12月8日と10日の「兄はスパイじゃない」と特定秘密保護法

NHKがおかしくなって久しいのですが、最近は徹底しているようです。天皇陛下や皇后美智子さまのお言葉でさえ戦争に関係する箇所はカットされます。先日は、菅原文太さんの死去を伝えるニュースでまた「戦争」に関する発言がカットされたとか。宝田明氏が番組で戦争や選挙について発言したら、あわててアナウンサーが言葉をとってしまったそうです。
◇「日テレとNHK菅原文太反戦脱原発発言を自主規制で封殺!?/2014年12月6日」http://news.livedoor.com/article/detail/9548380/
◇「宝田明NHK番組で突如衆院選の話題に触れアナウンサーが制止/
2014年12月7日 19時38分 」(http://news.livedoor.com/article/detail/9550329/
◎こんな中での政治であり、選挙です。自主規制や報道統制された新聞やテレビだけを情報源にしている人たちは、疑似北朝鮮状態にあるのと同じです。北朝鮮の民衆が自由のために立ち上がる可能性はあるのでしょうか。植民地で、そこに暮らしている人たちが独立を望む戦いが成功した例はあるのでしょうか、なんてことを考えてしまいます。
◎さて、73年前の12月8日は太平洋戦争が始まった真珠湾攻撃の日でした。そして明日の10日は特定秘密護法がいよいよ施行される日です。私は今年のNHKのドキュメンタリー番組「兄はスパイじゃない」の北大生宮澤弘幸さんを思い出します。蛙ブログの今年8月26日<「兄はスパイじゃない」(北大生『軍機法』冤罪事件)1〜3(http://d.hatena.ne.jp/cangael/20140826/1409015361)>から、事件の概要を:


73年前の昭和16年12月8日。その日の午前中に(宮澤さんが親しくしていたアメリカ人の)レーンさんはスパイ容疑で逮捕。宮澤さんもレーンさんに秘密を洩らしたとして逮捕された。東京の家族には逮捕されたこと以外詳しいことは一切伝えられなかった。

〇それより5カ月前の昭和16年3月軍機保護法改正。「軍事上ノヒミツヲ探知シ、又ハ収集シ外国人ニモラス等ノスパイ行為」を行った場合の最高刑が死刑とされた。

逮捕から1年半。無実を訴えていた宮澤さんとレーンさんがともに懲役15年の刑を言い渡された。レーンさんはまもなく捕虜交換船でアメリカへ帰国。

終戦後2か月後、GHQの通達により政治犯が釈放。宮澤さんも出所

○家族の必死の看病もあって回復の兆しが見えていた宮澤さん、何時か北海道で何があったか洗いざらい本に書くと家族に話していた。しかし、昭和22年2月22日、突然洗面器一杯の血を吐き、帰らぬ人となりました。27歳の若さでした。


事件から40年余り経った頃、一つの資料が見つかった。大審院(今の最高裁判所)の判決文に秋間さんの知りたかった宮澤さんの詳しい容疑が記録されていた。宮澤さんが漏らしたされる秘密とは「根室を旅行中に知った海軍飛行場の存在」であった。

○兄、宮澤弘幸さんのアルバムに手がかりとなる写真が残されていた。昭和16年樺太・千島方面を旅行した時の写真。
○判決文によると船旅を終えたその帰り宮澤さんは根室から汽車に乗ったことになっている。偶然乗り合わせていた乗客が話していたことを宮澤さんは覚えていた。「根室町には海軍の飛行場がある」。このことを帰ってからレーンさんに旅行談の一つとして話したことが”軍の秘密を洩らした”罪に問われていた。


昭和9年に発行された絵葉書、お土産用として売店で売られていたもの。線路わきに海軍飛行場が描かれている。根室に海軍飛行場があることは広く知られていたことが分かった。

