「嫌韓デモで初の逮捕者」(5/20)とレイシズム

在特会」の「ヘイトスピーチ」が物凄い!ということを息子から聞いていました。箕面に居ては分りませんが、大阪でも都心では在日韓国・朝鮮人に対する罵詈雑言、聞くに堪えない言葉を叫ぶデモがあり、それに反対するデモもあって、騒然とした空気になるそうです。新聞には載らないし、テレビでも見たことがないと思っていたら、20日(月)の日経夕刊、いわゆる三面記事の真ん中あたり、小さい記事ですので載せてみます。

嫌韓デモで初の逮捕者 警視庁、暴行容疑で
 東京・新宿で行われた在日韓国人らの排除を掲げるなどしたデモで、警視庁新宿署は20日、対立するグループ側に体当たりしたとして、自称元自衛官、赤井洋容疑者(47)を暴行の疑いで逮捕した。同署によると、同容疑者は「勢い余ってぶつかっただけ」と容疑を一部否認しているという。
 新宿周辺では「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などがデモを繰り返し実施。「ヘイトスピーチ(憎悪的表現)」が問題となる一方、対立グループとの罵声の応酬などが深刻化し、警視庁が警戒を強めている。
 新宿署によると、一連のデモでの逮捕者は初めて。逮捕容疑は19日午後6時40分頃、新宿区西新宿7の路上で男性会社員(51)の左胸などに体当たりした疑い。

いつか取り上げたいと、下書きに入れていたブログがあります。
その記事によりますと、今年の3月14日、民主党有田芳生参院議員が呼びかけた「排外・人種侮蔑デモに抗議する国会集会」があり、その日に配布されたチラシの「集会の趣旨」が載っていますので、その記事を紹介してみます。

はびこる排外主義とレイシズムに日の丸が泣いている


 3月14日、僕は参議院会館の1階講堂にいた。民主党有田芳生参院議員が呼びかけた「排外・人種侮蔑デモに抗議する国会集会」に参加するためだ。この日に配布されたチラシには、集会の趣旨が以下のように記述されている。



在特会」(在日特権を許さない市民の会)などによる異常デモが、東京・新大久保(2月9日)、大阪・鶴橋(2月24日)で行われました。そこでは「朝鮮人 首吊レ 毒飲メ 飛ビ降リロ」「よい韓国人も悪い韓国人もどちらも殺せ」「ハヤククビツレ チョウセンジン」(新大久保)「鶴橋大虐殺」(鶴橋)などが主張され、「殺せ 殺せ 朝鮮人」といったシュプレヒコールが繰り返されました。3月31日には「新大久保排害カーニバル」なるデモが再び行われる予定です。韓国や北朝鮮との間でいくら国際問題があろうとも、在日韓国・朝鮮人に対して殺人教唆する行為は、公共の平穏を乱し、人間の尊厳を傷つけるもので、決して許されるものではありません。ここに国会議員有志が抗議集会を行い、排外主義、レイシズム(人種差別)の広まりを押しとどめる意志を表明いたします。


在日外国人が日本で不当な特権を得ていると主張して、その撤廃を目標に掲げた在特会が発足したのは2007年。この5年間で急激に勢力を増大させ、日本各地で街宣・デモ・集会などを開催している。当初はネットの掲示板などを自分たちのフィールドにしていたので、ネトウヨネット右翼)などと呼ばれていた。


 この日の集会は有田の挨拶と宣言で始まり、次に20分ほどの映像が上映された。2009年に在特会が京都朝鮮第一初級学校の校門前で行ったデモンストレーションの映像だ。第一初級学校とは要するに小学校だ。幼稚園も併設されている。


 その校門前に日の丸の旗などを掲げながら現れた在特会のメンバーは、「日本人を拉致した朝鮮総連傘下の朝鮮学校、こんなもんは学校でない」「スパイの子どもやないか」「北朝鮮のスパイ養成機関、朝鮮学校を日本から叩き出せ」「約束というものは人間同士がするものなんですよ。人間と朝鮮人では約束は成立しません」「なめとったらあかんぞ」などと拡声器を使って怒鳴り続けた。もちろん校舎の中には子どもたちがいる。じっと息を殺して聞いていたはずだ。

