「共謀罪で言論の息の根が止められる」小澤俊夫氏(日刊ゲンダイ)


◎昨日の朝刊の新聞広告欄、二つの週刊誌が競うように森友関連というか、週刊新潮安倍昭恵さんを取り上げていて、一方の週刊文春は、昭恵夫人付き秘書だった谷査恵子さんの上司として名前が出た今井尚哉首相秘書官を大きく取り上げています。国会では森友問題はもう終わりといいたいところでしょうが、週刊誌はまだまだ?
テレビも何とか取り上げ続けていますね。近畿財務局が大阪府に1年と少しの間に5回も出かけて私学審議会について問い合わせ(親切な圧力?「何とかコントロールして結論を出せるのでは」)をしていたそうです。また、昭恵さんは、15年9月5日の名誉校長就任挨拶の講演の前日4日から大阪入り、安倍首相も4日には戦争法案の国会審議の最中、わざわざ大阪まで足を運んで読売テレビの生放送と収録をこなして、その後冬柴氏と今井氏(↑)らと食事会で、この日は日帰り。一方、昭恵さんは、なんと私学審議会会長の梶田氏と奈良のイベントで一緒だったそうです。松井府知事が「関係があったことを早く認めて」と言うはずですね。昭恵さんを中心に人脈をたどると「忖度」(親切なプレッシャー?)の道筋が見えてきます。

内田樹さんがリツイート
中沢けい‏ @kei_nakazawa 6時間
今週の週刊文春はお買い得。「東芝原発大暴走を後押しした安倍秘書官 今井尚哉」と「安倍晋三は『裸の王様』になったのか」を合わせて読めば菅官房長官の「問題ない」呪文の効き目が薄れた理由が分かる。大阪の橋下徹氏を脱原発から原発推進に変えたのも今井秘書官ですって。

◎山崎 雅弘さんが平野敬一郎氏をリツイートした記事で、 日刊ゲンダイの<小澤俊夫氏が警鐘 「共謀罪で言論の息の根が止められる」>を紹介。大変興味深い内容ですので全文コピーします:(引用元:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/202513/1

注目の人 直撃インタビュー
小澤俊夫氏が警鐘 「共謀罪で言論の息の根が止められる」


 共謀罪の危険性を聞くなら、小澤俊夫氏だろう筑波大名誉教授でドイツ文学者。世界的な指揮者、小沢征爾氏の兄、つまり、ミュージシャンの小沢健二氏の父親だが、今回はこの人自身の父親、開作氏の話から伺った。満州に渡り、石原莞爾に共鳴、五族協和を訴えた開作氏は大陸でも帰国後の日本でも特務機関の監視対象だったのであるテロ等準備罪などというが、治安維持法とどこが違うのか。今の安倍政権は日本をどこへ導こうとしているのか。貴重な戦争体験に基づいた警鐘――。


■一番悪い岸の末裔が首相になって日本の未来はなくなった



――お父さんの開作さんは早い段階から敗戦を予想されていたと聞きました。


 親父はもともと歯医者で、シベリア経由でドイツに留学するつもりで大連に行ったんですよ。そこで石原莞爾さんや板垣征四郎さんの五族協和の考え方に感銘を受けて、満州青年連盟の一員となって活動を始める。でも、いつのまにか日本から大量に官僚が入ってきまして。親父は官僚が大っ嫌いですから、絶望していたところ、北京行きを勧められたんです中華民国新民会という政治結社をつくって、日本の軍政府ができないことを中国人のためにやっていました。華北評論という雑誌も出していたね。今でも覚えていますが、1940年、皇紀2600年で日本中が浮かれているときに、「この戦争は勝てない」とハッキリ言いました。なぜなら、中国の民衆を敵に回しているから、と。こんなことを言えば軍部に睨まれますよね。その前から、軍部批判を強烈にやるもんだから、目をつけられて。思想憲兵がうちにずっと来ていたんです。


――あからさまですね。


 憲兵の格好をして、ずっといました。おふくろも気がいいものだから、一緒にご飯食べましょうって、円卓を囲んだりした。でも、親父は物事をズバッと言うタイプだったんで、全然、遠慮しないで、軍部を批判するんですね。


――よく捕まらなかったですね。



 まったくです。華北評論も検閲で真っ黒にされて。小学生だった私も墨塗りを手伝っていました。家族はその後すぐ帰国し、親父は1943年に日本に戻ってくるんだけど、日本でも同じようなことがありました。立川警察の特高課長が毎日、家に来て、来客、電話も含めて、会話を全部聞いている。名刺を出して、監視に来ましたって言うんですね。怖かったですよ。でも、親父はその特高の前でも平気で、国防婦人会のB29への竹やり訓練とかを「バカか」とやるんですね。ヒヤヒヤしたけど、捕まらなかった。親父が死んだときに征爾の父親ということで訃報が新聞に出ました。3日後に、その特高の人から手紙が来て、親父のことを『真の愛国者だと確信していました』と書いてあった。彼は多分、親父の言動を上に報告しなかったんじゃないかな


――特高をも魅了するというか、スケールが大きな方だったんですね。そういうお父さまは今の安倍政権をどう見ますかね?


