「戦場ぬ止み」(2)<標的の島ー2「エアーシーバトル構想」>


◎順番を間違ったかも、こちらを先に読んでから伊波洋一氏の記事を読んだ方がよかったかもしれません。
「標的の村」は三上監督の前作で、沖縄の高江という村のドキュメンタリーでしたが、今回は「標的の島」です。
それを説明するコーナーが三上智恵さんの方の記事の左コーナーにあります。
これを先に読まないと・・・ということで、(1)の先頭にも張り付けました。

「標的の島」をつくり制限戦争へ



 宮古島市の市議会議員らが作図した自衛隊設備の配置図を元に、私も現場へ赴いた。主な建設場所は牧場のほか、手つかずの自然が残る島の東海岸一帯、と、島中央部の借金を抱えたゴルフ場である。防衛費を当て込んだ利権も動き始めているが、この配備計画で島の運命と日本の未来がどう変わるのか、土地代や振興策と天秤にかけるべきものなのか、考えてほしい。

 日本の対中国戦略の中でとんでもない位置付けにされた同市では、危機感を持つ島人はいても、重要な情報を多数が共有出来ているとはいいがたい現状がある。潤沢な資金とともに配備推進派は「自衛隊がいた方が安心」「南西諸島の防衛を強化すれば中国が攻めてこない」などと宣伝するが、実態は「有事の被害が拡大しないよう海に囲まれた島にあえてミサイルを配備して『標的の島』を作り、制限戦争に持ち込む」というものだそれではまるで、玉砕ありきで沖縄守備軍を貼り付け、補給もせず、住民の命をも防波堤にしようと企てた沖縄戦と同じ発想ではないか。
 南西諸島への自衛隊大増強は、「日中軍事衝突を誘発して制限戦争に持ち込む」という米国の安全弁の役割の始動であり、列島を補給基地にしながら拡大すれば日本全体を戦場にする発想である。

それでは、ドキュメンタリー映画「戦場ぬ止み」の監督三上智恵さんの記事です。

標的の島

"玉砕ありき”で国土を
差し出す日本政府
米国・エアーシーバトル構想が煽る中国「脅威」

南西諸島に駐留してきた米軍がみすみす沖縄を戦場にする。まさかと思う人も多いだろう。米国が戦場と想定しているのは沖縄だけではない。描かれる対中戦略は、日本全体を「バトルゾーン」とみなしている。こんな絵空事も飛び交うなか防衛配備が進んでいる。  三上 智恵


 私は焦っている。沖縄の放送局で20年必死に報道しドキュメンタリーを量産したが、状況に追いつかない。新型輸送機オスプレイ(V22)配備の欺瞞を世に問う「標的の村」を2013年に映画化したのも、退社して「戦場(いくさば)ぬ止(とぅどう)み」をこの(2015年)夏公開し、辺野古(名護市)での新基地建設に抵抗する県民の70年の苦しみを描いたのも、沖縄が日本や米国の軍事的道具として再び戦渦に巻き込まれるのではないかという危機感からだ。しかし状況は悪化の一途を辿っている。辺野古は弾薬庫と軍港を備えた日米の出撃基地になるので造らせるわけにはいかない。とはいえ、辺野古を止めても先島(宮古八重山)諸島に自衛隊ミサイル部隊を配備されれば県土の「戦場化」は免れない集団的自衛権の行使を真っ先に発動する部隊は、とりわけ宮古島になる可能性が高い。
 今年(2015年)5月に突然発表された先島へのミサイル配備計画。宮古島には地対艦、地対空ミサイルと800人規模の部隊、それだけでなく実弾射撃訓練場、水陸戦車の着上陸訓練場、弾薬庫、その上、先島から奄美諸島まで網羅するミサイル防衛の司令部を、なんと宮古島の地下に造るという
 防衛省は来年、衛星誘導爆弾のJDAMや、空中から地上を狙うミサイルAGM158などを搭載可能なF35戦闘機を導入する。なぜ専守防衛の日本にこうした武器が必要なのか。6月1日の国会で中谷元(なかたに・げん)防衛大臣は、外国に撃ち込むのではなく国土が占拠された場合を想定、といった答弁をした。
 敵軍が上陸する可能性がもっとも高いとされているのは南西諸島だ。すると、宮古島にミサイル基地を置く⇒敵に攻撃される⇒上陸される⇒奪還するために自衛隊が地上を空爆する、との図式が成り立つ。なるほど司令部は地下に置くしかない。だがその時、住民はどうやって「守られる」のか?


実際に衝突した場合、米軍は、まず退く


 ここ数年、自衛隊と米軍は盛んに離島奪還訓練を強化している。陸上自衛隊の広報ビデオを見ると、勇ましい自衛隊員が尖閣に見せかけた仮想の島を奪還する訓練が戦争映画のように映し出される。本土の人には頼もしく、格好良く見えるのだろうか。戦場にされる「沖縄」はたまったもんじゃない。
 しかも現地を守るるのは自衛隊であり、米軍ではないそうだ中国からの攻撃事態に際し米軍は一度ハワイあたりまで退く。初期攻撃は同盟国軍(日本・韓国・フィリピン)が当たることになっている。
 それは、沖縄の米軍基地の用途が変わりつつあることからも見て取れる。かつて基地は米兵が訓練し出撃する場所だったのが、今は、この島々が戦場になる前提の訓練や配置をするようになった沖縄は近代化した中国軍のミサイルの射程圏内に入ってしまったので、海兵隊は主な機能をグアム、ハワイまで後退させ、対中国での島嶼の守りは新設される日本版の海兵隊水陸機動団に任せるべく、その訓練・育成に当たっている。


