布施裕仁氏と「報道特集の南スーダン日報問題」・北沢元防衛相「 南スーダンPKOは『撤収すべき』」

自衛隊南スーダンでの日報問題は、ジャーナリストの布施裕仁氏が昨年の9月に情報開示請求したことから始まりました。当初日報そのものが存在しないとされていましたが、今月6日データの保存が判明。実は昨年12月にわかっていたのに統幕から大臣への報告がなかったことも。(詳しくはコチラで:「布施祐仁×堀 潤「南スーダンで活動するPKO部隊の『日報』問題について」プラス2017.02.21 」(https://www.youtube.com/watch?v=6Ev8_Gr1ifI)そして、先週土曜日の「報道特集」でも取り上げられました。まず、布施氏の最近のツィートから:

内田樹さんがリツイート
布施祐仁 ‏@yujinfuse 3時間前

布施祐仁さんが三浦英之をリツイートしました
日本政府は、南スーダン政府および軍にジュバで活動する自衛隊の安全を確保してもらうというスタンスなので、ジュバの外で政府軍がやっている虐殺行為、戦争犯罪には沈黙している昨年12月に安保理に提出された武器禁輸制裁決議案に棄権したのも同じ理由。

三浦英之‏@miura_hideyuki
深刻化する南スーダン情勢。政府軍と戦う反政府勢力トップ・マシャル前副大統領が電話取材に応じ、「(自衛隊のいる)ジュバは主要なターゲットだ」と語った。「政府軍が市民を殺している。自衛隊は政府軍の行為を阻止できていない」とも。(http://www.asahi.com/articles/ASK2L2273K2LUHBI004.html)

◎その布施氏を招いて2月18日の報道特集南スーダンの日報問題を取り上げました。


布施祐仁 @yujinfuse
昨日の『報道特集』は南スーダンの日報問題を特集、僕のインタビューも放送されました何よりも現地の映像が流れたのがよかったJVCの今井さんが話していたように、日本政府が「戦闘」と言おうが「衝突」と言おうが、この映像が事実です。これは昨年7月のことではなく、今も続いていることです。pic.twitter.com/KJ1f7ETmLJ
2017年2月19日 08:04

報道特集の番組はコチラで見ることができます。
2017年02月19日 【報道特集自衛隊「日報」隠蔽は?  南スーダンで今何が」http://blog.livedoor.jp/gataroclone/archives/49512681.html

<特集>南スーダンで今何が

南スーダンのPKOに参加している自衛隊がつくった日報を巡る問題。南スーダンでいま何が起きているのか、隣国を拠点に首都・ジュバにたびたび入り、食糧支援などを続けている日本国際ボランティアセンター・今井高樹に話を聞いた。
国連は先月だけで5万人以上が隣国・ウガンダに逃れ、南スーダンで「大量虐殺が起きる恐れがある」と警告。衆議院予算委員会で安倍首相は「7月に起こったことは戦車も出てきたので、武力を用いた争いと言ってもいい。現在は小火器等々が中心と考えている」と述べた。
今井にとって国会でのやり取りは、現実離れした議論でしかない
状況が悪化する中、南スーダンでは「自衛隊が守ってくれる」と期待している市民も多いという。市民を守ることは駆け付け警護の任務ではない。今井は戦闘が起きた場合、市民を守らなければ、自衛隊への反発も大きくなると懸念。スーダンの映像。戦闘、衝突について言及あり。

日刊ゲンダイ北沢元防衛大臣の提言「南スーダンPKOは『撤収すべき』」を読みました。稲田防衛大臣自衛隊のこと、信頼されない大臣がトップにいると肝心のシビリアンコントロール文民統制)が利かなくなることや、「防衛省を政治的保身に利用している」という指摘や、稲田大臣には自衛隊への愛情が感じられないという批判など、元大臣ならではのやり取りです。全文引用です:

内田樹さんがリツイート
松井計 ‏@matsuikei
北沢俊美元防衛相が提言 南スーダンPKOは「撤収すべき」 http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/199666 … #日刊ゲンダイDIGITAL
(http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/199666)

