子さん(35)は「政権交代に危機感があるのでは」と推測する。「全員が毎回来るのではなく、ライフスタイルにあわせて入れ代わりに参加する形になってきた。初めて来たという人もまだおり、これまで届いていない層を開拓する方法を考えたい」と話す。


 八月以降、夫とともにほぼ毎回参加している東京都目黒区の渥美澄子さん(73)は「二人で来れば月数千円かかるし、日々の暮らしで精いっぱいの人は来られないでしょうどんな思いで来ているのか、首相や議員に想像してほしい」と訴えた。


 主催者発表で、この日の参加者は約一万三千人。警察関係者は八百人ほどとみている。

◎「愚かで痛ましい我が祖国へ」(昨年の1月14の蛙ブログ)は、丁度1年経って読んでみて、事故後2年近く、ますます愚かな方向へ行かないためにも今一度という思いです。中抜きで端折って引用します:

 知的財産権の保護を目的に設立された国連の専門機関WIPOが発行した報告書によると、代替エネルギー関連の特許は、なんと日本が世界の55%を占めたとのことです。対象とされた特許の分野は、太陽光発電風力発電、バイオエネルギー、地熱発電、CCS(二酸化炭素の回収、貯留)等です。次点が米国の20%、更に欧州9%、韓国6%、中国3%と続きます。日本の突出には目を見張るものがあります。一方で、世界のエネルギー関連投資を国別に分析すると日本は世界の5%に過ぎず、55%も占める特許を活かせているとは言い難い状況、とのことです。


 日本の技術開発力の素晴らしさと、それを社会化していく能力の貧困とのギャップは、何を意味するのでしょうか。


 明白なことは、自然エネルギーは実現性がないから、などとそれ自体根拠の薄いことを主張して、原子力発電の割合を含めて現状維持しか方法は無いのだ、と冷笑的な態度を取っている人が大勢を占めている間に、日本は世界に後れを取り、競争力が低下し、これから急速に成長していく可能性の高い有望な分野での(しかも日本が得意な分野での)またとないチャンスを逃していっている、ということです。

 日本は、呪われているのでしょうか?


 圧倒的な軍事力と経済力で迫ってきた西欧帝国主義列強の前で、人種差別と植民地化の恐怖におびえながら必死に富国強兵した私達の先祖。存亡の危機を乗り越え、自己嫌悪とその反動の自己礼賛的ナショナリズムの間の極端な振幅を行き来しながら、(一時、一種のコロニアルメンタリティーと白人に対する劣等感を内在化させて逆に東洋の国々を侵略するという暴挙に出た挙句)、やっと平和で安定した国(米国の軍事力に守られているからではありますが)になったかと思ったら、こうやってまた(良かれと思って始めたことだったかもしれませんが)、下手をすると自らを破滅させることになるかもしれないような綱渡りに乗り出し、硬直化してやめることが出来ない……。これは、集団自殺願望か? と疑いたくなる。


 愚かで、痛ましい我が祖国。


 美しい日本の野山を見ると、じっと耐えている東北の人々の姿を見ると、涙が止まりません。



 どうか、原発依存から徐々に脱却し、最終的には脱原発を実現する、という大きな目標に向かって方向転換する舵を切ってください。


 原子力そのものに、そして原子力発電に関わってきた多くの人々には、その労苦と、今まで私達にもたらしてくれた恩恵に心から感謝したいと思います。その上で、危険度が高いもの、止めやすいものからスピード感をもって順に止めて廃炉にしていく(福島第一原発では、5,6号機、また第二原発廃炉を東電において明言しておられないことには、強い違和感を覚えています……。どうか、借金を返すために新たな借金をする、ということにならないように、どうか、新しい希望のある方向に大きなシフトをしようとするときに、その足かせとならないように、と祈ります)。



 何ゆえ今回の震災で、これほど世界中の国々が日本をサポートしてくれたのか?

<略>


 日本が、戦争に負けて以来、自尊心の非存在に苦しみながら、なんとか世界の中の名誉ある地位を回復したいと努力してきた、そのために黙々と働き続けてきたこと、そのことを世界の人々、特に非西欧の人々(特に、日本が侵略して傷つけてきた国々以外の非西欧の人々)が、静かに、じっと見続けてきてくれたからだ。彼等はみな、苦労しているし、心の痛みを知っているからだ。たとえば、ヨーロッパの中でも、東欧の人たちや、ラテンアメリカの人たち。中近東のひとたちも。


 今、日本人が窮乏に耐え、必死に歯を食いしばって、自然エネルギーを基盤とした社会を築いていく道に一歩踏み出したら、そしてもしそれに少しずつ成功したら(必ず成功します、特許のことを、日本人の技術者魂と自由な心を見たら。「はやぶさ」が帰還した国ですから) これらの人たちは、心の底から喜んでくれる。そして、日本の経験知見は、日本にとっての最高の戦力となり、世界にとっての貴重な財産となる。このモデルが、他の国々、特に発展途上国にとって参考となり助けとなりうる。ひいてはこれが、新興国の経済発展による環境破壊、温暖化ガスの放出を減らせる(新興国が、環境破壊をできるだけせずに経済発展できる)。ひいてはこれが、先進国を含めた世界全体にとっての幸せとなるのですから……。 

全文を紹介したいくらいとブログで書いていますが、蛙ブログはコチラで:http://d.hatena.ne.jp/cangael/20120114/1326499072
(写真は、冬薔薇のツボミ。寒中の蕾が開花までたどりつけるか…。 上の蕾はウインタークレマチス。昨年は開いていたのに…やはり今年の冬は寒い。)