○「軍機保護法」では軍事上の秘密は範囲が細かく定められておらず、「陸軍大臣、又ハ海軍大臣ハ軍事上ノ秘密保護ノ為必要アルトキハ命令ヲ以テ決メル」とあります。

〇そこで判決では、どんなに一般的に知られていることでも国が秘密であると言えば「秘密ニ属スル」と判断されていたのです。

〇事件の調査をしている郷路征記弁護士:「旅行している中で自然に知る。そのことが軍事機密を探知したとされた。法律の概念が拡張されて用いられたとっても悲惨な例だと思います。」


◎明日施行される特定秘密保護法についてWikipedia からコピーです。

「特定秘密の保護に関する法律」は、日本の安全保障に関する情報のうち「特に秘匿することが必要であるもの」を「特定秘密」として指定し、取扱者の適正評価の実施や漏洩した場合の罰則などを定めた法律である。通称は特定秘密保護法。秘密保護法、秘密法などとも。


2013年10月25日、第2次安倍内閣はこの法案を国家安全保障会議の了承を経たうえで閣議決定して第185回国会に提出し、同年12月6日に成立、同年12月13日に公布された。公布から1年以内に施行されることになっている(同法附則第1条)。平成26年12月10日施行。法施行5年後の見直し規定を盛り込んだ。

◎賛否両論書かれていますが、国際的に見たらどうなのかをWikiからとりだしてみますと:
ヒューマン・ライツ・ウォッチ特定秘密保護法案について「秘密指定の権限や情報漏洩の処罰が広範囲過ぎ」、「公益を守るため見直しが必須」と表明した。
日本外国特派員協会は「報道の自由及び民主主義の根本を脅かす悪法であり、撤回、または大幅修正を勧告する」と表明した。
◆(沖縄密約のアメリカ側当事者の)アメリカ国防次官補・モートン・ハルペリン共同通信のインタビューに応え、「知る権利と秘密保護のバランスを定めた国際基準を逸脱している」「過剰な秘密指定はかえって秘密の管理が困難になる」と法案を批判した。
国境なき記者団は、「世界報道の自由度ランキング 2014」で特定秘密保護法を理由に2013年の53位から59位にランクを下げた。
◎先日来取り上げている内田樹氏の講演から特定秘密保護法についてをコピーします。アメリカとの関係が複雑です。(引用元は11月26日の「内田樹の研究室」に掲載された「資本主義末期の国民国家のかたち」http://blog.tatsuru.com/2014/11/26_1711.php


例えば、特定秘密保護法です。特定秘密保護法というものは、要するに民主国家である日本が、国民に与えられている基本的な人権である言論の自由を制約しようとする法律です。国民にとっては何の利もない。なぜ、そのような反民主的な法律の制定を強行採決をしてまで急ぐのか。


 理由は「このような法律がなければアメリカの軍機が漏れて、日米の共同的な軍事作戦の支障になる」ということでした。アメリカの国益を守るためにであれば、日本国民の言論の自由などは抑圧しても構わない、と。安倍政権はそういう意思表示をしたわけです。そして、アメリカの軍機を守るために日本国民の基本的人権を制約しましたとアメリカに申し出たわけです。日本の国民全体の利益を損なうことを通じて、アメリカの軍機を守りたい、と。言われたアメリからしてみたら、「ああ、そうですか。そりゃ、どうも」という以外に言葉がないでしょう。たしかにそうおっしゃって頂けるのはまことにありがたいことではあるえれど、一体何で日本政府がそんなことを言ってくるのか、実はよくわからない。なぜ日本は国民の基本的人権の制約というような「犠牲」をアメリカのために捧げるのか


『街場の戦争論』(ミシマ社刊)にも書きましたけれども、そもそも国家機密というのは、政府のトップレベルから漏洩するから危険なわけです。ご存じのとおり、イギリスのキム・フィルビー事件というのがありました。MI6の対ソ連諜報部の部長だったキム・フィルビーが、ずっとソ連のスパイであって、イギリスとアメリカの対ソ連情報はすべてソ連に筒抜けだったという戦後最大のスパイ事件です。それ以来、諜報機関の中枢からの機密漏洩はどうすれば防げるかというのが、インテリジェンスについて考える場合の最大の課題なわけです。

