BTSが歌う主題歌「Your eyes tell」と「反日」と「正義中毒」

◎10月23日公開の映画「きみの瞳が問いかけている」がアメリカ最大手のエンタメ雑誌で紹介されていますというツィート。これは映画の主題歌をBTSが書き下ろしで作曲して歌っていることから掲載されたもので、「世界のBTS」の実力の凄さですね: 

映画『きみの瞳が問いかけている』公式

@kiminome_movie
アメリカ最大手のエンタメ雑誌"Variety"にて #BTS が #きみのめ の主題歌を手掛けたことが紹介されています#吉高由里子#横浜流星#三木孝浩

BTS Score Title Song for Japanese Film ‘Your Eyes Tell’ (EXCLUSIVE)
https://
variety.com/2020/film/asia
/bts-title-song-japanese-movie-your-eyes-tell-1234707016/
… @varietyより

🔲韓国映画のリメイクですので、韓国の音楽グループが日本語で主題歌を歌うのは自然かなと思っていましたが、こんなツィートがチラホラ:

RT @MagnoliaAliceF: 「BTSはやめて!」吉高由里子×横浜流星の映画主題歌がネットで大荒れ! やっぱり嫌われてるじゃん、被爆者侮辱グループのBTS。 二度と日本のテレビに出て欲しくないのに朝のニュースで取り上げる日本のメディアはいい加減にして欲しい。 h…

🔲↑のツィートがしつこくリツィートされているぐらいで、大勢はBTS歓迎でしたが、2,3のツィートを取り上げたこんな記事になっています。

BTSの主題歌起用が発表されると、一部ネットでは『何で原爆TシャツBTSが主題歌なの?』『映画はいいけど、反日少年団の歌は聞きたくねぇ』・・・」

引用元:

◎そういえば、何年か前、原爆Tシャツ問題でミュージックステーションの出演が取り止めになったという騒ぎがありました。<2018年11月9日のMステ>

そこで、原爆Tシャツを調べてみることに。

これはかなり冷静に書かれている記事ですが、それでも少し引っかかる箇所もあります。私が引っかかった個所をアンダーラインで示します:

f:id:cangael:20200717103630p:plain

f:id:cangael:20200717103643j:plain

Tシャツに描かれているのは原爆が投下されキノコ雲があがっている写真日本の統治から解放され万歳をしている韓国人の写真。


「patriotism ourhistory liberation korea 」
「我々の愛国心で歴史的開放をした韓国」


このような文字や写真がプリントされたTシャツになっています。
これは光復節に由来するデザインといわれています。
光復節とは韓国の祝日の一つで、8月15日に日本の統治から解放された事を記念した祝日になります。
光復は奪われた権利、主権を回復を意味しており、同時に民族分断という新たな受難の始まりであり、分断時代と呼ばれる原点としての意味も持つそうです。

【デザイナーは何を意図していた?】

私たちから見ると、日本に原発が落ちて喜ぶ韓国人という絵図に見えますよね。

ただ、こちらは原発に喜んでいるというよりは、植民地からの解放による喜びの写真です。

こちらを制作したのはLJカンパニーの代表であるイ・グァンジェさんという方だそうです。

彼はこの騒動を受けて、「反日感情と日本の報復のために作成されたデザインではない」と説明。

ブランドがスタートした当時はストリートファッションの流行から、ファッションで歴史に興味を持ってほしいという思いから制作したと語っています。

原爆に関しては日本を嘲笑するわけではなく、原爆投下により日本が無条件降伏し、それにより韓国が解放されたという歴史的な事実の順序を表現しているとのことです。

国の解放=日本への原爆投下がきっかけ

これを表現したかったそうですが、なぜ韓国の解放だけを喜ぶTシャツにならず日本の原爆をそこに掲載しなければいけなかったのかはわかりません。(↑「国の解放の切っ掛け」だと受け取ったから」by蛙)

  🔲もう一つの記事を紹介です。こちらはもっと詳しく書かれていますが、記事の中の「反日」の決めつけ方が私にはとても乱暴に思えます。最近はこんな言い方が流行っていて普通なのかもしれませんが、戦後民主主義教育を受けた私からすると異様な決めつけに見えます。タイトルからし反日が入っていますね。

◎Tシャツを制作したLJカンパニーの「ourhistory」というのはブランド名で、その「ourhistory」は公式サイトで「韓国の植民地時代からの解放は日本の降伏によってもたらされた、韓国の光復をTシャツで表現してみました」という文章があり、そのタグには「”過去を忘れた民族に将来はない””として愛国心を込めて歴史をファッションに再解釈しました。」と書かれています。

「イ・グァンジェ代表は『反日感情を助長する意図はない』と言っていますが、反日ととらえられても仕方がない(太字そのまま文面かもしれません」と。

韓国側が自国の歴史を自分たちの解釈で伝えようとするのが、なぜ、どこが、「反日と捉えられても仕方がない」と言えるのかがわかりません。

◎韓国が日本について褒めなければ「反日」というのが普通になっているよう気がしてきました。嫌韓本があれだけ書店に並んでてヘイトスピーチがまかり通ると”普通に”こうなるのでしょうか。

最初に紹介したツィートに「被爆者侮辱グループのBTS]と書かれていますが、これも過剰な言葉ですね。じゃ、このツィートを書いた人は原爆被爆者の核廃絶という真の願いを理解されているでしょうか。日本政府がことごとく踏みにじってきていることをどんなふうに思っておられるでしょうか。

