クリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」

◎雨の日、クリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」を見に行ってきました。
イラク戦争を描いたというこの映画は見たくないけど、見なければと思っていました。
朝一番の時間で、普通の映画より200円高IMAXというので見ました。私は、一度、マイケルジャクソンの映画をこれで見ましたので二度目、夫は初体験。それもあって、映像と音響が戦場そのもの。映画が終わった後、戦場体験したような気分でした。
時間いっぱい、全く緊張の連続。戦場の夫とアメリカにいる妻とが携帯電話で話が出来ていた!?というのには何とも異様な感じでした。こんなこと便利なのか不謹慎?なのか、ナントも、ただただ異様でした。
反戦映画と決めつけられないほど、戦争そのものを描いて突き付けているところがクリント・イーストウッド監督の狙いなんだと思います。
徹底的にアメリカ側から描かれているのかと言うと、そうではないところが凄い。時間は少ないながら、相手(敵)の暮らしぶりや抵抗、そして狙撃でオリンピックに出るほどの腕前のスナイパーもキチンと描かれています。それに、今は、敵の動きも味方の動きも機械によって把握され意識されます。その映画の視線が、一層、戦争そのものを考えることに繋がってきます。

アメリカは第二次大戦に続いて、朝鮮戦争ベトナム戦争と、休むことのない戦争国家です。今は冷戦体制も終わって、共産主義の脅威と言う『大義』もなく、自らが作り出した「敵」に向かって、相変わらずUSA以外の「敵地」で戦わなくてはならなくなっています。人を殺すにはそれなりの理由を求めるのが人間ですので、どんなに「大義」を作って言い聞かせても、非人間的行為の代償は負わなくてならなくなります。自衛隊がこんな軍隊になってはいけないな、と思います。これは、映画を観終わって、二人で黙っていた車の中で私が考えた事であって、夫が何を思ったかは・・・・わかりません。
◎戦闘シーンでも音楽が流れていて、これはドキュメンタリーでなくて映画なんだと思ったり…それくらいリアルな戦闘場面の連続ですが、恋愛、結婚、出産、子育てのファミリーヒストリーが同時進行します。この進行具合がまた素晴らしい。これもまた映画なんだと引き戻されます。
アカデミー賞では音響編集賞というのも納得です。すべてが終わった後の沈黙までが計算されています。

◎映画サイトの感想から:

恐るべき底力だ。戦場の兵士の無意識をこんな風にあぶり出す作法がまだ残されていたのか。プロパガンダから遠く離れた深い映画だ。

芝山 幹郎(評論家)


これは、ヒーローの映画なのか、悪魔の映画なのか?現実が用意したあの衝撃的な結末がなかったら、この映画は、一体どんな方向のエンディングで話をまとめ得たのだろうか?――あの大胆なエンドロールの演出は、その《問い》を我々観客にも突きつけてくる。 「いかなる誘導もしないから、後はお前が自分で考えろ」と。

下村 健一(元TBS報道キャスター)

ストーリー


☆★アカデミー賞 音響編集賞 受賞!★☆


舞台は9.11以降のイラク戦争。米海軍特殊部隊ネイビー・シールズに所属するクリス・カイルが命じられた任務は、「どんな過酷な状況でも仲間を守ること」。国の正義を信じ、実直に任務を遂行し続けた男はやがて仲間からは“レジェンド”と崇められ、方やイラク側からは“悪魔”と恐れられ、彼の首には賞金がかけられるほどの存在となる。愛する家族を国に残し、終わりのない戦争は幾度となく彼を戦場に向かわせるが、度重なる戦地への遠征は、クリスの心を徐々に蝕んでいくのであった・・・。

◎「カリフォルニア・加州ラジオ草紙」さんのMappleさんもアメリカで見ておられてブログを書いておられます。コチラ■映画「アメリカン・スナイパー」(クリント・イーストウッド監督)を見た。戦争経験で壊れていく人間の姿が描かれていた」:http://d.hatena.ne.jp/Mapple/20150206/p1
◎Mappleさんも記事の中で紹介されていますが、映画は実話で、クリス・カイルの最後については、「hatehei666の日記」(2013-02-19)の「或る優秀な狙撃手の死」で紹介されています。コチラです:http://d.hatena.ne.jp/hatehei666/20130219/1361271581
◎PS:<24日> ロイター記事:

テキサス州の裁判所は24日、米海軍特殊部隊「ネイビー・シールズ」の元狙撃手、クリス・カイルさんを射殺したとして、エディー・レイ・ルース被告(27)に仮釈放なしの終身刑を言い渡した。


過去に海兵隊に所属していたルース被告は2013年2月、射撃場でカイルさんとその友人を至近距離から射殺。犯行後はトラックに乗って現場を離れたという。

弁護人は、ルース被告が統合失調症を発症していたとして、無罪を主張していた。


カイルさんはスナイパーとしての自身の従軍体験を記した「ネイビー・シールズ最強の狙撃手」の著者。最も多くを射殺した米軍のスナイパーとされている。退役後は、心の傷を抱える退役軍人の支援活動に取り組み、一緒に射撃場を訪れるなどしていた。


著作に基づいた映画「アメリカン・スナイパー」が、22日に授賞式が行われた米アカデミー賞でも作品賞などにノミネートされていたこともあり、裁判は大きな注目を集めていた。

[スティーブンビル(米テキサス州)]