ニューヨークタイムズとワシントンポスト(安倍首相の「昭和殉難者(戦犯)」追悼メッセージ)

◎8月27日の時事通信をコピーしましたが、朝日新聞のスクープ記事でした。


時事通信 8月27日(水)17時2分配信 (http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140827-00000091-jij-pol)


 極東国際軍事裁判東京裁判)でA級戦犯として裁かれた元日本軍人らを「昭和殉難者」として追悼するため今年4月に和歌山県で行われた法要に、安倍晋三首相が哀悼の意を示すメッセージを送っていたことが27日、分かった。メッセージ文には、自民党総裁の肩書で「魂を賭して祖国の礎となられた」などと記されていた。  


 法要は4月29日、和歌山県高野町高野山奥の院にある「昭和殉難者法務死追悼碑」で行われた。遺族や陸軍士官学校出身者ら約220人が参列。追悼碑は、戦犯の名誉回復と慰霊を目的に1994年に建立され、A、B、C級戦犯として処刑されたり、病死、自殺したりした元軍人らの名が刻まれている。


 首相は「今日の日本の平和と繁栄のため、自らの魂を賭して祖国の礎となられた昭和殉難者のみ霊に謹んで哀悼の誠をささげます」などとしたメッセージを送った。主催者によると、首相は昨年の法要にも党総裁名で同様のメッセージを寄せた。


 菅義偉官房長官は27日の記者会見で、首相の対応について「私人としての行為であり、政府としてのコメントは差し控えたい」と述べた上で、「A級戦犯は、極東国際軍事裁判所で有罪判決を受けた。わが国はサンフランシスコ平和条約で裁判を受諾している」と語った。 


◎4月29日の法要が、丁度4カ月ほど経った8月末に記事になり、官房長官がコメント。でも、党総裁の肩書のある署名入り文書を「私人としての行為」とするのは無理。ニューヨークタイムズの記事によると、中国外務省は戦犯追悼式典に追悼文を贈った安倍首相を批判する公式声明を公表したとのこと
また「日本がアブナイ!」さんによりますと、安倍首相は昨年と2004年の年次法要にも主催者側の依頼に応じ、自民党総裁、幹事長の役職名で書面を送付。昨年は「私たちにはご英霊を奉り、祖国の礎となられたお気持ちに想いを致す義務がある」「ご英霊に恥じることの無い、新しい日本の在り方を定めて参りたい」と伝えていた。 守る会などによると、安倍首相には地元国会議員の事務所を通じてメッセージを依頼した。首相経験者では森喜朗氏が首相退任後に一衆院議員の肩書で送付してきたが、ほかに例がない。今年は岸田文雄外相にも依頼したが、承諾を得られなかった」そうです。何が何でも自説を曲げない困った安倍さんです。一個人、私人なら自説にこだわろうが自由ですが、一国の首相で、国の歴史とあり方に関わる、また国益に関わる重大な問題です。
星の金貨プロジェクト」さんでは、この件についてアメリカの二つの記事を伝えています。

◎【 日本の首相、戦争犯罪人に『哀悼の意を捧げる』 】(投稿日: 2014年9月3日 作成者: admin)
http://kobajun.chips.jp/?p=19719
新聞記事の日本語訳の一部と引用の後の「星の金貨プロジェクト」さんのご意見をコピーです:


日本の首相、戦争犯罪人に『哀悼の意を捧げる』
マーティン・ファクラーニューヨークタイムズ 8月27日


日本の歴代首相の中で最も保守的な一人である安倍晋三首相が今年初め、戦争犯罪人として有罪が確定した後処刑され死亡した1,000人以上のA級、BC級戦犯として処刑された旧日本軍人の追悼法要に「自民党総裁」名で追悼文を送っていたことを、8月27日日本政府のスポークスマンが確認しました。
この事実は周辺諸国、とくに第二次世界大戦中、日本軍の戦争犯罪の最大の被害者であった中国との外交関係を一層悪化させる可能性があります。


日本を代表する新聞のひとつである朝日新聞がこの事実を最初に報道しましたが、記事によれば安倍首相は処刑された戦犯を「昭和殉難者」として追悼する式典に、「自らの魂を賭して祖国の礎となられた昭和殉難者の御霊(みたま)に謹んで哀悼の誠を捧(ささ)げる」
との追悼文を寄せました。


菅義偉官房長官はこの報道が事実であることを認めましたが、安倍首相は日本国首相としてではなく一民間人の立場でこの追悼文を寄せたものだと語りました。
しかしこの追悼文に架かれた署名は、日本で政権をとる自由民主党総裁というものでした。
法要は今年4月29日、和歌山県高野町高野山真言宗奥の院」で行われ、処刑された戦犯を「昭和殉難者」として追悼し、記事によれば安倍首相の追悼文は参列者の前で読み上げられました。
安倍首相は法要そのものには参加していません。



