「もんじゅ”継続”の行方」(その2)

<NHK10月4日(金)の「かんさい熱視線」<もんじゅ”継続”の行方>の続きです。その前にお知らせ:

原発ゼロ」13日合同デモ=3団体、霞が関で−東京


 東京電力福島第1原発事故を受け、「原発ゼロ」を目指す三つの市民団体が7日、東京都内で記者会見し、13日午後に霞が関の官庁街で合同デモを行うと発表した。主催する「首都圏反原発連合」のミサオ・レッドウルフさんは「力を合わせ、はっきりと反原発の意思を可視化したい」と訴えた。数万人の参加を見込んでいるという。

 デモの前には日比谷公会堂で集会を開き、共催団体の一つ「さようなら原発1000万人アクション」の呼び掛け人で作家の大江健三郎さんらも参加する。(2013/10/07-19:01時事)
   引用先:「shuueiのメモ」http://d.hatena.ne.jp/shuuei/20131008/1381172548


野村キャスター「もちろん組織の問題はキチンとしなくてはならないのですが、そもそもこの高速増殖炉というのは発展途中の技術なんです。一般的な原発と違った特殊なむずかしさもあります。その為に世界では日本とは違った道を選択した国もあった。」
ドイツ西部の街カルカー。遊園地にあるのが空中ブランコやフライミングが楽しめるアトラクション。かつてここに建設されていた高速増殖炉の冷却塔です。
SNR300カルカー高速増殖炉です。1973年にエネルギーの安定供給を目指し12年かけて建設された。しかし一度も稼働することはなかったカルカー高速増殖炉完成の翌年に起こったチェルノブイリ原子力発電所の事故。操作ミスによって爆発事故を起こし広い地域が放射性物質で汚染された。ヨーロッパ各地では原発に反対する運動が盛んになる。カルカーでも高速増殖炉の運転が始まることへの市民の不安の声が高まった。

こうした中、州政府は大学や研究所など4つのグループに安全性の調査を依頼その結果、明らかになったのは安全にかかわる技術的な問題だった。州政府の労働厚生社会省の元大臣のフリートヘルム・ファートマンさんは当時高速増殖炉の建設や運転開始を許可するかどうかを決定する立場だったが、「稼働すればナトリウムを扱うことになる。もし事故が起きれば、どのような規模になるか予想できず相当危険になると思いました。」
ファートマンさんが懸念していた技術的な課題の1つが「ナトリウムの危険性」。
ナトリウムは常温では液体ではなく個体として存在している。
しかし空気中の水分とすぐに反応を始める。
水に直接触れるとさらに激しく反応、約30秒後炎を上げて激しく燃え始める。
高速増殖炉ではナトリウムが水分に触れないように配管の中に閉じ込められている。仮に配管からナトリウムが漏れ出すと火災となり、最悪の場合爆発する可能性がある。高速増殖炉は本当に安全なのかについて州政府は1つの方針を打ち出した。「安全についての議論の決着がつかない限り、運転の許可は出さない」とした。「私たちは結論を急ぎたくなかった。リスクの大きな高速増殖炉の責任を負いきれないと考えたのです。」
議論は10年以上にわたって続いたが結論が出ない。カルカー高速増殖炉では建設後の運営にかかる費用を主に民間の事業者が負担していた。州政府が運転費用を出さないことで維持費だけがふくらんでいった。そして、西ドイツ連邦政府研究開発技術省リーゼンフーバー大臣(当時):「私たちは、昨晩、高速増殖炉を許可することができるかどうかについて事業者と話をして結論に至った。この計画は中止します。」
安全の議論に結論が出るまでは運転しないと決めたドイツでは、その決断が高速増殖炉計画を中止に追い込むことになった。

