「フランシーヌの場合は」と台湾の学生運動


この記事は1969年3月30日、パリでフランシーヌ・ルコントという女性が焼身自殺した事件を報じる新聞記事です。引用先はネットで見つけたブログ「君はフランシーヌ・ルコントを知っているか」(http://banyuu.txt-nifty.com/21st/2004/11/post_14.html)より。
この事件は、はるか遠くの日本で作詞、作曲され、1960年安保反対のデモで樺美智子さんが亡くなった日にちなんで6月15日、新谷のり子さんが歌ってレコード発売されました。


1 フランシーヌの場合は
  あまりにもおばかさん
  フランシーヌの場合は
  あまりにもさびしい
(*)三月三十日の日曜日
   パリの朝に燃えたいのちひとつ
   フランシーヌ

2 ホントのことを言ったら
  オリコウになれない
  ホントのことを言ったら
  あまりにも悲しい
  (* 繰り返す)

3 ひとりぼっちの世界に
  残された言葉が
  ひとりぼっちの世界に
  いつまでもささやく
  (* 繰り返す)

◎私はこのフランシーヌさんが焼身自殺したその日、京都で結婚式を挙げました。その年のその日を詩にしたフォークソングが歌われ出して、あれ〜と思いました。
日本では学生運動は死んだ?と言われていた頃、ベトナム反戦の意思を衝撃的な形で表した女性がパリに・・・という出来事でした。でも私自身は結婚、場所も仕事も変えて、沼津での共働きをスタートさせたばかり、世界や社会の動きには疎くなっていました。

今日3月31日、フランシーヌの場合を思い出して、今、台湾で闘っている学生たちのことを思い出しました。事の起こりは、台中間のサービス分野の市場開放を目指す「サービス貿易協定」の批准に向けた審議中の委員会で、与党・中国国民党の立法委員(議員)が時間切れを理由に一方的に審議を打ち切ったため反発が広がりました。そして3月18日午後9時過ぎになって、300名を超える学生のデモ参加者が立法院議場内に進入、占拠に至りました。
台湾での学生運動のその後は日本のメディアではあまり伝えられていませんが、「内田樹の研究室」では、貴重な現地報告が掲載されています。台湾議会での乱闘騒ぎがよくニュースで紹介されて、”台湾もまだまだ”なんて思っていた自分が恥ずかしい位です。学生たちの民主化を求める闘いがこんなにも整然としかも市民の支持を得て行われているという感動的な報告に驚いています。
最終報告から一部をコピーしてみます:

台湾情報第4信(最終報)佐藤学



昨日、6日間の台湾への滞在を終えて、台北から東京に帰ってきました。立法院を学生が占拠してから10日目でした。学生による「パリコミューン」の状態が10日間、続いているわけです。これほどの歴史的事件に遭遇し、数々の感銘を受けるとともに、アジアの将来について深く考えさせられました。


現在、馬英九総統の国家権力と学生たちの関係は拮抗状態にあり、膠着状態に入っています。この闘いは、その当初から沈着で冷静で静かな闘いとして展開していました。11日前に立法院の委員会でわずか30秒の国民党内の議員の内輪話で法案が成立し、それに抗議するデモ隊の学生(台湾大学と精華大学の学生)が立法院(国会)の窓が一枚あいているのを発見して、そこから約100人の学生が乱入して立法院を占拠したのが始まりです。この学生たちは機動隊を40名に限って立法院に入れることを認め、機動隊も敵対関係ではなく協調的な関係で、立法院の占拠が続きました。

<中略>



しかし、この謀略も馬英九の愚作と学生たちの賢明な行動によって、完全に破たんしました。あまりにも残虐な機動隊による流血事件は市民の怒りを呼び起こしました。(実は、台湾では数か月前に軍隊が若者を虐待死した事件があり、その時のデモは25万人に達していました。この怒りの延長線上に、今回の事件があります。)
  

馬英九は、もはや機動隊や軍隊によって学生たちを立法院から追い出すことは不可能です。前回の通信でお知らせしたように、世論調査では83%の市民が、馬英九は学生の対話要求に応じるべきだと主張していますし、約70%の市民が学生運動の支持を表明しています。この事態が膠着状態を生み出しています。


 テレビや新聞の報道はエキセントリックに声を張り上げ、しかも虚偽の情報を発信し、事実を歪めて報道しています。それに対して、学生たちや市民たちの対話は柔らかく、思慮深く、知性的です。この対比こそ私が最も印象づけられたことです。
 <後略>

◎全文はコチラ「内田樹の研究室」の
・「佐藤学先生の台湾速報(その4・最終報)」(http://blog.tatsuru.com/2014/03/29_0926.php
・「佐藤学先生の台湾情報第三報」(http://blog.tatsuru.com/2014/03/27_0848.php

(写真、上二枚はクレイフラワーというアートフラワー。一番下は小原流の生け花です。どれも30日、川西池田の阪急デパートで)