外から見た9条・伊勢崎賢治

先週のことですが、米寿になる母が携帯デビューしました。高齢者向けのらくらくホーンとかいうのですが、周りが持ってもらおうと勝手に申し込みました。これが「遊びが増えた」となかなか前向きでお気に入りです。目に障害のある方たちが、音声サービスを利用して世界が広がったという利用者の声を本にしたものが店頭に置いてあって、なるほど携帯の機能は障害者にはとってもいいのだということがわかりました。母も少し耳が遠いのですが、ボリュームを上げたケイタイは普通の電話より聞きやすいようです。ところで、この母のケイタイの使用感想を聞いていると新しい機械への驚きと戸惑いが我がことのようで面白いです。

先日、「前回のブログを読んでコメントを入れたが入っていないので」と言われ、「どんな?」と尋ねたら、「前々回の二つの新聞記事からについて色々書いて最後にせめて無線ランはカタカナで書かないでほしい」と書いたとのこと。「え?そうなの? ランってどう書くの?」「RAN]「RUNじゃないの? ランニングのランじゃないの?」「ーカルリアットワークのこと」と教えてもらいました。そういう知識はどうやって入ってくるのかしら?と不思議でした。母が操作を覚えて曰く「何でこんなことが出来るの?」というのとまったく同じ、理屈も言葉も分らないでただ使い方に慣れるのみです…新しいキカイは!
何でコメントが入らないのかはこちらでは分りかねますので、懲りずに何度か挑戦お願いします。そのうち入ってくれることもあるかと・・・この程度しか言えなくてごめんなさい

25日、北朝鮮が2度目の核実験を強行。後継者問題がなかなか片付かず、この国の時代錯誤な体制と考え方が世界と日本の脅威でありつづけています。国境を接した中露の対応も今回はどうなるでしょう。韓国も前大統領の自殺、北朝鮮対応方針の転換と不安定。北朝鮮悪の枢軸の一つと呼んだブッシュとは違うオバマ大統領が試されてもいます。こういう事態での平和的な解決のために日本はどうすべきなのかを考えた外交をしてほしい。

さて、つづきの本題に入ります。
お玉さんのブログで芦屋の9条の会の集まりに伊勢崎氏が講演することになって参加したという話があり、ソマリアの件で云々とあって思い出しました。マガジン9条の伊勢崎氏のコーナーでソマリアの海賊退治に自衛隊を派遣することが決まり、「こんな事を9条を持っている国が、国民が易々と許すようでは、9条が泣く、我が国、わが国民には9条は勿体ない」と嘆いている記事でした。これは私が以前思ったことと全く同じでした。私は上の息子が小林よしのりの「戦争論」を持っていたので、話をして、ショックをうけました。その頃、9条がこんな風に受け止められ始めているのなら…もう日本は9条を持つに値しない、勿体ない、情けないと思ったのを思い出しました。それは・・・その心情はわかるけれど、やはり間違っている・・と今は思っています。それで、お玉さんの記事によりますと、伊勢崎氏がソマリアの件で朝日新聞にも同じ内容の事を書いたら反響が大きく、たくさんの方からお叱りを受けたとあります。それで、俄然、この伊勢崎氏に親近感?を持ち、マガジン9条の中でいろいろさぐってみましたら「伊勢崎賢治の平和構築ゼミ」の中で興味深い対談がありました。

伊勢崎氏の第一回の対談相手がノルウエーのグンナー・レークビックという方です。3回シリーズの中で、9条のことを伊勢崎氏が外から見てどうなのか?を聞いています。「自衛隊を持った時点から違憲状態です」「その「違憲状態」のもとで、それでも9条は、何らかの役割を果たしてきたといえるのでしょうか」という問いに答えて「もちろんです。 一つは、技術的にはおそらく可能でありながら、核兵器を持とうという声があがらなかったこと。そして、兵器の輸出が禁じられているために、アメリカのような軍産複合体が誕生しなかったこと。」「 また、何よりアジア地域に政治的安定をもたらしたことも、大きな功績だと思います。9条は、日本が「第二次世界大戦中に犯した残虐行為を深く反省している」ことを示すものでもある。そのことが、かつて日本の軍国主義に苦しめられたアジアの国々への、一種の安全保障になっているのではないでしょうか
http://www.magazine9.jp/heiwa/index.html
9条を持ちながら世界でも有数の軍事力をもつ軍隊が存在し、政権与党は改憲を唱え9条をなくして先制攻撃もできる国に、やがては核兵器も持てる国になりたい人たちも、ともう息も絶え絶えのような9条でも、まだまだ外から見れば当の日本人が思っている以上の値打ちがあるということです。伊勢崎氏も最後は「つまり、9条がもたらすその「信用」を武器に外交力を発揮して、「外交大国」となる道を選ぶのか、憲法を改正して軍事大国となり、紛争地帯に軍隊を送る道を選ぶのか。日本はいま、その岐路に立っているといえるのではないでしょうか」と結んでいます。

私は護憲か改憲か、右か左か、民主か自民かではなくて、政治の問題、外交問題を平和的に解決したいのか、暴力的な方法、戦争への道を選ぶのかが問われているのだと思います。まず戦争はしない、戦争は真の解決にはならないと覚悟して解決の道を探っていくしかないということを300万人の尊い命の犠牲の上に私たち日本人は思い知ったのではなかったかという事をどんな時も思い出してほしいと思います。世界に訴えていけるのはそのことではないでしょうか。世界で初めての原爆の犠牲者をだしたのも日本です。世界の心ある人たち、平和を願っている人たちにとって、広島・長崎は私たちが思っている以上に聖地です。

伊勢崎氏は世界の紛争地域の武装解除をやってきた人ですが、9条の国日本、戦争をしない国からやってきた人というありがたい誤解?交じりの理解が信用となって難しい武装解除を成功させてきたと言っています。まだまだ日本の果たせる役割はあります。9条の値打ちを本当には知らない私たちが今の国際政治の舞台で自虐的、自信喪失から、逆に軍事力増強や核兵器保持を夢見て戦争への道を志向するのなら、それは、大きく見て世界はどっちへ向かって進んでいるのか、どっちの道を選べばいいのかを考えようとしないからではないでしょうか。

アフガンで農業をと願いながら非業の死を遂げた伊藤和也くん、世界の紛争地帯で戦う両者から武器を取り上げる仕事を成功させている日本人伊勢崎さん、こういう人たちの仕事がジャック・アタリ氏の言う「超民主主義」に当たると思います。NHKの今週から始まる土曜ドラマ[風に舞い上がるビニールシート」はあの緒方貞子さんのUNHCR国連難民高等弁務官事務所で働く女性を描いたドラマなので、これも楽しみです。