2週間の戦闘で沖縄壊滅
日本全土がバトルゾーン 


 米国のシンクタンク「戦略・予算評価センター(CSBA)」が10年に発表したエアシーバトル構想は、増大する中国「脅威」を念頭に五つの領域(空、陸、海、宇宙、サイバー空間)で優位に立つ統合作戦だ。ここで自衛隊は米軍と共に第一列島線」(日本から台湾・フィリピンに至る概念上の海域)から中国軍を出さずにコントロールするパートナーと位置付けられる。戦闘の舞台は日本列島を含む周辺海域、日本全体が「防波堤」だ。
 米国としては、中国とは経済的発展を支え合う関係性にあり、万が一、軍事衝突が勃発しても核兵器を含む全面戦争は回避したい。その手前で止めるための「中間的戦略」という概念があり、「オフショア・コントロール構想」や「海上制限戦争戦略」等のプランが出ている
 中国が軍事的に動いたとしても、第一列島線の内側で潜水艦攻撃や機雷敷設を通じ中国の海上交通を遮断、その領域の外側の空域及び海域を支配する。「暴走する敵軍」を抑え込むため、敢えて小さな「海上制限戦争」に持ち込み、体勢を立て直した米軍や国連軍で囲む戦略だ。ただし衝突が起きた場合、沖縄は2週間ほどで壊滅、その後は日本列島が戦場になる。

 注意すべきは、この制限戦争の始まり方だ。 中国が日本に宣戦布告も何もしていない段階で宮古島からミサイルを撃つ公算は高い。例えば中国の軍艦が台湾有事で動いた時、米国が「ならず者国家が危険な動きをした。危機が迫っている。宮古島からミサイルを撃て」と言えば、集団的自衛権の行使で自衛隊が撃つという始まりを迎えてしまう。相手にとっては日米両軍からの宣戦布告であり、日本を攻撃さする充分な理由になる。
 米軍は、同盟国(日本)に自国から先手でミサイルを撃たせることが可能かどうか、それがこの構想の肝だと心配していたようだが、日本は急いで集団的自衛権を確立させ、米国を安心させたわけだ。
 日本を「防波堤」にし、米国から遠く離れた局地的な紛争に押さえ込み、国際協力で早期に火消しを図る。米国にとっては悪くないアイディアだろう。しかし安保条約を維持するために日本がこの構想に協力するということは、国土を戦場に差し出すのと同じだ。
(みかみ ちえ・ジャーナリスト、映画監督)  週刊金曜日 2015.10.30 (1061号)


◎「標的の島」…島は沖縄であり、宮古島であり、最後は日本列島であるかも・・・。
那覇市新都心のかなり高いビルの中に次男の勤めている会社があります。仕事中でもオスプレイが通るとあの音だけは気持ち悪い。何と言っていいのか身がすくむような…あの音を聞くと本当に、中国が攻めてきて戦争になるのかな〜と思うと言ったことがありました。オスプレイがあんな市街地の真中を通るの? ビルの中に居ても聞こえるの?と二人でビックリして訊いたことがありました。今回、三上監督の映画の中でオスプレイの重低音のブル〜ン、ブル〜ンという音を聞いて、息子が言ってたのはこの音か…と思った場面がありました。ニュースで紹介されるオスプレイとは違った音でした。

沖縄が今、新しい戦略の中で日々戦争準備の中にあるという事は本土に居てはなかなか理解が及びません。そこまで心配することないだろう、実際戦争にはならないだろう、と思いながら、それなら、あれだけ住民が反対している工事や、自衛隊の配備を止めればいいことですが、それはしない。宮古島では、市長を取り込んで推進派と反対派を分断し住民の意思を無視して推進しています。そんなとき、じゃ、実際、戦争になったら、どうなるのかと、現地の人たちが考えを巡らせるのは当然だと思い直します。

本土からは切り離された沖縄の現実、ほとんど情報が伝えられない原発事故後の福島の今・・・・メディアが現実を伝える力が無い今、なかなか国民全体の問題にはならない。こういう問題こそ、いろんな立場での報道が必要なのに・・・と思います。
昨日は、ヨーガの後のランチで、リーフレットのこのコピーを取り出して、少し沖縄の話をしました。アメリカや政府の意図は流れを見ていれば分ると言う方や、中国の出方は判らないし、北朝鮮は恐い。アメリカは敵に回したらダメ。結局、誰も破局・戦争は望んでいないんだから、話し合い、政治、外交で解決してほしいという話になり、政治が大事ということに。流れは判ると言った方が、こういう話は考えたくない、楽しくないからとも。確かにね…(それで済ませる?と内心ムッ)。
そして、昔の自民党はまだよかった。今はダメ。交代できる野党がない、人がいない…と云う話になってしまいました。お孫さんが18歳で、今度初めての選挙なので、学校でも話し合いがあるようで、一生懸命考えているよと、これは嬉しいお話でした。(下三枚の写真はジュゴンリーフレットから)