注目の人 直撃インタビュー
北沢俊美元防衛相が提言 南スーダンPKOは「撤収すべき」
2017年2月20日


 南スーダンに派遣された陸上自衛隊のPKO(国連平和維持活動)をめぐり、国会が紛糾している。稲田防衛相はトンデモ答弁を繰り返して立ち往生。それでも安倍首相は、「戦闘」が起きている現場でのPKOを継続し、憲法違反を強行するつもりだ。トランプ大統領の誕生で日米同盟強化の方針から、政府はより大きな軍事的役割を果たすと言い出している。民主党政権時代の元防衛相・北沢俊美氏はこうした事態をどう見ているのか――。



防衛省を政治的保身に利用、信頼失墜は当然


――防衛大臣時代の2011年8月に、南スーダンへのPKO派遣にGOサインを出された。政権交代や15年9月の安保法制を経て自衛隊の任務は拡大。16年11月から駆け付け警護が付与されました。ところが、派遣そのものに「違憲」の疑いが強まり、大問題に発展しています


 情勢を見る限り、陸自は撤収しなければならない状況にあると見ています。経過を説明すると、首都ジュバへの派遣決定は確かに私が防衛大臣の時でした。(11年8月に訪日した)潘基文国連事務総長(当時)から強い要請があり、派遣すべきか議論を重ねた。防衛省としては、PKO参加5原則にかなう状況であれば平和貢献になると結論を出したのですが、自衛隊の派遣が許される平和で安定した地域はジュバしかない。ジュバには韓国をはじめ、各国が手を挙げていた。ジュバ以外への派遣となれば、引き返す状況になりかねない。それで、防衛省内では速やかに決定し、ジュバで進めましょうという流れができた。それが端緒になったんです。



▼PKO参加5原則1)紛争当事者間の停戦合意
2)紛争当事者の受け入れ合意
3)中立性の維持
4)上記の原則が満たされない場合の撤収
5)武器の使用は必要最小限度


――国会で追及されていますが、16年7月時点でジュバは戦闘下にあり、現場部隊の日報にハッキリと「戦闘」の記述があった。にもかかわらず、PKOを継続し、駆け付け警護にまで踏み込んだ。稲田防衛相は「憲法9条の問題になる言葉(=戦闘)は使うべきでないから〈武力衝突〉を使っている」などと、メチャクチャな答弁を繰り返しています



 稲田さんは即刻、辞任すべき。国会対策ありきで事実を正確にとらえず、言葉を弄して危険性をごまかす。あり得ない話ですよ自衛隊の行動は法律(自衛隊法および国際平和協力法)に基づいて規制されている。その大前提である憲法に違反しているなんて言語道断だ稲田さんは自衛隊の行動原理も、それを担保する法律も自分の都合のいいようにねじ曲げているねそもそも憲法上、武力行使につながる駆け付け警護は認められない。自衛隊の行動実態からいって、できるはずないんだから。


――問題の日報ですが、防衛省は当初は破棄したとし、見つかったら見つかったで、大臣への報告を1カ月も怠りました。


 稲田さんは大臣としての存在感も威厳もないのでしょう。軽く見られているんですよ。本人も自信をなくしているんじゃないのこれまで彼女がやったことといえば、自分のメンツのために動いただけでしょう。(終戦記念日の)8月15日には必ず靖国神社に参拝するからと。でも防衛大臣の立場でのお参りはマズイから、アリバイづくりで(16年の)ジブチ訪問を段取りさせたわけでしょう個人的な政治信条を防衛大臣の仕事に持ち込んだわけだ。防衛省の人たちは分かっていますよ。それでも、中国や韓国を刺激せずに大臣の職務を果たしてくれるのであればと、その時は従ったところが、(16年12月に安倍首相に同行した)真珠湾から帰ってきた途端、靖国へ行った。「政治家・稲田朋美」の立場を保つために、防衛省は使われ、動かされた。そりゃあ、省内の信頼は失墜する


――防衛省の人たちにナメられていると。


 彼らは彼らで毎日仕事がある。自分たちでモノを考えて判断しなきゃいけない時に、シビリアンコントロール文民統制)が利かなくなる。最前線に立つべき大臣が重しにならないのだから。私は(防衛大臣を)2年間やって彼らの中に入って、行動を共にし、一緒に考えてきた。そのあたりは徹底的にやってきたつもり。稲田さんからはそういう雰囲気が見えないし、自衛隊への愛情がまったく感じられないね。




トランプに押し付けられるTHAAD配備


――米国ではトランプ政権が船出し、日米首脳会談が行われました。日米同盟の強化がうたわれています

 トランプ氏が大統領になると聞いた瞬間、安保法制が日本の命取りになるなと思った。集団的自衛権が可能になる憲法解釈に変えてしまったからです。日本は非常に危険な扉を開いちゃったね。安倍総理や与党側は「絶対ない」と言い切って強行採決したけれど、安保法制で自衛隊は米軍の後方支援のために地球の裏側まで出ていけることになった。70年近く続く日米安保条約で取り決めた日米それぞれの役割が一気にほどけちゃったわけだ。米国はあれもやってくれ、これもやってくれと言ってくると思いますよ。

――どんな要求が想定されますか?

