◎2日のブログ(「インタビュー『原発避難者は棄民か』」朝日新聞(7月28日) - 四丁目でCan蛙~日々是好日~ (hatenablog.com))のタイトルに『棄民』という言葉が使われています。使われていた箇所をとり出してみます:
「復興庁の発表値は各都道府県の報告を取りまとめるだけです。福島県で事故直後の避難者数と帰還した人数を比べると、5万人以上が未だ避難中という計算もあります。行政に認識されない限り、支援もケアも受けられない。国による棄民ですよ」
――――棄民ですか。辞書には「国家の保護から切り離された人々」とあります。
「だってそうですよ。国策で進められてきた原発が事故を起こし、それから国民の身をどう守るかが最大の問題のはずです。しかし現実には、身の安全が保証されない線量を基準に住めと言われる。子を守りたい一心だった母子避難者ですら放置されている」
🔲国家に託されている自国民の健康と命を守る役割を果たさずに、まさに「棄てる」行為です。今まで普通に守られてきたルール(基準)を勝手に変えて国家のなすべきことをしないで国民を見捨てることです。既に、福島原発事故の際には放射線量1ミリシーベルト以下だったのが、今ではその20倍の20ミリシーベルトまで許容され、その中で子どもも生活するようにという国の言い分が裁判でも認められました。この時の記事を最後に引用します。
それと同じように、今、逼迫する医療からの中止の声を無視して強行されている五輪で増加したコロナ陽性患者に対して、これまた今まで入院出来ていた患者を「自宅療養」という名で「自宅放置(放棄)」するという。それも中等症患者レベルまで。早く治療すれば軽症で治まるものを放置して中等症になることもあるでしょうし、肺炎を起こしている中等症患者を酸素投与も出来ない環境に置いて重症化すれば、そのまま医療を受けられずに自宅で亡くなってしまうケースも増えるでしょう。病気になっても見棄てられる。これも国家が引き受けている役割放棄による『棄民』政策と言えます:
🔲病院にたどり着けない病人は、ニュース映像ではカメラが自宅まで押しかけない限り、確かに見えない。世間では見えない存在です:
🔲大阪は先に失敗しているだけあって、自宅放置が死に至るケースを避けるためにホテルなどを利用する宿泊療養を進めています。なぜ病床をふやさないのか:
🔲政府が国民を「見棄てる」日本。実は戦争中にもありました:
🔲🔲🔲それでは最後に棄民政策の最たるもの20ミリシーベルトについての判決について「shuueiのメモ」さんが7月14日に取り上げておられた記事です:
南相馬避難20ミリシーベルト撤回訴訟支援の会の事務局/FoE Japanの満田さんからの報告 - shuueiのメモ (hatenablog.com)
南相馬避難20ミリシーベルト撤回訴訟支援の会の事務局/FoE Japanの満田さんからの報告
2021/7/12 東京地裁判決
この国の司法のあり方に打ちのめされる判決となりました。憤りを禁じえません。
わずか12秒。主文を読み上げるだけで逃げるように退室した鎌野真敬裁判長は、6年間も闘い続け、5時間もの道のりを18回も通った原告の顔を直視した上で、判決理由を述べることができなかったのでしょう。
司法は、20ミリシーベルトの不当性についても、解除の違法性についても判断を逃げたといえるでしょう。腐りきっています。
東京地裁の鎌野真敬裁判長は、特定避難勧奨地点の指定解除について「年間の被ばく線量が20ミリシーベルトの基準を下回ることが確実だという情報を提供するもので、帰還を強制したとはいえない」として、取り消す対象にはならないと判断し、住民側の訴えを退けました。
特定避難勧奨地点の指定にも解除にも処分性(行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為)はないとし、「単なる情報提供」としたのです。また、解除にあたって、原告たちが被った不利益もないとしました。許しがたい判決です。
被告である国がこの主張をしたときも驚きましたが、まさかそんなわけのわからない主張は通らないと思っていました。司法はそれをそのままなぞった判決を出したました。以下のような主要論点はすべてスルーしたといえます。
・解除に伴い、一定期間後ではあったが、避難勧奨に伴う公的な支援がすべて打ち切られたこと。とりわけ、住宅提供が打ち切られ、住民は帰還を余儀なくされたこと。
・ICRPが勧告している公衆の被ばく限度としての年1ミリシーベルトを反映して現在の国の被ばく防護の規制は構築されていること(例:原発の敷地境界線上のti年1ミリシーベルトを守る義務を事業者にかしていることなど)
・ICRP勧告では、事故後の現存時被ばく状況を1~20ミリシーベルトとして、その下方から参考レベルを選び、それを1ミリシーベルトに向けて下げるべきとしている。実際は、避難指示の指定も解除も20ミリシーベルトであり、ICRP勧告ですら守られなかったこと
・ICRP勧告や原子力安全委員会の文書、原子力災害対策本部の避難指示解除の用件で求められていた「住民との協議」がまったく行われず、住民の反対を無視して解除されたこと
・解除の空間線量率(3.8マイクロシーベルト/時)の計算式は、屋内を屋外の0.4であるとして計算されているが、実際には屋内屋外の差は平均0.7くらいで、実際は屋内の方が屋外よりも高い例もあったこと
こちら判決および判決要旨です。
http://minamisouma.blogspot.com/p/blog-page_89.html
本当に何のために司法が存在するのか絶望的な気持になります。
しかし、国のあまりといえばあまりな20ミリシーベルト基準に、真っ向から立ち向かった原告のみなさんの勇気は決して無駄になったわけではありません。
この裁判で多くのことが明らかになりました。心から感謝したいと思います。
2014年12月、政府は、南相馬市の特定避難勧奨地点について、年間積算被ばく線量が20ミリシーベルトを下回ることが確実になったとしてすべて解除し、その後順次支援策や賠償を打ち切りました。
これに対して、地点に指定されていた世帯や近隣の世帯合計808名が、解除の取消しなどを求めて、2015年4月および6月に、国(原子力災害対策現地本部長)を相手取って提訴しました。
裁判では、年間20ミリシーベルトという基準による特定避難勧奨地点の解除の是非が争われました。
原告は、年間20ミリシーベルト基準での特定避難勧奨地点の解除は、次の3点から違法であると主張し、その取消し等を求めています。
1)公衆の被ばく限度が年間1ミリシーベルトを超えないことを確保するべき国の義務に反する。
2)政府が放射線防護の基準として採用している国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に反する。
3)政府が事前に定めた解除の手続(新たな防護措置の実施計画の策定、住民等の意思決定への関与体制の確保)を経ることがないまま解除を強行した。