この法要は毎年開催されていますが、日本国内ではあまり知られていません。
第二次世界大戦終了後、連合軍によって行われた軍事裁判において処刑あるいは獄死した1,180人を追悼するものです。

この軍事裁判所は戦後アジア各地で開設され、日本軍が戦争中に行なった虐殺、強姦、連合軍捕虜の虐待や殺害などの罪を問い、日本軍将兵や軍関係者に有罪判決を下しました。

この法要を共催した旧陸軍関係者や自衛官OBで作る「近畿偕行会」は、日本の右派の多くがそうであるように、連合軍による軍事裁判は勝者の正義以外の何物でもないとし、判決は不当なものであるとの見解を有しています。
法要は処刑された戦犯を「昭和殉難者」としてその名前を刻んだ記念碑の前で開催されました。
昭和は前代の昭和天皇の在位期間を表しています。


24日水曜日、菅官房長官は日本は1952年のサンフランシスコ平和条約の調印の場で裁判を受諾しており、安倍首相の追悼文寄稿は日本政府とは無関係であるとの立場を強調しました。


今回の追悼文の言い回しには慎重な配慮がなされていますが、安倍首相はかつて第二次世界大戦における日本が侵略者であるとする見解に、公然と疑問を呈しました。

昨年開催された議会の予算委員会の席上、安倍首相は太平洋戦争(第二次世界大戦太平洋戦線)においては、勝者となった連合国側の見解が押しつけられたため、日本だけが一方的に戦争犯罪の罪を問われることになったと語りました。

こうした発言は日本の戦時帝国建設の最大の犠牲者となった中国の格好の標的となり、安倍首相が軍国主義者の再来であることを何より証拠立てるものだとの批判を招く結果なりました。
<後略>


http://www.nytimes.com/2014/08/28/world/asia/japan-says-premier-supported-ceremony-honoring-war-criminals.html
 + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +


私個人は太平洋戦争を行っていた日本について、海外での侵略行為もさることながら、国内において長く恐怖政治を行い、国民を苦しめつづけたという点において許せないと考えています。
考えてもみてください、「戦争反対!」と公言しただけで、体制に迎合する連中から『非国民』『売国奴』などと罵られた挙げ句、特高警察という秘密警察に連行され、拷問され、悪くすればそのまま殺される時代を。
一部の人間が企図した『遅れてきた帝国主義=侵略政策』に国民が服従することを強制された時代、それが世界的な『普遍性のある』解釈です。/span>
安倍首相の中では国民を圧殺した罪を問われた者が「昭和殉難者」であるようですが、戦争反対や平和主義を訴えて投獄された人間は何なのでしょう?


太平洋戦争当時、成年男子は『大義なき戦争』に駆り出され、勝利の可能性が消滅した末期には玉砕や特攻などの理不尽な死を強制されました。
残された女性や子どもたちの多くが空襲による焼死、爆死、そして満足に食べるものも無いための餓死に見舞われました。

そんな日本を『取り戻す』事など許したら、私たち国民は再び不幸、理不尽、絶望の縁に追い込まれてしまいます。

◎【 歴史と真摯に向かい合う事が出来なくなった日本 】(投稿日: 2014年9月4日 作成者: admin) http://kobajun.chips.jp/?p=19735

歴史と真摯に向かい合う事が出来なくなった日本
ワシントン・ポスト 8月28日



<前略>

今年4月に高野山で行われた法要の席上、安倍首相が送った追悼文は参列者の面前で朗読されたと、主催者の事務方を務める中辻みどり氏がAP通信の取材に答えました。
中辻氏は安倍首相からは昨年も同趣旨の追悼文を受け取ったと語っています。
この法要は戦時中日本の首相を務め、極東軍事裁判によって死刑を宣告された東条英機を始めとする14人のA級戦犯を含む、1,180名の戦犯の名が刻まれた石碑の前で営まれました。

A級戦犯極東軍事裁判において平和と人類に対する罪を問われ、有罪判決を受けました。
この裁判結果を日本が受諾することについては、サンフランシスコ平和条約の中で条文化されており、菅官房長官は日本政府がこの条約に調印したことにより国際社会に復帰したという認識を示しました。


しかし安倍首相は極東軍事裁判において戦争犯罪者とされた人々は、日本の国内法における戦争犯罪者には該当しないと明言しています。

http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/china-calls-on-japan-to-break-with-militarism/2014/08/28/546ffdbe-2e70-11e4-be9e-60cc44c01e7f_story.html


 + – + – + – + – + – + –



・・・・・・これらの事実に関する参考文献を読んでいると、日本の政治の暗部にまさに暗然とさせられます。
昨日と今日、アメリカを代表するニューヨークタイムズワシントンポストの記事をご紹介しましたが、世界の普遍的認識と最近の日本国内の認識のずれの大きさを感じないわけにはいきません。

東京裁判の写真はブログからお借りしました。