その前にも、イギリスではプロヒューモ事件というものがありました。陸軍大臣が売春婦にいろいろと軍機を漏らしてしまった。でも、ピロートークで漏れる秘密と、諜報機関のトップから漏れる秘密では機密の質が違います。ですから、ほんとうに真剣に諜報問題、防諜の問題を考えるとすれば、どうやって国家の中枢に入り込んでしまった「モグラ」からの情報漏洩を防ぐかということが緊急の課題になるはずです
けれども、今回の特定秘密保護法は、世界が経験した史上最悪のスパイ事件については全く配慮していない。キム・フィルビー事件のようなかたちでの機密漏洩をどうやって防ぐかということに関しては誰も一秒も頭を使っていない。そういうことは「ない」ということを前提に法律が起案されている。つまり、今現に、日本で「キム・フィルビー型の諜報活動」を行っている人間については、「そのようなものは存在しない」とされているわけです。彼らは未来永劫にフリーハンドを保証されたことになる。いないものは探索しようもないですから。


  現に国家権力の中枢から国家機密が漏洩しているということは、日本ではもう既に日常的に行われていると僕は思っています。どこに流れているか。もちろんアメリカに流れている。政治家でも官僚でもジャーナリストでも、知る限りの機密をアメリカとの間に取り結んだそれぞれの「パイプ」に流し込んでいる。それがアメリカの国益を増大させるタイプの情報であれば、その見返りは彼らに個人的な報奨としてリターンされてくる。結果的に政府部内や業界内における彼らの地位は上昇する。そして、彼らがアメリカに流す機密はますます質の高いものになる。そういう「ウィン・ウィン」の仕組みがもう出来上がっている、僕はそう確信しています。特定秘密保護法は、「機密漏洩防止」ではなく、彼らの「機密漏洩」システムをより堅牢なものとするための法律です。アメリカの国益増大のために制定された法律なんですから、その法律がアメリカの国益増大のための機密漏洩を処罰できるはずがない。 特定秘密保護法アメリカが反対しなかったというのは、自国民の基本的人権を制約してまでアメリカの軍機を守るという法律制定の趣旨と、権力中枢からの情報漏洩については「そのようなものは存在しない」という前提に立つ法整備に好感を抱いたからです。これから先、日本政府の中枢からどのようなかたちで国家機密がアメリカに漏洩しようとも、いったん「特定秘密」に指定された情報については、それが何であるか、誰がそれをどう取り扱ったか、すべてが隠蔽されてしまう。どれほど秘密が漏洩しても、もう誰にもわからない。



もし、僕がアメリカの国務省の役人だったら、日本人は頭がおかしくなったのかと思ったはずです。たしかにアメリカにとってはありがたいお申し出であるが、何でこんなことをするのかがわからない。どう考えてみても日本の国益に全く資するところがない。そもそも防諜のための法律として機能しそうもない。そのようなザル法を制定する代償として、自国民の基本的人権を抑圧しようという。言論の自由を制約してまで、アメリカに対してサービスをする。たしかにアメリカ側としては断るロジックがありません。わが国益よりも民主主義の理想の方が大切だから、そんな法律は作るのを止めなさいというようなきれいごとはアメリカ政府が言えるはずがない。日本からの申し出を断るロジックはないけれど、それでも日本人が何を考えているかはわからない。いったい、特定秘密保護法で日本人の誰がどういう利益を得るのか?


 日本政府が日本の国益を損なうような法律を「アメリカのために」整備したのだとすれば、それは国益以外の「見返り」を求めてなされたということになる国益でないとすれば何か現政権の延命とか、政治家や官僚個人の自己利益の増大といったものを求めてなされたとみなすしかない。
現に、米国務省はそう判断していると思います。日本政府からの「サービス」はありがたく受け取るけれど、そのようにしてまでアメリカにおもねってくる政治家や官僚を「日本国益の代表者」として遇することはしない、と。

アメリカの利益は日本の利益と考える人たちが増えているのですね。友達というのは自立した個人と個人との間の友情で成り立つ関係だと思うのですが・・・日本の利益、国益って何だろうと考えることから始めないとだめなんでしょうね。