上野千鶴子さん「男並みの強さより弱者の尊重を」(朝日新聞)

◎11月に入って秋の深まりを感じます。アジサイの花もドライフラワー化。

柏葉アジサイの葉も色づき始めました。

昨日付の朝日新聞「オピニオン」頁の「交論」は「初の女性首相どう映った」と題して高市早苗氏が首相に指名され日本初の女性首相が誕生しましたが、その受け止め方についてでした。

紙面左側は村井良太さんという政治学者ですが、上野千鶴子さんの記事がとても分かりやすく読むとスッキリして面白かったので取り上げてみます。(色太字下線by蛙)

男並みの強さより弱者の尊重を

―――長くフェミニズムを牽引してこられましたね。「フェミニストなら初の女性首相誕生を喜ぶべきだ」との声をどう見ますか。

フェミニズムを戯画化する意図で外野がそう言いそうですね。しかし、それはフェミニズムをあまりに単純化しています」

―――高市さんは今回、政界でトップまで上り詰めました。フェミニズムは、そもそも女性が世間の序列を上がっていくことを目指す思想だったのでしょうか。

「世間の序列を作ったのは男性社会ですから、そこに参入することが目的とは言えません」

フェミニズムは、女が男のようにふるまいたいという思想でも弱者が強者になりたいという思想でもなく弱者が弱者のままで尊重される社会を求める思想です。均等法成立の時に抱いた直観は、当たっていました。」

1985年に出来た男女雇用機会均等法は、家事や子育てを女に押し付けてきた男の働き方を少しも変えることなく女に『男並み』の働きを強いる法律でした。)

―――高市政権の誕生が予感されていた10月上旬、「初の情勢首相が誕生するかもしれない、と聞いてもうれしくない」とSNSに投稿されましたね。その趣旨は?

「初の女性○○が事件になる時代は、とっくに終わりました。女なら誰でもいいという時代では、もうありません。」

「例えば女性知事は00年以降これまでに全国で7人誕生しており、首都にも初の女性東京都知事(16年就任)がいます。それ等の中にはフェミニストが支持する知事もいたし、しない知事もいました」

―――性別で評価するのではなく、個々人の政策や姿勢を見て政治化を評価すべきだということですか。

「その通りです。もし選択的夫婦別姓制度を推進しようとする女性政治リーダーが誕生したとしたら、フェミニストはもっと歓迎したでしょう。それは、弱い立場や劣位に置かれがちな女の声に、積極的に耳を傾ける政治だからです」

―――高市さんの政策策と姿勢は、どうでしょう

選択的夫婦別姓に反対しており、政策的には、ジェンダー平等への流れをせき止めようとした安倍晋三政権のコピーのような感じですフェミニストが歓迎する理由はありません。」

―――とはいえ、国政のトップに初めて女性が就任したこと、それ自体にはやはり意味があるのではないでしょうか。

世界にはすでに様々な女性政治リーダーがいますが、彼女らは女性だから』という理由で選ばれたのではありません。また英国初の女性首相はマーガレット・サッチャー(1979年就任)でしたが、私の知る限り、英国のフェミニストサッチャー政権誕生を歓迎した人はいません」

―――高市首相はサッチャー首相を「憧れの人」だと公言しています。

サッチャー首相は市場原理主義的なネオリベラリズム改革をした保守革命の推進者です。優勝劣敗の原則に基づく弱者切り捨ての論理で、福祉を縮小しました。また、南半球にまで軍を送ってアルゼンチンとフォークランド紛争を闘った武断政治でも知られます。つまり、強さを追求した政治家でした」

―――サッチャー氏は「鉄の女」と呼ばれていたことでも知られていますね。

社会学の理論によれば、少数派が多数派集団に食い込んでいこうとするとき、多数派よりも多数派らしくなる傾向があります過剰同一化と呼びます」

サッチャー首相に対しても当時、フェミニストから、男以上に男らしく振舞う傾向が指摘されていました。この理論は、高市首相を含めた今の自民党の女性政治家の多くに当てはまると私は見ています」

男並みになろうとか強者になろうとしなくても、女が尊重される。そんな社会をつくる政治の誕生を期待しています」

                       (聞き手 編集委員塩倉裕)