「流星ワゴン」・最低で最悪の現実から生き直す・・・


22日の日曜日、楽しみにしていたドラマが終わってしまいました。
「流星ワゴン」、西島秀俊(永田一雄)さんが冴えないサラリーマンをやっているので、あれ!と、そのうち、香川照之さんが演じる父親の忠さんの異様なテンションについていけない感じでしたが、途中から引き込まれて見続けることに。Sさんからは重松清さんの原作があることを知りました。10年ほど前にベストセラーになった小説だそうです。重松さんといえば、ドキュメンタリー番組の解説とかでお目にかかっている方ですが、本はまだ読んだことがありません。内容紹介のつもりで検索したら、アマゾンの「商品説明」が出てきました。


商品説明

主人公の永田一雄(西島秀俊)の前に、1台のワゴン車が止まったことからこの物語は始まる。ワゴン車には橋本義明(吉岡秀隆)・健太親子が乗っており、彼らはなぜか永田の抱えている問題をよく知っていた。
永田の家庭は崩壊寸前。妻の美代子(井川遥)はテレクラで男と不倫を重ね、息子の広樹は中学受験に失敗し家庭内暴力をふるう。永田自身も会社からリストラされ、小遣いほしさに、ガンで余命いくばくもない父親を訪ねていくようになっていた。「死にたい」と漠然と考えていたとき、永田は橋本親子に出会ったのだ。橋本は彼に、自分たちは死者だと告げると、「たいせつな場所」へ連れて行くといった。そして、まるでタイムマシーンのように、永田を過去へといざなう。

小説の設定は、冒頭から荒唐無稽である。幽霊がクルマを運転し、主人公たちと会話する。ワゴン車は過去と現在とを自由に往来できるし、死に際の父親が主人公と同年齢で登場し、ともに行動したりするのだ。


過去にさかのぼるたびに、永田は美代子や広樹がつまづいてしまったきっかけを知ることになる。何とかしなければと思いながらも、2人にうまく救いの手を差し伸べられない永田。小説の非現実的な設定と比べて、永田と家族のすれ違いと衝突の様子は、いたくシビアで生々しい。

永田は時空を越えて、苦しみながらも毅然と家族の問題解決に体当たりしていく。その結果はけっきょくのところ、家族が置かれた状況のささいな改善にとどまるだけでしかない。それでも死にたがっていた男は、その現実をしっかりと認識し生きていこうとする。「僕たちはここから始めるしかない」という言葉を胸に刻んで。(文月 達) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。



内容紹介

38歳、秋。ある日、僕と同い歳の父親(香川照之)に出逢った――。
僕らは、友達になれるだろうか?

死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして――自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか――「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。


◎幽霊だの、同い年となって表れる父親だの、仕掛けと約束事を理解するのに手間取りますが、それが分ると、内容は大まじめなシリアスドラマです。抜き差しならない切羽詰まった現実に直面している一雄ですが、こういう仕掛けを通して、妻の秘密が分ったり、謎がほぐれたり、相手の立場を理解したり、そういうつもりだったのか〜、そういう事だったのか〜という結果になります。 そして、最終回、死ぬしかないと思い詰めていた一雄は「最低、最悪の現実」に戻って、やり直す勇気を得て、死ぬ運命から生還します。
自分の父親との確執、父の所為で不幸だと思っていた母親がそうではないと分ったり。忠さんが、実年齢じゃなくて同い年の”朋輩”として現われるところが、このドラマ(原作?)の最大の仕掛けであり、鍵です。対等の朋輩と考えれば、親子の確執だって自分に引き寄せて理解できるわけです。朋輩の忠さんとケンカになったり、アチコチ首を突っ込んでお節介を遣らされたりしているうちに現実的な対処の仕方を学んでいく一雄。流星ワゴンが一雄親子の分かり合えなかった過去を取り戻させてくれます。

息子の広樹君がいじめにあっていて、家庭内暴力に至る筋立ては、10年前と今もそう変わらない現実なのでしょうか。最後は父親から逃げる勇気を与えられて、数人のいじめっ子達の前で宣言しますが、ドラマとわかっていても、”良かった〜”と思います。
死ぬしかないと思える現実でも、自分の中の『橋本さんが運転する流星ワゴン』に乗ってみれば、その最低で最悪の現実から、やり直せると思えるんだ、それしかないじゃないか・・・そんなドラマでした。みんなよく泣きましたね。涙は浄化装置ですね。涙が枯れるほど泣けばスッキリしてやり直そう!です。今の世の中も、最低、最悪のこの現実からしか・・・と思いました。
(写真の花は、団地の花壇に咲く花です。オキザリスの薄紫がかったピンクの珍しい花。薄紫のハナニラ。青い釣鐘の花が三角錐状に集まって咲く大株のムスカリ。そしてあちらこちらに沢山咲いている黄色のオキザリス。今でこそ「オキザリス」ですが、昔は「カタバミ」と呼んだ野草で小さな花でした。当時の花からするとオバケほど巨大化した花です。調べると、やはり「観賞用の輸入種」だそうです。)