 トランプ大統領は日本の防衛費が少なすぎると主張している。応分の負担はしてもらう、という話はあるでしょう。最初に求められるのが弾道ミサイル防衛(BMD)の追加配備だと思う。北朝鮮や中国の存在はアジアのみならず、米国にとっても大きな脅威になっている。払拭には、まずはミサイル防衛。日本はイージス艦に搭載したSM3と地上のPAC3の2段構えで、海上と陸上の防衛体制はできているんだけれど、さらに強化する必要がある。米国はSM3、GBI、PAC3、THAAD(高高度防衛ミサイル)の4段階。それで持ち上がりそうなのが、韓国での配備も進められているTHAADだね。


――そうなれば負担は莫大です。THAAD配備だけで兆単位のカネが動くと聞きます。


 施設費用だけじゃなく、整備や訓練を担当する技術要員がたくさんついてくる。例えば、1月に岩国基地山口県)に配備された最新鋭ステルス戦闘機のF35。1機350億円ですが、トータルでは500億円くらいに膨らむ。トランプ大統領の言う「Buy American(米国製品を買え)」にもかなうわけだ。BMDの次は、東アジアあるいはアジア全体における米軍の展開に対し、日本はどこまで肩代わりできるかという話になると見ています。安倍総理は日本のために行動する米軍の戦艦を守るのは当然だと言っている。集団的自衛権の範囲を煮詰めずに(安保法制を)強行採決しちゃったわけだから、どんどん米国に引きずられかねない。ものすごく危ないですよ。国会答弁の兼ね合いでこれ以上は難しいと説明したところで、米国はそんなことでは納得しないから。




■昭和の歴史を自覚して議会は自立すべし


――米国は同盟国の安保から手を引くこともあるのでしょうか。

 米国第一主義を掲げるトランプ大統領は「世界の警察をやめる」とも発言しているけれど、米国の覇権を手放すことは考えられない。中国の南シナ海進出を放置しようものなら、米国の権威はガタ落ちする。結果、米国自体が危険な状況に陥ってしまう。これからは、米国がカバーできない部分を同盟国に押し付けようとするでしょうね。


――安倍政権は相変わらず強引な国会運営でマトモに審議しようとしません。国民が気づかないうちに軍事化が進む怖さがあります。


 民主主義国家で権力の暴走を止められるのは議会の力しかない。(引退前の)最後の議会で私が一番力を込めて政府与党に求めたのは、謙虚で丁寧な議会運営でした。安倍総理は答弁中にヤジられると、黙って私の言うことを聞けとか言うでしょう。驕りもいいところ。絶対許せない。委員会や本会議の整理権は委員長なり議長にあるんだから。今の国会は太平洋戦争に向かった時代とシンクロする部分がある。議会は軍人に乗っ取られ、無謀な戦争に突入して300万人以上の国民を失い、主権国家も滅びた。米国が相手だったから主権回復できたけれど、ソ連に占領されていたら日本という国はもうない。昭和の歴史を自覚して議会が自立しなければダメだよ。私も自民党で育った人間。歴代の総理大臣は議会に対して謙虚だった。吉田茂は答弁後に「バカヤロー」とつぶやいて解散させられたし、池田勇人大平正芳も「忍耐」を政権の柱に据えた。自民党には安倍政権の横暴を分かっていながら物を言わない政治家がたくさんいる。そうした連中は罪深いよ。

(聞き手=本紙・坂本千晶)


▽きたざわ・としみ 1938年、長野市生まれ。早大法学部卒。長野県議を17年務め、92年に参院長野選挙区で初当選以降、4期。民主党の鳩山、菅内閣防衛大臣。16年7月に政界引退。長野保健医療大学理事長。