 親父は「日本から満州に来た官僚の中で一番悪いのは岸信介」と言っていました。「地上げをし、現地人は苦しめ、賄賂を取って私財を増やした」と。だから、岸が自民党総裁になったときに「こんなヤツを総裁にするなんて、日本の未来はない」とハッキリ言った。その岸の末裔が首相になって、日本は本当に未来がなくなっちゃったね。


積極的平和主義とは過去を反省し、その姿勢を見せることです


――安倍首相はその岸を尊敬し、祖父の悲願と自身の野望を重ね合わせているように見えますね。


 秘密保護法から今度のテロ等準備罪に至る一連の流れはものすごく危険な兆候だと思いますもうすぐ、息の根を止められるんじゃないですか?



――それは人権の?


 まずは言論の自由でしょう共謀罪の対象になるのは犯罪を企む集団であって、一般人は関係ないというが、普通の団体も質が変われば、対象になると言っているわけでしょう? その判断を下すのは警察でしょう? 正しいことでも警察がダメだと言えば、アウトになる。これが戦前の治安維持法の怖さだったんだけど、同じ懸念があります。警察、当局の判断が正しいのかどうかという検証を行うにも情報が出なければどうにもならない。森友学園の疑惑だって、都合の悪い情報は「廃棄しました」と言って出さないじゃないですか。権力というのは都合の悪いことは出さないんですよ。だから、危ないそうなったら、誰も怖くてものを言えなくなりますよ


■こんな公教育をやられたら、20年後みんなが君が代信奉者に


――森友学園といえば、国家のための滅私奉公を礼賛するような右傾化の流れが幼稚園にも及んでいることに驚きました。


 安倍政権は要領や指針を出して、幼稚園、保育園でも君が代を歌わせようとしているじゃないですか。公教育の中でこれをやられたら20年後、みんなが君が代信奉者になりますよ。親が「国家、国旗への強制的な信奉はおかしい」と言っても、子供は「そんなことない」になる。家庭内で分断が起こる。幼稚園にまで手を出すなんて、極めて悪質で危険です。さらに小学校に上がれば、教科書で従軍慰安婦南京虐殺の問題をなかったことにしているじゃないですか


――慰安婦像をめぐって駐韓日本大使は帰国したままです。



 日本人は戦争というと、被害の記憶しかない。その被害の象徴として、原爆ドームを残している。米国のオバマ大統領が広島に来て、「これは米国の加害の象徴だ、もう過去の話だから撤去してくれ」と言ったら、日本は撤去しますか?しないでしょ? 先の戦争には2つの側面があるんです。被害者としての側面、加害者としての側面です。日本人は中国大陸でいっぱい殺しているんですよ。小学生のころ、陸軍病院に慰問に行った。そこで軍人からいろんな話を聞きました。進軍していると畑でおばあちゃんが働いていた。必ず殺すと。子供も殺すと。なぜかというと、通報されるから。スパイされるから。ある時、日本軍が怪しい男を追っていたら、ある村に逃げ込んで、捜しても見つからない。そこで食い物を配るからといって、村民を一軒の農家に集めた。そこに火を放ち、パニックになって逃げてくる中国人を機関銃で撃ち殺した。南京攻略では捕虜を川辺に並べて、撃った。死体はそのまま川に落ちた。軍人が得々とそういう話をするのを子供の時に聞いていたんです。子供心にもこれは殺人だと思ったが、戦争だからやっていいんだと自分に言い聞かせたんですね。


――日本人には加害者の部分がそっくり抜け落ちていますね。



(小澤さんがつけていた戦争中の日記(C)日刊ゲンダイ)


 そこがドイツとの大きな違いです。日本軍の慰安婦は、公衆便所みたいなところに女がいて、みんな長蛇の列で順番に犯してきたと聞きました。人道に対する罪ですよ。でもね、日本は赤紙で戦争に取られた夫や息子が帰ってくるとみんな喜んで、「ああよかった」となるでしょ。だから誰も戦地で何をしてきたかなんて、言いませんよ。優しいお父さんがさ、犯したとか殺したとか、何も言わずにみんな、墓場まで持って行ったんです。だから、銃後の国民は日本人の加害者としての側面を知らないできたんです。


――しかし、被害者の方は忘れない。


 安倍首相は未来思考の積極的平和主義というでしょ。しかし、彼は過去の罪と向き合っていないきちんと過去を見つめ、謝罪する勇気がない。それで未来思考などと言ったところで誰が信じますか。積極的平和主義とは過去を反省し、その姿勢をしっかり、中国、韓国に示すことですよ。ドイツは強制収容所を堂々と残している、世界に自分たちが犯した罪はこれだと宣言している。強いよねえ。これは民族の差かもしれませんが、世界の中での日本が見えていないという意味で、安倍首相はレベルが低すぎると思います。


――ただし、北朝鮮がミサイルをぶっ放ち、国民も浮足立っている。こうなると、平和憲法で国が守れるのかという、議論になりませんか。


 安倍政権は周りの国に対して「日本は平和主義だから攻撃しないでおこう」という気持ちにさせる努力をしているのか外交的にも経済的にも国民的にも逆にあおっているじゃないですか。近隣諸国との信頼関係を醸成する努力をしなければいけないし、野党はそういう外交戦略を示さなければ、安倍政権の暴走を許すだけです。


▽おざわ・としお 1930年生まれ。ドイツ文学者であり、世界的な口承文芸学者である。昔ばなし大学・小澤昔ばなし研究所主宰。平和憲法の大切さを訴えている。ミュージシャン、小沢健二の父親。
(引用元:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/202513/1

(写真は日曜日の坊の島の畑と野草/タンポポと青空色のオオイヌノフグリ