「ピープルズニュース」の4月14日付の記事は、沖縄の知花さんという僧侶で読谷村の元村会議員さんへのインタビューです。
翁長県知事と菅官房長官の対談の様子から、辺野古の海の様子、海上保安庁の暴力的取り締まりとそれでもめげない抗議の様子、そして、「第5の琉球処分」だという沖縄の現状、辺野古基地は単なる普天間基地の移設ではなく「耐用年数200年の新基地」建設だとも、そしてここを米軍と共同使用して新たに「日本版海兵隊」まで日本政府は考えているという・・・・全文コピーです:
「『粛々』という言葉を何度も使う官房長官の姿が、米軍軍政下に『沖縄の自治は神話だ』と言った最高権力者キャラウェイ高等弁務官の姿と重なる。県民の怒りは増幅し、辺野古の新基地は絶対に建設することはできない」(翁長知事)。4月5日、沖縄県・翁長知事と菅官房長官が、那覇市内のホテルで辺野古基地建設について初会談を行った。翁長知事は、沖縄の民意を無視して辺野古新基地建設を暴力的に進める安倍政権を、真正面から批判した。
翁長知事を支えるのは、これまで住民投票や選挙で繰り返し示されてきた沖縄県民の民意であり、辺野古・高江・普天間での闘いだ。辺野古現地での闘いの現状について、知花昌一さん(元読谷村議)に緊急インタビューした。(編集部・一ノ瀬)
──翁長・菅会談の様子を教えてください。
知花…会談は朝8時半から始まりましたが、会場のホテルを、3千人の沖縄県民が取り囲みました。「辺野古への基地建設は許さない!」という信念を貫く翁長知事への激励と、沖縄への高圧的な態度をとり続ける安倍政権=日本政府への抗議のためです。
5日は、「清明祭」が始まる大切な日でした。シーミー祭は、親戚が一堂に集まって、墓前で祖先と共に食事を楽しむ、大切な伝統行事です。その日にこれほどの沖縄県民が集まったということは、沖縄の怒りの大きさの表れです。
沖縄県民の声、辺野古現地での闘いはもちろんのこと、本土でも安倍政権への無法ぶりに対する抗議の声は広がっています。3月には、岩倉市議会(愛知)・白馬村議会(長野)が、「中央と地方の対等をうたう地方自治を侵害しかねない」とする請願・陳情を採択しています。
これまで菅官房長官は、翁長知事との会談を頑なに拒否し続けてきました。それが今回の会談となったのは、政府が追い込まれている証拠です。
──海上の様子は?
知花…ボーリング調査が進められています。大浦湾にはフロートやブイを固定するために、15〜20㌧ものコンクリートブロックが沈められました。ブロックはサンゴの岩盤を破壊し、サンゴを傷つけているのが確認されました。
翁長知事は、沖縄防衛局に作業の一部停止を指示しました。しかし農水省は、「日米両国間の信頼関係への悪影響がある」として、指示の効力を停止しています。一体どこの政府なのかと疑います。
海上保安庁は、相変わらず抗議船やカヌー隊への暴力的排除を続けています。カヌーは毎日10〜20艇が出ています。抗議に使っているカヌーや軽トラなどは、全国の皆さんからのカンパによって新しく購入したものを使っています。
海保は、抗議するカヌーを棒で引き寄せて拘束します。罵声を浴びせ、首を絞め、後ろ手に締め上げる、といった暴行は日常茶飯事です。船ごと体当たりしてくることもあります。抗議船に対しても、問答無用で乗り込んできてエンジンのキーを抜いて停船させたり、船長の手や腕をねじ上げたり、と無法状態です。私たちの抗議に対して国・海保は「適切な対応だ」と言ってはばかりません。
それでもカヌー隊は、フロートをくぐり抜けるなど、創意工夫で闘っています。
日本版海兵隊の創設と沖縄
──辺野古の座り込みは?
知花…4月1日で4000日を迎えました。昨年7月7日に始まったキャンプ・シュワブゲート前での座り込みも、9カ月を越えました。
ゲート前の座り込みは、ボーリング調査が始まってからは24時間体制になり、ゲート前のテントでは30〜40名が寝泊まりして監視しています。海上ブイや工事資材は、監視の目の少ない真夜中に搬入されるからです。
日中は、「島ぐるみ会議」(沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議)が、那覇・沖縄市内からバスをチャーターして運行しています。毎日150〜200名が集まります。民意を無視する政府や沖縄防衛局へ抗議の声をあげていますが、県内外からの参加者のアピールや、唄・踊りもあって、参加者の志気は高く、元気いっぱいです。
抗議行動の中で、女性が警官に倒されてケガをしたり、現場のリーダーである山城博治さんが米軍によって基地内に引きずり込まれて不当逮捕されるなどの弾圧が続いています。座り込みテントを強制排除する、という話も出ています。
こんな暴力を後ろ盾に安倍政権はボーリング調査を進めていますが、私たちはまったく悲観していません。辺野古の座り込み・抗議行動は、「基地を押しつけるな」という沖縄民衆の自己決定権による抵抗であり、この意思や闘いをつぶすことはできない、という確信があるからです。
知花…私は、「第5の琉球処分」だと考えます。これまでの、①琉球王国廃止(薩摩支配〜沖縄県設置)、②沖縄戦、③サンフランシスコ講和条約(アメリカへの売り渡し)、④本土復帰(安保体制への組み込み)─という4度の琉球処分に続くものです。
かつて民主党・鳩山政権は、「普天間移設は最低でも県外」との公約を反故にして辺野古に回帰しました。
辺野古基地は、普天間の移設ではありません。軍港機能や弾薬庫を併せ持つ、耐用年数200年の新基地となります。これは、必ずや将来の沖縄に禍根を残します。
──日本の社会状況は?
知花…とても危うい状況です。集団的自衛権行使容認、日米同盟強化、憲法改悪…、「戦争できる国」への準備が着々と進められています。そうした動きが、沖縄に集中しているのです。
民主党・野田政権で防衛相だった森本敏は3月、NHKで「海兵隊が沖縄にいなければ抑止にならないというのは、軍事的に見ると間違い。有効に抑止力が発揮できる場所であれば、必ずしも沖縄でなくてもいい」と発言しました。米軍自身が海兵隊のグアム移転を進めているように、日本政府が「海兵隊の沖縄駐留継続」を要望しているに過ぎません。
日本政府は、2017年度までに陸上自衛隊を改編して「日本版海兵隊」(水陸機動団)創設を準備しています。この「日本版海兵隊」は、辺野古新基地を米軍と共同使用して、軍事同盟を一層進めるものです。日米同盟が強化されていく中で自衛隊の戦力が増強されます。基地が急ピッチで拡張されている岩国とセットで、沖縄はその中心的役割を担わされるでしょう。
沖縄だけではなく、日本全体の問題、そして民衆の課題としてどう取り組んでいくのか。これからが正念場です。