紅葉狩り(2)と「牛が開いた山に昼夜放牧ー飼料高騰にも強い山地酪農(朝日新聞)」

瀧安寺の広場から向かいの山の紅葉を見る

谷あいには杉の木立の間に赤と白のサザンカが咲いています

唐人戻り岩から橋を渡って川の右側の道を滝へと向かう。

滝に至る道の手前の坂道を上ると一目千本のカエデの林が続く

透過光が美しい

◎W杯サッカー、昨日のコスタリカ戦は日本はパスがシュートに繋がらなくて良いところなし。前日だったかコスタリカの紹介番組の中でコスタリカ在住の日本人がインタビューに答えて「どちらも楽しんでほしい、勝負は時の運だから」と。スペイン戦、勝っても負けても楽しんでほしいですね。戦争でサッカーどころでない国もある世界です。

◎『山地(やまち)酪農』という言葉を初めて聞きました。読んでみると牛を山地に放牧して牛乳を得る、自然農法に似た酪農なんですね。人工飼料に頼らない分、経費が掛からないし、それ以上に循環型の酪農なので、排せつ物の処理などでも手間いらずの良いことずくめ。

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@KazuhiroSoda
牛が開いた山に昼夜放牧 飼料高騰にも強い山地酪農、広がらぬ理由は:朝日新聞デジタル
 ウクライナ情勢や円安などの影響で、国内の多くの酪農家は経営難に陥っている。岩手県岩泉町で、山林を開いた牧場で昼夜放牧する「山地(やまち)酪農」を実践し、今
夏、牧場長を引退した中洞正さんは、「これを機に、あるべき酪農の姿に立ち返るべきだ」と説く。これまでの歩みと酪農業界の課題と展望を聞いた。

(「朝日新聞デジタル」からコピーです)

 ――輸入飼料が高騰しています。 

国際紛争や気象異変があるたびに、こういう事態になります。今回は、全国の酪農団体で構成する中央酪農会議(東京)が6月に実施した調査で、92・4%の酪農家が経営に困難を感じ、55・8%がこの環境が続けば経営が続けられないと答えています。政府はやっと今秋から飼料代の補塡(ほてん)などの対策を始めましたが、対症療法に過ぎません」

「酪農家の戸数は、約1万3千戸。60年前の30分の1です。一方で、1960年には1戸平均2頭しか飼っていませんでしたが、現在は平均100頭を超しました。多くの牛を密な場所で飼い、栄養価が高い輸入の配合飼料を食べさせたり、乳牛を改良したりして乳量を増やして生産量を確保し、乳価を抑えてきました」

 「農協や商社、大手乳業の関連会社は飼料を輸入して酪農家に売ることで利益を得ています。飼料の主原料のトウモロコシを輸出するアメリカなどがくしゃみをすると日本の酪農家が風邪を引く。この構図が変わらない限り、根本的な解決はできないのです」

 ――山地酪農は、その影響がないのですか。

 「私が実践してきた『中洞牧場』では、年中昼夜放牧して、自然に生える野シバを主に食べ、栄養が不足する冬場は、牧草をサイロ内で乳酸発酵させて貯蔵しておいた『サイレージ』を食べさせます牛は寒さに強く、寒い岩手の冬でも問題ありませんでした」

 「牛を森林に連れて行くと、急斜面を上って下草を食べます。習性として等高線の上を爪で山を削りながら歩き、後の牛も続いて道になります。草が食べつくされた後に木を切り倒すと、野シバが生えます。そうやって中洞牧場はどんどん広がっていきました」

 「牛舎で飼うと一番やっかいなのは、排泄(はいせつ)物の掃除や処理です。中洞牧場では昼も夜も放牧しているので、排泄物は土が自然に分解してくれます

「先月、北海道を車で巡りました。あちこちの牧場で大きなタンクにためた汚物の混合物を採草地へまいていました。冬になると雪でまけなくなるので、まだ発酵して堆肥(たいひ)化していないのに今のうちにまかざるを得ないのです。臭いましたが、中洞牧場しか知らない妻は何の臭いかわかりませんでした。費用もかかります。北関東で数百頭を牛舎で飼っている酪農家に聞いたら、牛舎の建設費用の半分は、排泄物の処理設備にかかったそうです

 ――なぜ、山地酪農を始めたのですか。

 「私の家は農家でしたが、子どもの頃、牛を飼っていました。当時は牛乳が高級品でお金になったのでどの農家も何頭か飼っていました。酪農家を目指して東京農大に入り、最初は生産性を追求する勉強ばかりしていました

「しかし、2年生の時、山地酪農の記録映画を見て考えが変わりました。国土の3分の2を占める森林を活用し、野シバを食べた牛から乳をしぼり、排泄物を栄養に野シバが生えるという循環型の酪農を、提唱者の故・猶原恭爾(なおはらきょうじ)博士は奨励しました。日本の風土に合っていると思い、研究会に入り、のめり込みました」

🔲23日の朝日のオピニオン頁からつづき:

オピニオン&フォーラム                 【インタビュー】

  酪農 今のままでいいの?   

    山で昼夜放牧なら 飼料高騰にも強い

    壁は乳脂肪分3.5%

     山地酪農家 中洞(なかほら)正(ただし)さん

      

「帰郷後、試しに山地を5ヘクタール借りて数頭の牛を放してみました。牛はジャングルのようだった下草をみるみる食べつくし、地面はきれいな草原に変わっていきました。牛の毛並みもつやつやして健康そのものでした」

 「山の保護にもなります。2016年、東北地方を直撃した台風では、町内で山崩れが起きましたが、野シバが張った中洞牧場の山は崩れませんでした

 「最近『アニマルウェルフェア(動物の福祉)』という言葉が知られるようになりましたが、山地…(写真に続く)

―――中洞牧場の牧場長を引退されましたが、どうやって山地酪農を伝えていくつもりですか。

 「遠野物語で知られる岩手県遠野市で、山地酪農の学校を開く構想を持っています」

 「1970年代、北上山系の広域農業開発事業という国の政策などで、岩手には多くの牧場ができました。しかし、牛肉の輸入自由化や乳価の値下がりで入植時の借金を返せずに離農し、放置されている場所がたくさんあります。遠野市だけでも2千ヘクタールほどあるそうです。その一部で牛を放って山地酪農を学んでもらい、残りの土地に入植してもらうのです。国の政策の失敗で捨てられた場所を再生させる試みです」

 「一緒にやりたいという若者が既に集まりつつあります。国の地域おこし協力台の制度を使い、給料をもらいながら研修することもできます。市長も大賛成で来年度には着手できると思います。全国の山地の振興や移住政策のモデルケースになるはずです」

 「健全な産業が健全な国民を生み、健全な国家を形成する。私はそう思っています」