◎次の記事を読んでみると、韓国でも、BTSが「きみの瞳が問いかけている」の主題歌を日本語で作詞して歌うことに対して『売国行為』だといって「反日」の立場から反対している人たちがいます。

なぜ反対するかの理由を全部読んでみると、筋の通っている反対もあるんですね。というのは、BTSは世界でも英語ではなくて韓国語で歌って英語の正規アルバムを発売しないで今の地位を築いてきたのだそうです。ところが、日本でだけは日本語の歌詞で構成されたアルバムを発売している。

韓国人の一部は、BTSが日本語で歌を歌うことに対して遺憾を表明してきた。KポップがJポップを抑えてアジアの大衆歌謡の象徴にならなければならない重要な時期に、その代表走者であるBTSが日本語の歌を歌うのは正当ではないというわけだ。

国民が政府に対して要望を書き込める青瓦台国民請願掲示板にもこの話題は登場している。たとえば「BTSは日本語アルバム発売を中断しなければならない」という請願は、大いに注目を集めた。請願者当人曰く、「所属事務所は日本語バージョンを要求する日本エージェンシーに振り回されて日本語アルバムを出している」とし「Kポップが日本語バージョンに編集されればその意味が歪曲され、日本に文化的屈従をするようになる」と強調。

 別の請願人は「日本語のアルバムには本当に怒りを感じる。日本語のアルバムはKポップのアルバムではなく、Jポップのアルバム。これが親日売国でないなら何だというのか」とし、日本語のアルバムを出す芸能事務所への政府支援を禁止することを主張した

◎「なんで日本だけ特別扱いして日本語で歌うのか?」この記事ではとても面白い理由が書かれています。それは、『日本はCDの売上げが世界1だから』です。

実際、国際アルバム産業協会(IFPI)の調査によると、2016年の日本の音楽市場規模は27億4590万ドル(約2949億円)で、米国に次ぐ世界2位。3億3010万ドル(約354億円)で8位の韓国との差は歴然。地理的に近く、似たような大衆文化を持つ日本市場で、より高い収益を生み出すためには日本語による現地化戦略は欠かせないというわけだ。
 韓国や米国などほとんどの国で絶えてしまったCDアルバムを購入する文化」は日本にまだ残っており実際、日本のCD販売数は世界1位を記録している。所蔵価値の高い限定版CDであればあるほど販売数が見込めるし、握手会のようなイベントを通じてさらにCD販売数のアップにつながる。

←主題歌を作曲したジョングクさん

◎上の記事は丁寧に書かれていて「反日」という言葉さえなければとても良い記事です。この『反日』という言葉の使い方ですが、ツィッターなどでもかなり安易で、少しでも日本にケチをつけるような言動があると反射的に「反日」と言ってしまう程度じゃないか、どうもムードに乗って「反日」という言葉を使っている自分は愛国者だといい気持ちになってるだけじゃないかと後期高齢者の私から見るとそう思えてしまいます。若い人たちが本当に相手を「反日」と決めつけるのなら、理由をきちんと言って相手と議論し合って、「反日」と「嫌韓」を互いに克服して新しい日韓関係を築いてほしいと思います。(友達でも夫婦でも隣国同士でも「仲良きことは美しき哉」です。誰の言葉?って、武者小路実篤さんの言葉ですけど、今の若い人は知らないですね)

🔲さて、ここで思い出したのが脳科学者・中野信子さんの「正義中毒」という言葉です。先日テレビでお話されていたのがとても分かり易かったので探して見ました。「正義中毒」、私も気をつけなきゃ:

・ 「間違ったことが許せない」「間違った人を徹底的に罰しなければならない」「私は正しく、相手が間違っているのだから、どんなひどい言葉をぶつけても構わない」そんな風に思うことは誰にもあるかもしれません。
しかし、それは「正義中毒」であると脳科学者の中野信子さんは言います。

・ 日本人は、摩擦を恐れるあまり自分の主張を控え、集団の和を乱すことを極力回避する傾向の強い人たち。災害の多さという地理的要因と閉鎖的環境により、日本では個人主義的な性質が強い集団よりも集団主義的要素が強い集団が生き延びやすかった背景があります。

その負の側面として、異質なものを冷遇し、集団内に置いておけなくなった人間を排除する現象、あるいは他の集団に対する攻撃性が出てしまいやすい傾向にあります。


–−議論ができない日本人


集団の意思に従いがちな日本では、基本的に議論が行われるケースが少なく、多くの人が議論下手か、議論を避けるようになっています。日本人が議論だと思ってしていることは、対立する二つの意見を吟味・検討してより良い結果を導くというものなどではなくなぜかたいがい人格攻撃になっています。特に「正義中毒」の人々は、相手の主張のいいところを取り入れるということができません。結局、正義が一つしかないという前提があるために、彼らの言説は、議論に昇華する余地を持たないのです。

 

ネット社会は確証バイアスを増長させる

SNSでは似た者同士で繋がることが多く、自分と同じような思考をするグループから、自分が欲している情報だけを取り入れ、受け取るようになります。日々、それを繰り返しているといつの間にか自分は正しい、自分の主義こそが正義だ、これが世の中の真実だと考えるように仕向けられてしまいます。

 

🔲一つおまけにこちらも: 

bungeishunju.com