東電社員のつぶやきと「『永田町よりもずっと危険な南スーダンに派遣された自衛隊員に起立拍手しよう!』の真意」(白井聡)

◎山崎氏のツィート欄から、東電の一井さんという方、2〜5日の社員としての最後のツィートです。

山崎 雅弘さんがリツイート

一井唯史 ‏@ichii_tadafumi 11月2日
上層部が変な指示をするから社員が疑われる
私が賠償業務にいた時は

「社名を名乗るな」
「外部との無駄な接触は控えろ」
「柏崎再稼働のために原発推進自民党が選挙に勝つまでは問題を起こすな」等。


くだらない箝口令はやめてほしい

東電・廣瀬社長「炉心溶融」の公表遅れを「隠蔽だった」と認めるも、根拠なき官邸の“圧力”については「判断しておりません」と曖昧な姿勢を崩さず!〜東京電力記者会見 2016.6.21(http://iwj.co.jp/wj/open/archives/310743)


山崎 雅弘さんがリツイート
一井唯史 ‏@ichii_tadafumi 11月4日
私は東電社員のうちに言っておきたい


原発は人の手に負えない
原爆と同じロジックで核分裂させてエネルギーを得る。
爆弾ではないが、原発の前に人は無力だ。


あれだけのことがあったのだから
脱原発を唱える社員がいても良いと思う


山崎 雅弘さんがリツイート
古賀茂明@フォーラム4 ‏@kogashigeaki 11月5日 古賀茂明@フォーラム4さんが一井唯史をリツイートしました


2011年4月、経産省の私のところに「東電を破たん処理して下さい」と言いに来た東電若手社員が複数いました。
東電の広報担当で、国民に嘘を言わされるのが嫌で、転職した方もいました。
そして、東電以外の電力会社でも、原発関連で社員にかん口令が。こんなことはもう、止めるべき時だ。


山崎 雅弘さんがリツイート
一井唯史 ‏@ichii_tadafumi 11月5日 本日付けの退職辞令が送られてきました


内定の数ヶ月後に検査データの改ざんが発覚し、就職氷河期でも内定を喜べずに就職しました。


あれから15年、企業体質は変わらず事故が起こり、賠償に全力を尽くしても無力でした。


謝っても謝りきれないのですが、本当に申し訳ございませんでした。

白井聡氏の記事を見つけました。国会で南スーダンに派遣された自衛隊員に起立拍手を求めた安倍首相。一方で、南スーダンの危険性について「永田町よりははるかに危険」と笑えない冗談?で答弁。この二つの出来事を通して、白井聡さんが安倍首相の深層意識を探り、その本心を暴きます。

内田樹さんがリツイート
ガイチ ‏@gaitifujiyama
『首相の面白くもない冗談によってわかったのは(中略)途方もなく驕慢な特権意識だ』「永田町よりもずっと危険な南スーダンに派遣された自衛隊員に起立拍手しよう!」の真意(白井聡) - Y!ニュース

◎全文そのままコピーです。

「永田町よりもずっと危険な南スーダンに派遣された自衛隊員に起立拍手しよう!」の真意
白井聡  | 京都精華大学人文学部専任講師(政治学・社会思想)

2016年11月1日 6時0分配信



自衛隊が派遣された南スーダンは、依然として緊迫した状況にあります。)


「名を正す」とは『論語』のなかでも最も有名な話であろう。物事をその正確な名前で呼ばないことこそが世が乱れる根本である、と孔子は喝破したのであった。最近の国会でのやり取りを聞いていてこの言葉を思い出した


自衛隊がPKO(国連平和維持活動)に派遣されている南スーダンでは内戦が再燃し、紛争継続地には派遣しないとする「PKO参加5原則」が完全に崩れているとの指摘が、かねてなされていた。この点を国会で突かれた安倍晋三首相は、「衝突はあったが戦闘行為ではない」という趣旨の答弁をした(10月11日)が、端的に言って意味不明である。


意味不明ではあるが、これは実に見慣れたまことに「日本的」な光景でもある大東亜戦争当時、大本営は「全滅」を「玉砕」と呼び換え、「撤退」を「転進」と呼び換えた。この呼び換え癖は敗戦を経ても治らず、「敗戦」そのものが「終戦」と呼び換えられただから今も、底が抜けて放射能が溶け込んだ水がダダ漏れになっている原子炉を指して、「冷温停止状態」などと言っているわけである。


呼び換え癖は、翌12日には極度のシニシズムにまで発展した。南スーダンの情勢への認識を質されていわく、「永田町と比べればはるかに危険」と安倍首相は答弁した。要するに、ジョークで切り返したのである。 命の危険を日々感じながら任務にあたっている人々が現にいるなかでこうした冗談を口にする人間と同じ人間が、他方で、自衛隊員や海上保安官の任務遂行の努力を讃えるために国会演説を中断して起立と拍手を求めてもいる(9月26日)。これは矛盾なのか?

いや、そうではあるまい。首相の面白くもない冗談によってわかったのは、この起立・拍手事件の問題性の核心は、そこに現れた光景が何やら全体主義国家を連想させるものであったとか、一部の公務員を特別視させるものであったことではない、ということだ。ここに露呈したのは、途方もなく驕慢な特権意識だ。


なぜなら、あのような冗談は、危険な現場に身を置く人々に対する徹底的な軽侮がなければ到底不可能である。してみれば、自衛隊員らに対するあの表敬の所作を支える深層の意識は、「あの身分の低い連中のために、総理大臣がわざわざ演説を中断し、白紙領収書を切れるほどの特権階級たる与党議員がわざわざ席から立って拍手したのだ、ありがたく思え」というもの以外ではあり得ない。


かくして、冗談と表敬の間には、実は何の矛盾もないこの先起こりうること(南スーダンでの自衛隊員の人命損失)を見越すならば、あの表敬の所作は、「このわれわれから感謝されるという身に余る光栄を得た諸君には、もう思い残すことはあるまい」というメッセージを告げてもいる。


諸々の状況こそ異なるが、かつて5.15事件や2.26事件が発生せざるを得なかった道理を実感させられる。テロやクーデターはまさに大乱の典型であるが、それは、物事の「正しい名」を自分たちで好き勝手に決められると勘違いした人々が自ら招き寄せるものにほかならないのである。※本稿は「京都新聞」10月24日夕刊に寄稿したものです。

白井聡/京都精華大学人文学部専任講師(政治学・社会思想)
satoshi.shirai.18
1977年、東京都生れ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒、一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位修得退学。博士(社会学)。政治学者の立場から「いま何が起きているのか」を考え、分析します。私の専門は、政治哲学とか社会思想などと呼ばれる分野です。哲学・思想のプリズムを通して、現実の本質に迫りたいと思います。著書に、『未完のレーニン』(講談社選書メチエ)、『「物質」の蜂起をめざして――レーニン、〈力〉の思想』(作品社)、『永続敗戦論――戦後日本の核心』(太田出版)、共著に『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社新書)などがある。朝日新聞社「WEBRONZA」寄稿者。