新春サロンコンサート

昨日は、Nさんに誘われて阪神武庫川駅近くの民家のホールで行われるコンサートに出かけました。
話せば長くなりますが、駅の近くのHさんのご主人の奥さんが声楽を習っておられて、その知り合いであるNさんが何回か誘われてご主人と一緒に各地の発表会(コンサート)に出かけておられます。今回は、Nさんのご主人は、お仕事で、じゃ、私にと声を掛けてくださったようです。私はHさんのご主人とは同じ福祉関係のお役で何年かご一緒していましたので奥さんのHさんとは電話で話したこともあり顔見知りですし、Nさんの車で3・11のチャリティコンサートでは川西池田へご一緒したこともありました。
さて、飛び切り寒い昨日、3時過ぎ、桜のトンネルまで出て車で拾って頂いて、武庫川沿いを一路、そのお宅の近くの医院の駐車場を目指すことに。Nさんも自分で運転していくのは初めてとのこと、ナビ任せですがそのナビも年代物?とか。少し、行き過ぎたり、戻ったり、タバコ屋さんのおばちゃんに教えてもらったりで、何とか見つけて車を置いて外に出ることに。お目当てのILDホールなんですが、そのあたり一帯の電柱に医院とホールの名前と道順の案内が出ています。
旧国道の側まで行ってしまうと2階が入口でホールは下。以前は下から入ったとNさんが言うので大回りして戻ることに。住宅街の曲がり角の奥にそれらしき3階建てのお宅を見つけました。すぐ横は武庫川の堤防のようです。時間にして4時ごろ。玄関先でNさんが一先ずご挨拶と車の件を報告して、まだ早すぎるだろうと外へ。駅の近くに喫茶店があるというので駅まで。浜側に出てもそれらしきお店は無く、もう一度線路を越えて戻ることに。やっとCoffeeと書いた小さいお店を見つけて入って注文。時間をたっぷりかけて運ばれてきたコーヒーに一息ついたら40分。5時までに入りたかったので、半分以上残して出ることに。
さて、コート掛けにコートを掛けたのは私たちが最後だったみたい。すでに大勢が詰めかけておられて、後ろから入り直し、Hさんが私たちのために取って下さっていた前から2列目の席に着いて開演を待つことに。
関西ブラボー協会の代表という方がご挨拶されました。フェスティバルホールの試し聴きに行ったというお話です。ステージのマイクなしの声が3階席の一番奥まで届くそうです。オケも演奏したらしく、ストレートに真っ直ぐ音が走るので演奏家泣かせのホールだろう、各楽器の音がクリアに把握できて、全体で聴こうと思えばアンサンブルになって聴こえるし…というお話。特に素晴らしくなったのがエントランスからホワイエ、赤じゅうたんが3階分敷かれていて、これなら海外からのお客さんに恥ずかしくない豪華さだと。これは春からのオープンが楽しみです。
さて、この”Anthology”( 名曲集)というコンサートはもう22年も続いているそうです。2000円の会費を渡して、簡単な立食のお食事がつくそうですが、その時貰ったプログラムには出演者と曲目がズラリ。30人、30曲以上です。演奏順はくじ引きとかで、トップが我々のHさん。一寸トップはお気の毒。グリーンのドレス姿がお似合い。名前と曲目と今年の抱負を。「カタリ・カタリ」、歌声はサスガ普通の声ではなく、特別の訓練を受けた声楽の声です。聞く私たち二人も大緊張でした。
最近このコンサートに参加したという意味の”フレッシュ”グループの女性陣が次々と歌われますが、声は楽器そのものです。身近に聞くソプラノ。古希を過ぎた方や定年後の趣味でとか若い時から夢捨てられなくてとか色んな方が様々なオペラの歌に託して、年相応のシブい声の方もあれば、お年を忘れるほどの声を出す方も。
男性陣も終わって、ベテラングループに入る前に、ピアノの演奏が2曲。一人は熟年女性がショパンの遺作、嬰ハ短調ノクターンを。この曲はショパンの中でも人気が高く、一度聴いたら忘れられない甘美で痛切なメロディ。この曲をこんな身近で聴く今日は幸せです。
さて、この後が、天才少年、山家(やまが)有翔君11歳(小5)の演奏です。私たちの前の席にこの少年が両親に挟まれて座っていました。ブラボー協会長のお話によりますと6歳にして大きな会場を虜にした天才少年とか。山家君の抱負は、昨年ピアノコンクールで銀賞だったので6月ハワイでピアノを弾くことになりそれに頑張ること。曲目はフォーレのヴォルスカプリス第1番。初めて聞く曲でしたが、私は斜めで小さい山家君が隠れて見えない位置、でもYAMAHAと書かれたピアノの正面に手元がキレイに映りますのでそれに見とれていました。ピアノは手が大きくなければというのはウソだな〜と思いました。体力がなければというのも嘘だな…。指も良く回るしリズムもシッカリ?してます。こんなに小さい身体の山家君のピアノ、打鍵も鋭く力強く、子どもが弾く音楽ではなくって堂々とした演奏でした。大きな拍手に応えてピョッコリお辞儀をするときは小学生に戻っていました。(全部終わった後、「山家くん、写真撮っていい? ハワイ、がんばってね!」と声を掛けたら、ポーズしてくれました。お母さんが、「写しましょうか」と私とNさんを入れて撮って下さいました)

