昨日は台風一過、雲一つない素晴らしいお天気になりました。前日は日曜日なのに郵便局の書留便が届いていたらしくて、母のところに通知が2通も入っていました。母が自分で取りに行くというので私も父が99歳で上京するときに買い求めたアルミ製の軽いウォーキングステッキという座椅子にもなる押し車を持ってついていくことに。母の大腿骨骨折以来半年ぶりの初めての外出です。
このところ、朝夕の食事は私が作り我が家で、お昼だけ母が自分で用意して自宅で食べるということにしています。玄関のかぎの開け閉めや、牛乳の空き瓶を出してくれたり、徐々に自分でできることは…と行動範囲が広がっています。書留は本人でないと委任状を書かないといけなくてややこしいので、今朝は良いきっかけだからと出かける決心をしたようです。いつものように大きなショッピングカートを押していくというので、途中でしんどくなったら腰掛けるものが必要だからと私もついていくことにしました。
快晴の秋晴れの下、母の郵便局までのコースを先になったり後について行ったりしながら、腰かける場所の確認もしながらの帰り道、マンションのあたりで斜めお向かいさんにバッタリ。「お父さんも元気?」というご機嫌伺いに、父が亡くなったこと、家族葬で済ませたことをお話ししましたら、「それでいいのよ〜うちもそうするから」と。母もご挨拶ができて喜んでいました。帰りは警察署前から芦原公園内に入り、ベンチで一休み。その時の写真です。
さて、先週の金曜日も、素晴らしいお天気でした。夫は、この秋初めての秋晴れを待ってましたとばかり、7時には箕面の山へ出かけました。この日は、午後から二人でミュージカルの「ナイツ・テイル」を見ます。7月ごろ、神奈川の妹から梅田芸術劇場で堂本光一さんのミュージカルがあると薦められてチケットをお願いしていました。姪っ子が母のお見舞いに来た時にチケット代を渡して、その頃「シアターガイド8月号」を送ってくれました。この「ナイツ・テイル(騎士物語)」が特集されていて、少し引用しますと:
世界がミレニアムに沸いた2000年、二人の若者が鮮烈に帝国劇場デビューを飾った。「MILLENIUM SHOCK」で帝劇最年少座長(当時)を務め、通算上演回数1630回の偉業をなし、更新し続ける堂本光一。「エリザベート」のルドルフ役で一躍スターとなり、今やミュージカル界を牽引する存在の井上芳雄。彼らが同じく帝劇に縁のあるジョン・ケアードの演出のもと初共演を果たす。シェイクスピアの最後の戯曲をケアードが現代に通じる物語として書き下ろした新作で、演じるのは従兄弟同士の騎士、アーサイトとパラモンだ。海外のクリエーター陣との共同作業で生み出される、新たなミュージカルの扉が今、開く!
チケットを手に入れてからも、9月末ごろに母や父がどうなっているか全く予想がつかないままでした。何とかなると思いながら、まさか父が亡くなり葬儀も済ませて、この日を迎えるとは…分からないものです。妹は前日27日に見て、翌日お昼前、やってきました。母との夕飯を任せて、夫と私が6時開演に合わせて梅田へ出かけることに。夫も6時間歩いたといって1時ごろ山から戻り、シャワーを浴びて一休みして4時前に家を出ることに。妹にくれぐれも寝ないようにと注意されて。
梅田芸術劇場では以前、同じように妹にチケットを取ってもらって堂本光一座長公演「Endless SHOCK」を母と一緒に見ました。ブログで検索するともう5年前になります。(http://d.hatena.ne.jp/cangael/20130927/1380286645)
今回は夫にとっては初ミュージカル。私は、後から知ったことですが、ジョン・ケアード演出の「レ・ミゼラブル」を1992年「飛天」という劇場名だった時にここで見ています。今回も出演されている島田歌穂さんがエポニーヌ役に抜擢されてデビューされた時だったと思います。出がけに妹がオペラグラスを貸してくれましたが役に立ちました。S席で二階の最後列、舞台がきれいに見えますが、人物はどうしても豆粒なので、時々二人で交互にアップで表情を確認して楽しめました。
(日本の鎧のような二人の衣装↑と手錠を打ち鳴らしての牢屋のシーンは面白い!)
さすが井上さんは美声。光一さん(妹の呼び方に倣って)は歌唱が堂々としてきました。二人の音がきれいに重なった時の歌声は何とも言えず気持ちが良い。演技は両者申し分なし、言葉も明瞭、光一さんのダンスはもう文句なし。いとこ同士の愛憎半ばする二人の関係と女性たちとの対比。騎士という生き方に縛られた二人の意地の張り合いと、それを愚かなことと笑う女たちの生き方。古くて新しい男と女の問題かも…と思わせてくれます。随所にシェイクスピアらしさもうかがえる筋書き。(元のお話はシェイクスピアとジョン・フレッチャー共作の「二人の貴公子」、その大元はチョーサーの「カンタベリー物語」の中の「騎士物語」)
舞台装置や衣装、その色彩、ダンス、音楽、和楽器の取り入れ方、どれをとっても世界一流の素晴らしさ。鹿のダンスの見事なこと、馬のしっぽを手にしただけで馬上疾駆するダンスシーンなど、シンプルで効果的な舞台装置と工夫の数々とダンサーたちのテクニックが相まって楽しい。暗転のない流れるような舞台が、前・後半それぞれ1時間20分途切れることがありません。複雑な物語が収束に向かってハッピーエンドとなるのも嬉しい。何よりも、隣の夫が寝ないで集中して舞台を楽しんでくれたのが嬉しかったです。久しぶりに楽しい舞台鑑賞となりました。
9時10分ごろ拍手が終わって劇場を後に。家に着いたのが10時過ぎ。隣の玄関に灯りついているのでオカシイと思って隣へ行くと、妹と母がいて「二人の帰りを待って感想を聞くまで起きてるとお母さんが言うの〜」と困ったように妹が。「どうやった?」と母が聞くので「良かったよ〜楽しかったよ〜」と妹のおすすめだった大判で重たいプログラムを取りに戻って見せることに。「立派ね〜写真集みたい、また楽しめていいね〜」と母も。
寄り道をしないで真っ直ぐ帰ってきてよかった〜でした。観劇前にカレーライスを夫に付き合わさせたので、茶屋町の焼き鳥でも居酒屋でも付き合うわよと言ってたのです。寝ずに待っててくれた母に早く寝るように言って、妹を誘って我が家で妹のお土産のワインを開けて乾杯です。父の写真に向かって3人で乾杯。そして、葬儀の時の果物のお飾りだったパイナップルを切って、生ハムと合わせて食べることに。いい歌とお芝居を見て話に花が咲きました。
三人の女性、島田歌穂さんのほかに元宝塚の男役スターだったという音月桂さん。情感豊かなエミーリアでとても美しい歌声。
そして牢番の娘を演じたのは上白石萌音さん。妹の萌歌さんは、綾瀬はるかさんの「義母と娘のブルース」で、高校生になった娘を好演でしたが、萌音さんはそのお姉さんです。すでに「舞子はレディ」でミュージカル映画の主演を果たしています。この映画も楽しい映画でした。
今回も牢番の娘で二人の騎士の一人を愛してしまうという大事な役を透明感のある歌声で熱演でした。(舞台の写真は全部プログラムの写真をカメラで)