生野銀山と志村喬(1)

(11日の「雨の余部と湯村温泉」のつづき)

翌日、朝、雨が上がったようで、湯村温泉のホテルの喫茶ホールから見える山の紅葉が美しい。後で写真を撮ろうと思っていたら、また雨が降り出した。出発は雨の中。という事で2日目も予定変更で養父(やぶ)神社は寄らずに生野銀山へ直行。火曜日は気温が下がるというので、少し厚着をして出たので丁度良かった。世界遺産!に、なったのは生野ではなくて、石見銀山でした。
生野銀山兵庫県の真中あたり、朝来(あさご)市にあります。朝来市の「お宝観光マップ」によりますと、播但線の北側の竹田駅播但連絡道路和田山ICで降りると、最近話題の天空の城、竹田城跡があり、道の駅では、夫が豊岡へ仕事で出かけた帰りのお土産に必ず買っていた岩津ネギがもうすぐ解禁です。播但線の南の生野駅からは私たちの目的地の生野銀山があります。雨は少し小降りになって、街中の駐車場に車を止めて銀山跡へ。
貰って来たチラシの説明によりますと:


史跡 生野銀山


開坑807年と伝えられ1200年余の歴史を持つ生野銀山
織田・豊臣・徳川の直轄を経て、明治政府初の直轄鉱山となる。銀を中心に採掘され、歴代の政権の財政基盤を担った。明治元年仏人技師の市道で経営の近代化が始まる。明治22年に皇室財産に。
明治29年三菱合資会社に払い下げられ、昭和48年の閉山まで国内有数の大鉱山であった。

右の写真、銀塊(一つ30kg)のバックにあるポスターは明治初期の菊の御紋入り正門。(志村喬記念館の管理棟のコーナーに)
代官所門の手前で入場券を買って門をくぐって中へ。
チケットには、帰ってから読んでみたら
[アンダーグラウンドのロマンあふれる世界を体験してください。あなたの知的好奇心はきっと満足するはずです.]
と書かれていました。
一寸納得しました。結構みんなで頭の体操よろしく知識と想像力を総動員して江戸時代の抗夫の働き方や地球の歴史?にまで話が及びました。
実は、手元のチケットのデザインや印刷されていた言葉に目を遣るどころではなく、

二筋の美しい滝と、アーチ型の入り口と、
朱塗りの太鼓橋のある出口の景色に
スッカリ心を奪われてしまっていました。
入口のアーチがフランス式の石組で作られています。
ここから1000mの観光坑道になります。
まず江戸時代のしゃがんで掘り、はいつくばって進んだだろうという狸彫りの穴。
手彫りの鑿跡が見えます。

銀鉱は石英の筋に沿って並んでいるので、白っぽい縦筋沿いにきらきら光るのが銀らしい。鉱脈を追ってどこまでも狸穴が伸びていて人間の飽くなき営みの痕跡にやはり心打たれます。こんな厳しい労働は一体どういった人たちが…と云うと、義弟のお嫁さんのM子さんが、「佐渡の金山は罪人がやらされていたけど…」と。
私たちが立って歩いている坑道跡は明治に入ってからのもの。大きな材木で5角形に組んで支えてあるところと、馬蹄形の鉄材で支えたところがありました。どの岩からも水がしたたり落ちて、昔から水との闘いが大変だった様子が解ります。奥に行くほど近代化され、ダイナマイトで爆破した岩石をトロッコで運んで砕いて製錬した様子が分かるようになっています。一番深いところで880m、坑道の総延長は350kmとか。突き当りの広い場所には石川島播磨製の巨大な巻き上げ機がありエレベーターで鉱員を上げ下ろしした様子が分かるようになっていました。



「近代化するにつれて、道具も機械化され、掘り進んで、結局全部掘り終えて、閉山ということになったのね。人間て地球資源を使い切っていくよね〜」「地球の一番の加害者は人間だものね〜」と話していると、お義姉さんが、「原発かて、アカン云うてんのに止めへんし、カナンなぁ〜」と。
終わり近くになって人形の中に女性の姿も見えてビックリしました。男が鉱石を掘って、女がザルの様なもので砕けた岩の片づけをしている様子です。「女も働いていたのね〜!」とみんなびっくりでした。
坑道の外に出て赤い欄干の太鼓橋を渡って外に。二筋の滝が綺麗です。


鉱山資料館に入ると坑道の様子の大きな模型があって、解りやすい。解説の中に、坑夫について書いてありました。鉱山の許可をもらった人と働いている人が山分けしたとあり、奴隷労働じゃないんだと分りました。出身地が台帳に書かれていて、「加賀の国の住人」をM子さんが見つけました。すると、越中、越前までありました。後は備前、備中、伯耆、美作と中国地方がやはり大勢だったようです。きっと実入りも良くて、出稼ぎでここまで来ていた人がいたのですね。皆で、見ごたえがあったね〜と大満足。置いてあったパンフレットの中に一寸異質なものが・・・志村喬とあり、志村喬記念館と書いてあります。へぇ〜志村喬ってここの出なの〜という感じでした。ここのレストハウスで昼食を摂って、駐車場へ。
小さな駐車場の正面、民家の塀越しに、桜と楓の紅葉に
白い山茶花が咲いていてとても美しく見えます。
昨日は山の紅葉が美しかったのですが、あいにく雨で写真が写せず、
代わりにここで紅葉の写真を。
(2)につづく