映画「教育と愛国」を観た日

◎先週、1日の土曜日、夫が朝から山へ出かけるというので私はかねて気になっていた映画「教育と愛国」を見に行くつもりで、十三にある第七藝術劇場のチケットのオンライン予約を済ませていました。

当日、朝、夫が自分でサンドイッチを作って9時過ぎ家を出ました。私は午前中冬物の片づけ家事を済ませて夫が私の分も作ってくれていたサンドイッチを食べて、1時過ぎ家を出ました。桜並木の桜が春の日差しを浴びて輝いていました。

映画「教育と愛国」は昨年、22年の5月に公開され、七芸では12月までのロングランだったそうです。今年4月からの公開は、数々の受賞を果たしてのアンコール上映ということでした。6階でエレベーターを降りるとすぐ迎えてくれるポスターは監督の斉加尚代さんのサイン入り。

壁にはズラリ、取り上げられた新聞や雑誌の切り抜き写真が張り出されていました。

映画は丹念な記録で教科書から「従軍慰安婦」や「強制連行」という言葉が使えなくなる過程を追っていきます。日本書籍の教科書が採用されなくなり会社は倒産に追い込まれます。「新しい教科書をつくる会」の育鵬社の教科書が採用され始め、偏った歴史観を持った人たちが推し進める教育現場への政治の介入が、安倍首相の誕生では教育基本法に「愛国心」が盛り込まれ、一段と強化されます。

もっとも驚いたのは上の写真の左から3つ目の人物。東京大学歴史学者だという伊藤隆という人です。壁に貼ってあった22年5月19日の朝日新聞が「委縮するメディア」と題して「オピニオン&フォーラム」で斉加尚代ディレクターを取り上げた記事の中から引用です。このやりとりは映画でも勿論紹介されていて、私は、乱暴な断定的な言い切り方に驚くとともに、自民党の考えの支柱になっているのがこの人かと思いました:

「新しい教科書をつくる会」系の育鵬社で歴史教科書の代表執筆者を務める歴史学者伊藤隆さんに取材。

育鵬社の教科書が目指すものは?」「ちゃんとした日本人をつくること」

「ちゃんとしたですか?」「左翼ではない日本人」

「歴史から何を学んだらよいか?」「学ぶ必要はない」

育鵬社の教科書は「歴史を学ぶ」のではなく、歴史を通じて一部の政治家にとって歓迎すべき「道徳」を学ばせるのを意図しているのではないか

斉加さんは、またこう書いています。「教科書会社に取材を申し込んだがほとんどの会社で断られ」て、応じてくれたのがこの伊藤氏。最後に「立場は違うけれどまた会いましょう」と言われたとも。映画では、この後「戦争になぜ負けたのか?」という質問に「弱かったから」と伊藤氏が答えています。歴史学者の答え方として????でした。

今の自民党憲法を変えたい人たちの言い方は、この伊藤氏の自分以外の意見は『左翼』とレッテルを貼って差別し、有無を言わさず『自虐史観』として圧殺して行く、全くこの伊藤氏の言い方とソックリだと思いました。

壁に貼ってあった記事写真の中から斎藤美奈子氏の記事を書き移してみます。この日、上映終了後、斉加尚代さんご本人のトークショーがありました。そこで「関西だけでなく全国に伝えたかった」ので映画にしたと仰っていました。(色太文字by蛙)

東京新聞 本音のコラム

    大阪からの報告  斎藤美奈子

 

 3月20日の本欄で前川喜平さんも紹介していたドキュメンタリー映画「教育と愛国」はゾッとする場面満載だ。

 2012年2月、大阪で開かれたシンポジウム「(教育に)政治家がタッチしてはいけなのかといえば、そんなことはないわけですよ。当たり前じゃないですか」と語る安倍晋三氏。同席しているのは当時大阪府知事に就任したばかりだった維新の会の松井一郎氏だ。大阪で、維新の会と結託する形で、教育への政治介入が先行していたことにショックを受ける。

 在阪の毎日放送MBS)が製作した番組「(映像17)教育と愛国~教科書でいま何が起きているか~」に最新の取材を加えた衝撃作。監督の斉加尚代さんは20年以上教育現場を取材してきたMBSのディレクターである。余談だが、18年公開のドキュメンタリー映画沖縄スパイ戦史」を監督した三上智恵さんも以前MBSの社員だった。斉加さんとは同期の均等法第一世代。二人は今も「唯一無二の戦友」という。(松本創「地方メディアの逆襲」)。

 在京のテレビ局が軒並み権力に屈したように見える中、満を持して発せられた大阪発の警告である。劇場公開は13日から。教育の現状を知るために多くの方に見てもらいたい。(文芸評論家)

                      ー 2022・5・4 ー 

◎質疑応答に入ったところで一人の男性が手を挙げて発言、2人の子どものお父さんで上の子は小学4年生だそうです。子供たちの将来を考えるとこのまま日本に居て本当に良いのかと思うと云うようなことも言っておられました。子育て世代はそこまで考えるんだと。夕食の支度が気になって5時に会場を抜けてきましたが大変な時代になってきていることをひしひしと感じます。政治家が教育現場に介入して、教科書の内容を政権の都合の良い内容に書き換えさせる。もうすでに戦前ではないか…と思います。