日本でもんじゅが初めて臨界を達成したのは、ドイツの計画中止から3年後の平成6年
その1年8か月後、重大な事故が起こる配管からナトリウムが漏れ出し火災が発生。幸いなことに爆発には至らなかった。
事故の対策が取られ運転が再開されたのは15年後。しかし直後に別のトラブルが相次ぐ。平成22年、炉内の中継装置の落下事故。結局もんじゅはナトリウム漏れ事故の後ほとんど稼動していない。
<”もんじゅは継続” 示された方針>
今年2月、原子力規制委員会福島第1原発事故を受け、もんじゅについて特別新たな規制基準を作成することを決めたところが、もんじゅを所管する文科省が研究を継続する方針を打ち出したのは今年8月。規制委員会がもんじゅ向けの新たな基準を検討しているさなかのことだった。
<新たな研究を追加=継続のための新たな理由(大義名分)>(by蛙)
核燃料を増殖させるだけでなく、各地の原発から出る使用済み核燃料の放射能の毒性を減らすための新たな研究が必要だとした
「加えて、高レベル放射性廃棄物の大幅な有害期間の短縮や毒性の低減化に資する分離変換技術に係る研究開発を今後着実に推進する。」
日本原子力開発機構はその研究が出来るのは国際的に見てももんじゅを置いて他にないとしている。開発機構の広井理事「アメリカにしろフランスにしろ自国にそういうものがない状態なので日本が炉を持っていることは彼らにとっても大きな意味がある」。
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野村「ここからは多摩大学大学院教授の田坂広志さんとお伝えします。田坂さんは原子力工学が専門で国内外の原子力政策にも精通していらっしゃる。」「ドイツでは安全の議論の中で研究が中止になった。日本は今のところ文科省は継続の方針を出している。この差をどう見ますか?」
田坂「そもそも原子力科学は3つのことを確認して進めるべきです。
1つは必要性、2番目は安全性、3番目は経済性。その意味で、まず必要性については確かにこういう研究が必要だということは分る。ただ、特に安全性の部分、福島の事故の後、本当にこの組織が安全に研究を進められるのかについては、まだ始まったばかりで順序が少し逆ではないのか。必要性があるからやりましょう、安全性については、まあ、今から頑張りますでは、国民から首を傾げられる部分があるかも。」
野村「3つ目の経済性について。日本の場合は税金を投入しているので、よりチェックをキチンとしてほしいと思いますね」
田坂「ご存知の通り、1兆円つぎ込んで成果が出ない。私はアメリカの国立研究所に勤めていたんですが、研究はすべて民間から委託されるんですね。一定期間ごとに成果が出たのか、どれくらいコストがかかったのか、しっかりチェックされる構造になっている。従って非常に緊張感のある会議が進むわけです。日本のやり方だと国民の税金を投入、足りなくなったら又投入。残念ながら甘い開発になる可能性がある。制度的にもシッカリした改革がなされるべきです。」
野村一方で、ゴミの問題、核の処分場が問題になっていますので大事なんですが、そのためにももんじゅのこの研究が大事なんだという声がありますが、これはどう考えますか?
田坂「一般論として将来ゴミを減らす技術を開発することは誰も賛同できることだが、ただ、大切なことは、一般論としてそういう技術の開発は必要であっても、それが、もんじゅである必要があるのかについてはもっと丁寧な説明をしないと国民からすれば、もんじゅを進めるためにそういう大義名分を掲げたのではないかと思われてしまう可能性がある。ここは丁寧な説明が必要。もう一つはこの消滅処理という技術は、私も専門家の一人ですが、40年前から研究してきています。」

<消滅処理技術>野村「消滅処理というのは、放射能が出る期間を短くすることですね。」
田坂「ええ。その「消滅処理」研究は40年前からやっているのですが、実は非常に原理的に難しい問題がある。それが故に40年間進んでいないわけです。それを今、新たに掲げて、あたかも問題がこれから解決するというような幻想は今振りまくべきではない。かなり難しい技術、かなりの年月をかけて取り組むべき技術、それを、これがあるから原子力は進められるという議論はすべきではないやはり放射性理論の問題は学術会議が提言しているように数年の長期を視野に入れて、未来の人に負担を残さない、そういう本来の政策論として議論しないといけない
野村「今、この技術があるから処分場はこれだけで済むんだとか、先送りしてもいいんだとか、そういうものではないということですか?」
田坂「これは色んな人が最終処分の方法を研究していますが、この消滅処理技術と言われるものは結構難しいと思いますので、むしろ処分場そのものの研究をしっかりやっていくべきだと思います。色んな意味で慎重な対応を求めます。」(終)