この記事は「森達也 リアル共同幻想論」の第64回(5月2日)で、続きがあります。
映像を見ながら久しぶりに胸が悪くなった」というくだりでは、

 < 映像上映後、長く在特会を取材し続けてきた安田浩一が、「彼らには思想的立場はありません。彼らは右翼ではない。民族派でもない。保守でもない。そういう文脈が使われるべき立場ではありません。では何か。レイシストです。排外主義者です抗弁できない出自を攻撃し、自分たちが如何に優位に立っているか、あるいは如何に立ちたいかだけを主張する排外主義者です」と発言し、 彼らと裁判闘争を続ける上瀧浩子弁護士や金尚均龍谷大学教授などが経過と実情を訴え(個人攻撃ではないので、日本の法制度では彼らを摘発しづらいとのこと)、
 新右翼団体一水会鈴木邦男最高顧問が「先ほどの映像を見て非常に悲しくなりました。日の丸の旗が可哀想だと思いました。日の丸はもともと日本の優しさ、寛容さ、大和の国を現す旗です。それが排外主義的なものに使われている。日の丸の旗が泣いていました」と言い、 木村三浩一水会代表が「私は(彼らを)レイシストだとは思いません。レイシストはもうちょっと品格があって思想的であり、そして自分の思想においてもちゃんとしたレイシズムの考え方を体現している。彼らはレイシズム的ではあるけれども、いわば、自分が承認されたいために何か騒いで、そして脚光を浴びたい。そういう人たちじゃないかと感じます」と発言した。
  最後にマイクを渡された僕もほぼ同意見だ。彼らは右翼ではない。保守でもない。もちろん民族派でもない。そんな思想や信条は欠片もない。>

そこから森氏は、「日本の右翼の源流、玄洋社はどんな理念を持っていたのか」「在特会は弱者を見つけて攻撃するだけの集団だ」と書きすすめ、
そして、「問題は彼らを醸成する今のこの国の雰囲気だ」というところでは: 

 つまり問題は在特会そのものだけではなく、彼らを醸成する今のこの国の雰囲気だ。会場には国会議員も多数来ていた。冒頭で引用したチラシには、呼びかけ議員の名前が記載されている。社民党が一人とみどりの風が一人。あとは有田も入れて9人の民主党議員。


 つまり自民党議員は一人もいない。


 生保バッシングのきっかけを作った片山さつき参院議員は、かつて彼らのデモに参加したことがある。昨年の衆院選のときは、安倍晋三自民党総裁を応援する日の丸の小旗が街宣車の周囲で乱舞した。この2月に政府は高校無償化から朝鮮学校を除外することを決定し、大阪や神奈川など7都府県は朝鮮学校への補助金支給までも見送った。川崎市は浮いた補助金拉致問題関連の著作や資料を購入するという。阿部孝夫川崎市長は会見で「抗議の意志を込め、(朝鮮高校の)生徒の各家庭に現物を配分する」と言い切った。

こうした発言や政策が支持される。支持されるから迎合する。そのうちに自分たちこそが正義を体現しているのだと思い込む。 そもそも在特会が発足した2007年は、安倍第一次内閣の時期だった

だから考えてほしい。推察してほしい。彼らは社会と共振している。呼応している。つまり(実際の数量的にはともかく)気分的には多数派なのだ。だから後ろめたさが消える。薄暗い個室から往来に出て、多くの人にアピールしたくなる。仲間たちと集いたくなる。自分たちの正義を訴えたくなる。こうして相が少しずつ変異する。


引用元はコチラ:http://diamond.jp/articles/-/34875

◆◆タイミング良く「Various Topics」さんが5月21日付で「新大久保の痛い人達ーヘイトスピーチ」をアップされています。内容は、『各国の異人種への寛容度』に続いて、ニューズウィーク(5/20)の<反韓ヘイトスピーチを韓国人が慈しむ訳>というタイトルの クォン・ヨンソクという方の記事全文が紹介されています。
クォン・ヨンソク氏とは、本文から引用すると「韓国で生まれ、日本で小学校に通い、その後は日本と韓国(とたまにロンドン)の間を行ったり来たりして生きてきた僕にとって、今回の騒ぎは実に「胸が痛い」事件だった。ただ嫌韓派を簡単に否定するのは、いくら韓国人とはいえ政治学者のすることじゃない」ということで、韓国人政治学者で一橋大学大学院法学研究科准教授(東アジア国際関係史)。全文は是非コチラで:http://afternoon-tea-club.blog.ocn.ne.jp/blog/2013/05/post_3530.html
◇「Variou Topics」さんからは橋下徹氏の発言についての記事も取り上げてみたいと思っています。
ところで◆◆また、またタイミングよく、金曜デモのルポでお馴染みの「特別な1日」さんの20日のブログの前半は橋下氏の発言について、後半は「同じ大阪で育った、だけど正反対の人」通称バタヤン、つい最近94歳で亡くなった歌手・田端義夫さんを描いたドキュメンタリー映画「オース!バタヤン」について書いておられます。
田端さんは「鶴橋育ち」だそうです。大阪の鶴橋というのは、かつては猪飼野(いかいの)と呼ばれた地域で、在日韓国・朝鮮人が多く住み、焼肉屋や韓国料理店、キムチを売る総菜店や、民族衣装を扱う衣料店などの大きな商店街があるコリアンタウンです。「鶴橋育ちのロックンローラー:映画『オース!バタヤン』」はコチラで:http://d.hatena.ne.jp/SPYBOY/20130520/1369051592|

                     
花の写真は上から、カモミールクレマチス(テッセン)、ピンクの花はカタバミ、ツボミのアスチルベとピエールドロンサールという名前のバラ