「『あったものをなかったものにできない。』からもらった勇気」(キッズドア・渡辺由美子)


◎安倍専制政治に立ち向うたった一人の勇気ある行動は、感動を呼び、声を上げる勇気を与えています。
「特別な1日」さんのブログ主さんも「彼は『教育を守る』という点では首尾一貫しているように見えます。今は、間違いを正そうとする彼の言葉を皆で拾い上げる時だと思います」と書いておられました。
また、コメント欄には、『自分の理想のために仕事している人』は1割ぐらいと書いて、「小泉改革にも抵抗した前川氏はその1割でしょう。現実には出来ることもあるし、出来ないこともあるんですけど、出来ることをやることを選択した人を応援したいと思います。自分もその1割でありたいと思いますので。」とも。
前川氏の勇気ある記者会見を見て、またここに一人、声を上げる人が:

想田和弘さんがリツイート 渡辺由美子‏ @YumikoWatanabe_ 5月27日
前川前文部科学省事務次官の記者会見を見て、思ったことを書きました。
実は、ご退職後キッズドアのボランティアに参加してくださっていました。... http://fb.me/5GkKYZeTB 

◎早速「キッズドア渡辺由美子さんのオフィシャルブログ」を訪ねてみました。
まず、キッズドアとは「キッズドアが目指すところ」から引用です:


経済的に苦しい家庭が本当に望む事は何かを模索した結果、子どものための無料の学習指導に行き着きました。進学をあきらめてしまったら、就職にも不利です。収入の高い職に就く事が出来なければ、その子どもたちも、また貧困の問題を抱えてしまいます。この負の連鎖を断ち切る為に、子どもたちに進学する事の喜びを伝えたいと思いました。
現在、キッズドアという名前の通り、日本の子どもたちの社会へのドアを開けるべく、多くの大学生・社会人ボランティアと共に、国内の子どもの教育支援に特化した活動を展開しています。そこに、企業も行政もNPO法人も個人も入ってきて、「日本の全ての子どもが夢と希望を持てる社会」を作ること、その想いを軸に、これからも誠心誠意、取り組んで参ります。

文科省事務次官という官僚のトップまで上り詰めた前川喜平氏は辞職後、このキッズドアのボランティアに応募されて講習を受け活動にも参加されていたそうです。渡辺由美子さんが、今の政治と子ども、安倍お友達優遇政治などについて、前川氏の「あったものを無かったことに出来ない」をキーワードに考えます:(引用元:http://kidsdoor.tokyo/yumiko.watanabe/
<以下、字が小さくて読みづらい方は、「拡大」を利用して読んでください>

「あったものをなかったものにできない。」からもらった勇気
2017年5月27日



前川前文部科学省事務次官が、加計学園をめぐる文書で記者会見をされた。
様々な憶測が流れていて、何が真実か見えづらい。

 

実は、前川氏は、文部科学省をお辞めになった後、私が運営するNPO法人キッズドアで、低所得の子どもたちのためにボランティアをしてくださっていた。素性を明かさずに、一般の学生や社会人と同じようにHPからボランティア説明会に申し込み、その後ボランティア活動にも参加してくださっていた。
私は現場のスタッフから「この方はもしかしたら、前文部科学省事務次官ではないか」という報告は受けていたが、私が多忙で時間が合わず、また特になんのご連絡もなくご参加されるということは、特別扱いを好まない方なのだろう、という推測の元、私自身は実はまだ一度も直接現場でお目にかかったことがない。

 

担当スタッフに聞くと、説明会や研修でも非常に熱心な態度で、ボランティア活動でも生徒たちに一生懸命に教えてくださっているそうだ。
「登録しているボランティアの中で唯一、2017年度全ての学習会に参加すると○をつけてくださっていて、本当に頼りになるいい人です。」
と、担当スタッフは今回の騒動を大変心配している。年間20回の活動に必ず参加すると意思表明し、実際に現場に足を運ぶことは、生半可な思いではできない。
今回の騒動で「ご迷惑をおかけするから、しばらく伺えなくなります」とわざわざご連絡くださるような誠実な方であることは間違いがない。
 



なんで、前川氏が記者会見をされたのか?


今、改めて1時間あまりの会見を全て見ながら、そして私が集められる様々な情報を重ねて考えてみた。
これは、私の推察であり、希望なのかもしれないが、彼は、日本という国の教育を司る省庁のトップを経験した者として、正しい大人のあるべき姿を見せてくれたのではないだろうか?

