「経産省が、廃炉・賠償費用を国民に押し付ける 」のは、これまでの「原発事業者負担の原則」に反する。

◎「福島原発告訴団」のホームページから「経産省が、廃炉・賠償費用を国民に押し付ける」ことについて寄稿文が掲載されていました。事故を引き起こした責任者=犯人が事故の後始末にかかる費用についてなぜ口をさしはさめるのか、その前に事故の責任の所在を明らかにし、その責任を取るのが先だろうという内容です。(引用元:http://kokuso-fukusimagenpatu.blogspot.jp/

2016年9月26日月曜日


【寄稿】経産省が、廃炉・賠償費用を国民に押し付ける


サイエンスライター添田孝史さんより、経産省に新たに委員会が設置されることを受けての記事を寄稿いただきました。)



「犯人」経産省が、廃炉・賠償費用を国民に押し付ける


添田孝史(サイエンスライター


 東日本大震災から18年前の1993年10月、通産省資源エネルギー庁は、原発津波想定を再チェックするよう各電力会社に指示した。その3か月前に、北海道南西沖地震でまったく想定外の大津波が発生したからだった。
 当時は、貞観地震(869年)の津波が仙台平野の奥深くまで到達していた証拠が見つかり始めたころだった。この時、きちんと津波想定をやり直していれば、福島第一原発に10m以上の津波が到達する可能性が高いことは容易にわかった。
 ところが東電は、貞観地震三陸沖で発生したと決めつけ、福島第一への影響は小さいと報告した。福島沖で起きた可能性も以前から指摘されており、三陸沖だと限定できる科学的な根拠は皆無だった。素人にもわかるずさんな報告書だったがエネ庁は見逃し、さらにご親切なことに、報告書が外部の目で検証されないように、事故が起きるまで非公開にしていた。



 それ以来、エネ庁や後継の原子力安全・保安院経済産業省の特別の機関)は、何度も機会がありながら津波対策を改善させることを怠り、福島第一を津波に弱い状態のまま、運転させ続けた。
 2002年には、土木学会がまとめた津波想定の方法を、中身をよく吟味しないまま保安院は認めてしまう。学会とは名ばかりで実態は電力業界が自分たちに都合よく策定したものだった。既存原発の運転に支障がないよう、安全率を削り、貞観地震も無視していた。
 2006年には、インドやフランスで起きた原発の浸水事故をうけて、保安院は「我が国の全プラントで対策状況を確認する。必要ならば対策を立てるように指示する。そうでないと「不作為」を問われる可能性がある」と考えていたところが2008年度中にまとめる予定だった津波影響評価はなぜか実施されず、保安院津波対策の先延ばしを繰り返した。


 東電の監督を怠った保安院、そこを支配していた経産省は、原発事故の主犯格と言えるだろうその経産省が9月20日、増え続ける廃炉や賠償の費用、さらに原発全般の廃炉費用を誰が払うか議論する2つの委員会を設置すると発表した。東電や他の電力会社だけでは払いきれない分を、国民に転嫁する仕組みを作るのがねらいらしい。
 経産省は「福島県の方々が安心し、国民が納得し、昼夜問わず第一線を支え続ける「現場」が気概を持って働ける解を見つけなければなりません」と説明する。世耕弘成経産相は「誰が費用を負担するかは最終的に私が判断したい」と会見で述べた。


 国民が納得する「解」を、なぜ、あなたたち事故を引き起こした張本人が決めるのか、私には理解できない。国民の負担は必要になるかも知れない。しかしその前に、東電を破綻処理し、株主や銀行に負担を引き受けさせ、東電や経産省の責任も明確にしてからでなければならない。まずはそれからだ

◎案の定というか、4日、東電福島第一原発事故の損害賠償と除染費用の負担額が約8兆円を上回るという試算を出して超過分を国費で負担するよう政府に要望しているそうです。毎日新聞の記事を「shuueiのメモ」さんから。

8兆円負担増 電事連、国費求める

毎日新聞2016年10月4日


 電力業界団体の電気事業連合会電事連)が、東京電力福島第1原発事故の損害賠償・除染費用について、東電を含む大手電力各社の負担額が当初計画を約8兆円上回るとの試算をまとめ、超過分を国費で負担するよう政府に非公式に要望していることが4日明らかになった。政府はこれまで「賠償・除染費用は原則的に原発事業者の負担」との立場を取ってきており、慎重に検討するとみられる。


<中略>


解説 事故つけ回し「無責任」

 電気事業連合会が東電福島第1原発事故の賠償・除染費用の超過分を国に負担するよう要望しただが、大手電力各社はこれまで「原発のコストは安い」と説明してきた。事故のつけを国に求める姿勢は、「無責任」との批判が免れない。



 電力各社には「原発は『国策民営』で推進されてきたのに、事故が起きたときは事業者が責任を取らされる」との不満がある東電以外の大手には「東電の事故の責任を負わされるのは理不尽」との思いもある


 だが、大手電力は原発稼働で巨額の利益を上げてきた。原発の「安全神話」に寄りかかり、事故対策を怠ってきた面は否定できない福島第1原発事故に伴う賠償・除染費用が膨大な額に達する見通しになったからといって、国に負担を押しつけるのは筋が通らない。国が負担を引き受ければ、最終的に税金が投入され、国民負担につながる


 福島第1原発事故の処理費用は、国が原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じていったん立て替えるが最終的に電力各社が負担する仕組みだこの制度の趣旨にも大きく反する。【宮川裕章、工藤昭久】

(全文はコチラで:http://d.hatena.ne.jp/shuuei/20161005/1475610766