彼岸花を求めて・・・

(2つ目です)


今年のお彼岸には特別の響きがあります。そう、9月の9日に彼岸に旅立った父のことがありますので・・・
お彼岸には夏物と冬物の衣類の入れ替えをして、室内のファブリックを赤系統に替えるのが私のルールでしたが、ここ数年季節の入れ替えがズレていました。今年は、早くからあんなに暑かった夏でしたが、台風の後急に涼しくなって夏物では寒い日も。季節がスムーズに流れて四季折々の風物を楽しみながら生活も合わせてという昔ながらの暮らし方がくずれていきそうです。

23日の今日、連休中日の日曜日もお天気になりましたので、夫は久しぶりに六甲へ歩きに行くと出かけました。それまでも時間を見つけて箕面の山は歩きに出かけていましたが、帰ってくるたびに、「山はえらいことになってる、荒れて無茶苦茶。無残や〜」と。昨年の台風で倒木だらけの箕面の山、やっと11月を目指して整備されてきたところに台風21号。泣きっ面に蜂。オープンどころか即閉鎖。滝道は通行止めになってしまいました。観光シーズン直前にこの被害。竜安寺より奥は入れないとのこと。定年後、公園管理のお仕事をされているKさんのご主人は、警報が出るたびに家を出て公園事務所まで駆け付けなければならず。21号の時は、その事務所も停電だったといいます。どこから手を付けていいのかわからないほど山は大荒れとのこと。先日沖縄から駆け付けた次男も、勝尾寺までよく歩いていたので、夫から聞く山の様子に心を痛めていました。

さて、久しぶりに用事のない日の昼下がり、私は彼岸花を求めて大好きな防の島の田圃へ自転車を走らせました。病院通いが半年続いたのですっかりご無沙汰。久しぶりの道を行くと、カブスカウトの世話役仲間だったMさんが娘さんと一緒に玄関口に。声を掛けたら訝しそうな顔なので、名前を名乗りました。すぐわかってしばらく立ち話。85歳のご主人が市立病院で亡くなられたとか。父の最期も市立病院だったと私も。同じく転院先を探している時だったそうです。「元気そう」と私。長男と同い年の息子さんの子供はもう高校生だとか。お姉さんの娘さんがまだ独身で二人暮らしだそうです。「気兼ねなく暮らしてるから二人で太り気味」と仰るので、見ると確かにお二人ともふくよか。「幸せな証拠ね」と言ってお別れしました。

さて、さて、田んぼの入り口が見えて、真っ赤なヒガンバナ、曼殊沙華も見えます。まず、とっかかりの住宅街外れの田圃の畔へ分け入ることに。畔を進んで段差のところに咲いている彼岸花を写していると、小さな声で「なにしてるの?」と。あたりを見回すと小さな男の子が虫取り網を操っています。
「この赤い花の写真を撮ってるの。ところで、君は何してるの?」
「虫を探してるの。これ見て、カマキリとったよ」。

見ると、虫かごに茶色のカマキリが入っていました。
「バッタも」「そうね、茶色のバッタよね」。
手に何だか黒いスイカの種のようなものを大事に止まらせています。
「これも虫」「黒くて種みたい」
「違う、よく見て、手があるよ」。

「みて、エビもとったよ」と言いながら
水路の中に網を突っ込んで何やらとったよう。
小さなカエルを捕まえてエビの入っている器に入れました。
「カエル、小さいよね〜。エビ? これか〜」
畔伝いに彼岸花の写真を撮ってから、
「君のおうちはどこ?」
「あそこ」と指差す方、田圃のすぐ横に
幾棟かの新築の家があって黒い車が駐車していました。
「あの車のある、あの家?」「そう」
だから一人でも大丈夫なんだ、「じゃ、行くね」「うん」
子供と別れて竹下橋のかかる鍋田川沿いの田圃ヒガンバナを目指して自転車を走らせることに。
竹下橋から三本糸杉を見るいつもの景色ですが、台風で三本糸杉も寸詰まりに。
 

ここで引き返そうかと思いましたが、そうそう父が写真をやっていた頃、一番きれいなヒガンバナの道、今はどうなっているか見てみようと思い先へ進むことに。このあたりの田圃の南側、住宅街と接する田んぼが埋め立てられています。土を盛ったところもあり、今度来る頃には住宅が建っているかもしれません。あの道もがっかりだろうな〜と思いながら、逆の北側へまず行ってみることに。
あたりのあぜ道は草刈りがしてありヒガンバナも刈り取られているところが。残されている彼岸花にアゲハ蝶が蜜を吸いに。そこへもう一羽。二羽のアゲハ蝶が絡むように飛びながら彼岸花の上を上がっていきました。すぐ近くにある萩と紫苑の花にはツマグロヒョウモンが蜜を吸いに来ていました。



さて、父が大好きだった道、私がお彼岸の頃、ヒガンバナを写しに来るきっかけになった水路のヒガンバナはもう消えていました。
片側の田圃は埋め立てられて宅地になるようです。狭いあぜ道は平らに広げられて途中からは舗装されています。

高齢化と人口減で稲作を継いでいくことができなくなるのも無理のないこと。

時代とともに美しかった田園風景が失われてしまうのも仕方がありません。とても残念ですが。

こんな変化を見ないで逝った父は幸せだったかもしれません。
帰り、住宅街を抜けて団地の石垣のところに
白い彼岸花が咲いていました。
濃紫のムラサキシキブ
重なるように咲いていました。