 
私は今の日本の最大の教育課題は「教育長や校長先生が(保身のために)嘘をつく」ことだと思う。
いじめられて自殺をしている子どもがいるのに、
「いじめはなかった」とか
「いじめかそうでないかをしっかりと調査し」
などと、校長先生や教育長が記者会見でいう。
「嘘をついてはいけません。」と教えている人が、目の前で子どもが死んでいるというこれ以上ひどいことはないという状況で、明らかな嘘をつく。
こんな姿をみて、子どもが学校の先生の言うことを信じられるわけがない。
 

なぜか学校の先生には、都合の悪いことが見えなくなる。周りの生徒が「いじめられていた。」と言っているのに「いじめ」ではなく、「友達とトラブルがあった」とか、「おごりおごられの関係」になったりする。
それは今回の、あるはずの文書が「調査をしてみたが、見つからなかった。」であり、「これで調査は十分なので、これ以上はしない。」という構図とよく似ている。
 


自分たちの都合のいいように、事実を捻じ曲げる。
大人は嘘をつく。
自分を守るためには、嘘をついてもいい。正直者はバカを見る。

 
子どもの頃から、こんなことを見せられて、「正義」や「勇気」のタネを持った日本の子どもたちは本当に、本当にがっかりしている。何を信じればいいのか、本当にわからない。
小さなうちから、本音と建前を使い分け、空気を読むことに神経を尖らせなければならない社会を作っているのは、私たち大人だ
 

 
「あったものをなかったものにできない。」


前川氏が、自分には何の得もなく逆に大きなリスクがあり、さらに自分の家族やお世話になった大臣や副大臣文部科学省の後輩たちに迷惑をかけると分かった上で、それでもこの記者会見をしたのは、
「正義はある」
ということを、子どもたちに見せたかったのではないだろうか?


 
「あったものをなかったものにはできない。」


そうなんだ、嘘をつかなくていいんだ、正しいものは正しいと、間違っているものは間違っていると、多くの人を敵に回しても、自分の意見をはっきりと言っていいんだ。

 
子どもたちとって、これほど心強いことはない。

 
「正義」や「勇気」のタネを自分の心に蒔いて、しっかりと育てていいんだ。
どれほど心強いだろう。
 

 

今回の記者会見は、前川氏にとっては、何の得もないが、我々日本国民には非常に重要な情報である。報道によれば、くだんの大学のために、37億円の土地を今治市から無償譲渡し、96億円の補助金加計学園に渡る計画だという。
もし、大学が開学すれば、さらに毎年国の補助金が渡ることになる。
 

96億円の補助金とはどれぐらいの額だろうか?昨年、私たちを始め多くの団体やたくさんの方々の署名によって実現した給付型奨学金の年度予算は210億円だ。一人当たりの給付額も少ないし、人数もとても希望者をカバーできるものではない。なぜ、こんなに少ないのか?というと、「国にお金がないから」という。
 

お金がないのに96億円、土地も合わせれば136億円もの税金を投じて、新たに逼迫したニーズを見られない獣医学部を作るお金を、給付型奨学金に回したほうがいいのではないだろうか?

 
前川氏の記者会見は、このような税金の使い道について、もう一度国民がしっかりと考える機会を作ってくれた
 

今、憲法改正による教育無償化がにわかに浮上している。私は教育無償化に賛成だ。いや、賛成だった。
しかし、大学の設置や補助金に信頼性が置けない現状では、憲法を改正してまで教育無償化を急ぐことに、大きな疑念が生じている。
結局、あまり市場ニーズのない、教育力のない大学等に、「子どものため」と言って税金がジャブジャブと投入され、子どもは質の良い教育を受けられない状況は変わらずに、一部の人だけが豊かになる。
そんな構図が描かれているとしたら、恐ろしいことだ。
 


これが事実かどうかは、わからない。しかし、そんなことを考えさせてくれる。

 
記者会見は、前川氏や彼の家族にとってはいいことは何もないが、本当は必要のない大学に多額の税金が使われるという、大きな損失を防ぐかもしれない。そのために、彼は勇気を出し正義を語ったのではないだろうか?


「あったものをなかったものにはできない。」

 
何が真実なのか、私たちはしっかりとこれからも探求していかなければならない。
 

今後、どのように動くのか全くわからないが、私たちは、文部科学省というこの国の教育を司る省庁のトップに、強い正義感と真の勇気を持った素晴らしい人物を据える国であり、時に身を呈して、国民のためにたった一人でも行動を起こす、そんな人が政府の中枢にいる国だということは間違いない。

ジューンベリーの実が6月を待たずに赤くなりました。水色の花はルリトウワタ