さて、後半、ベテラン・グループの女性、男性と続きます。皆さん、衣装から曲目、語りとそれぞれ個性あふれる方たちの思いのたけの演奏ですので、どれもこれも迫力満点。オペラのアリアが多いのですが、中には久石譲の”スタンド・アローン”、NHKの「坂の上の雲」のテーマ曲を歌った方も。男性陣の中で、隣のNさんが、『この方、元NHKの』、と囁いてくれたのが飛田薫さんです。そういえば見たことのあるお顔、声はもっと聞いたことがあるお声です。79歳になりましたとのこと、ガンで闘病、抗がん剤の投与で元気がなかったが抗がん剤をやめて歌を唄って元気でいようと思ったというスピーチで、島崎藤村千曲川旅情の歌を。”小諸なる古城のほとり、雲白く遊子悲しむ”というあの有名な詩に広田龍太郎が曲をつけたもの。18歳まで千曲川沿いの長野県にいたという歌い手の郷愁が感じられる歌でした。
ベテラン勢の曲目紹介が長くなっても、私の前の山家君、時々手を頭にやったりしていますが姿勢は崩さずエライな〜と感心。艶やかな声が鳴り響くテノールのイタリア語や朗々たる歌いっぷりのバリトンでドイツ語やイタリア語や英語の歌が続いて、そのまま、ゲストの演奏に入りました。

メゾソプラノの奥西真弓さん母娘のモーツァルトフィガロの結婚」より”手紙の二重唱”、バリトンの油井宏隆という方の2曲、そして奥西さんのヴェルディのオペラ「マクベス」から”さあいらっしゃい急いで”。「これからスゴミますから」と言って歌いだされたこの歌のすごかったこと。『耳をつんざく声』というのを初めて聞きました。中学校の教頭先生(あるいは校長?)をやりながら関西二期会の会員で舞台も遣っておられて、歌と仕事と人と笑顔に支えられて病気を克服してきたというお話でした。今もガンの投薬治療を受けている方とはとても思えない歌声、さすがプロ。先ほど娘さんが今年の抱負で「母のような歌手に」と仰っていたのが分りました。母親の奥西さんが番外で最後にトラヴァトーレ「嫁ぐ娘への子守歌」(日本語)を歌われましたが心のこもった素敵な歌声でした。
ところで、この大半のピアノ伴奏をされていた福田和子さん、プログラムによりますと大阪教育大学特設音楽課程ピアノ専攻となっていますが、本当にお上手でした。ほれぼれする演奏で、歌が入ると、ピアノは寄り添うように、そして盛り上げる。見事な演奏で終わった後私はこの福田さんにお声を掛けてしまいました。もう一人の伴奏者は上田佳子さん、神戸女学院大学音楽部ピアノ科卒、同大学研究生終了、とプログラムに。
これで、プログラム全部終了。男性のベテランの中には、このホールのオーナーの大岡照治さんもおられます。また、プロと学者(チラシでは阪大基礎工学部修士課程修了。工学博士・分子科学研究所教授<有機太陽電池研究>)の二足のわらじを見事に履きこなしている平本昌宏さんの歌も聞きました。ご本人は小柄ですが、声量も表情も豊かでオペラの世界へ一気にという歌声です。6月にはリサイタルをされるのでチラシも入っています。
お腹もすいてきたころ、締めのご挨拶。やはり口上に時間が掛かって来年は1分以内に言いたいこと全てを収めるようにというご注意があって、立食の懇親会へ。パイプいすを片付けて真ん中にテーブルを合わせて、サンドイッチやサラダや果物、ケーキ、お寿司などと紙皿、紙コップ、割りばしが並べられました。思い思いの飲み物を入れた紙コップを手に、乾杯。さすが・・・でした。先ほどの福田さんが「乾杯の歌」をピアノで弾き始め、プロのお二人、平本さんが前にでて、ピアノのそばでは奥西さん親子が乾杯の歌を原語で…もちろん発表した方々も歌える方は皆唱和して、リアル乾杯の歌!でカンパーイ!!
食べ盛りの山家くんはチョコチョコとテーブルを廻ってお寿司が好物らしく隣りで食べるのに一生懸命。出演されたHさんも着替えて、箕面の私たち3人は、ブラボー協会長さんから箕面の近くにあるロシア領事館での3月のコンサートのご案内を聞きました。大岡オーナーからはご家族の話も聞くことが。ILDホールは何の略かと思えば腎臓病研究会(Institute for Liver Disease)の略で、本来は専門の腎臓病の学会を開いていたのに、今は殆どサロンとして音楽の発表会に使われているとか。奥さんは歌う予定だったのに、立食パーティの準備に疲れて今日は歌わなかったとか。現役の病院長さんで理事長さんだそうです。
最後に写真撮影があるとお声が掛かりましたが、途中で抜けることに。Hさんのご主人は大学時代のクラブの同窓会なので、帰りはHさんも一緒です。そのHさん、年金暮らしの私たちが付き合える人たちじゃないのよ〜とか言っておられましたが、そもそもは芦屋のコーラスに夫婦で顔を出すうちに誘われて、歌の練習をするうちに・・・ということでした。お陰様でいい体験をさせていただきました。隣県兵庫県の神戸市をはじめ文化的な層の厚さは素晴らしいと思いながら帰ったら、箕面は薄っすらと雪が降っていました。
30曲もの思いのこもった歌を聞いた後はすぐには寝床に入るのも惜しまれてというか興奮気味で就寝は12時を過ぎていました。Nさん、ありがとう。
写真は今朝の雪景色。アネモネに雪。北側の路面。クリスマスローズの葉にも雪。
メモ・岩本泰昌さま(S17生)大阪サンクト・ペテルブルククラブ世話人、Anthology主宰、関西ブラボー協会代表、ステージ写真家、元在大阪ウクライナ名誉領事館秘書(引用元:http://everyone1.exblog.jp/8223383