クリミヤのプラカードと「強がるリーダー」(内田樹氏)

◎昨夜の報道ステーションウクライナ情勢のコーナーでのこと。
クリミヤ自治共和国が取り上げられて映像が映し出されました。電話で専門家の解説を古館キャスターが聞いている間中、同じ映像が繰り返されました。
市民数名が掲げるプラカードというかポスターに書かれているのは「STOP  ASSISTING  FASISM IN  KIEF」。そしてEUと英国と米国国旗が描かれています。どう考えても「EUとイギリスとアメリカは、キエフファシズムに手を貸すな」という意味です。(FASISM のところがひょっとすると FASISTだったかも・・・写真を撮れば良かったのですが)。キエフファシズム?がわかりませんね。昨夜の番組でもこの件はノーコメントでした。ネットでは、今回の騒ぎ?の発端は武装したネオナチが扇動したという話も飛び交っています。
◎安倍首相は、アメリカが声明を出す時、事前に声がかかり、ロシアという名ざしを避けて「全当事者」にするよう注文したそうです。イラクの経験があったので慎重にということだったようです。今の所、ソチでのパラリンピックもボイコットしない方針だということです。エネルギー問題と、ネオ・ナチの動きも関係があるのかドイツのメルケルさんも慎重姿勢のようです。
遥か遠いウクライナでのこと。イラクの時のブッシュ・小泉のようなことにならないように、かといって西側諸国の一員でもあるし、武力侵攻には毅然とした態度が必要ですし、北方領土問題の相手国ロシアとは上手くやりたいし。でもあまりにロシア寄りではアメリカが今以上に不信感を持つでしょうし。(NHKの取材にやっとキャロライン・ケネディ氏が応じて、昨日国谷裕子さんのインタビューが放送されましたね。)  国益のかかる大きな問題ですので、こういう時こそ現憲法の平和主義の精神で日本がんばれ!です。


◎ところで、安倍政権の対韓・対中強硬姿勢を頼もしいと考え、安倍首相を「強い日本」の「強いリーダー」だという見方があります。「見方がある」というより、「普通の人はそう思ってるのじゃない?」とか「大多数の日本人はそうだ」(コメント欄)と、実際、私は言われているのですが。
日本の国益を守る心強いリーダーだと評価する人たちは、一方で、NHKの会長や経営委員に自分と同じ考えの人たちを送り込んで「政府が右と言えば右と言うNHKに」しようとしている事や、大勢の文化人が反対の声を挙げている秘密保護法や、日本人自身の基本的人権、民主主義、知る権利、報道の自由の問題、そして「汚染水のアンダーコントロール」発言に見る、福島原発事故封印、事故は無かった事にする問題については、触れません。
一方、コチラの問題こそ危険で重大だと思っている私は、今まで敢えて外交での日本の姿勢については触れないで問題点のみを挙げています。確かに、韓国にも、中国にも、アメリカにも、安倍政権はモノを言っています。でも、それは相手と話し合って理解を深めるためではなくて、私から見ると「言いがかり」に対する「反発」という次元の物言いです。

その辺のことを、内田樹先生はサスガです、「強がるリーダー」と「強いリーダー」は違うんですと。
長い歴史がある隣国であり、これからも100年、200年にわたってつきあっていかなければならないという発想欠けている安倍政権は外交を市場における競合他社とのシェア争いと同じように考えているのではないか。韓国や中国との「領土の取り合い」と経済競争における「シェアの取り合い」は次元の違う話だということを理解できていないように見える。>
<たぶん彼は株式会社と同じように、経営者に権限も情報も集約して、経営者の即断即決ですばやくものごとが決まる仕組みを政体の理想としているのだろう。会社経営の失敗はせいぜい倒産で済むが、国家の失政は国土を失い、国民が死ぬことさえある。その違いを理解していないのだと思う。>
<見通しの遠い政治家は、譲れぬ国益を守り切るためには、譲れるものは譲っておくという平時の気づかいができる。多少筋を曲げても国益が最終的に守れるなら、筋なんか曲げても構わないという腹のくくり方ができる。大きな収穫を回収するためにはまず先に自分から譲ってみせる。そういうリアリズム、計算高さ、本当の意味でのずるさが保守の智恵だったはずが、それがもう失われてしまった。最終的に国益を守り切れるのが「強いリーダー」であり、それは「強がるリーダー」とは別のものである。
●「内田樹の研究室」の3月5日の「毎日新聞のインタビュー」、全文はコチラ:http://blog.tatsuru.com/2014/03/05_0950.php
写真は、菜の花畑の菜の花とマンション前の黄色いマーガレット(ユリオプシスデージー
集団的自衛権について石破茂氏、「安倍首相も私も一致している。政治家としての悲願だ。今回やり損なうと当分は駄目だろう」と発言。「6日の石破氏に近い議員が作る『無派閥連絡会』の定例会合に初めて顔を出し」た席でのこと。「悲願」が、民意なのか?ぜひ考えてほしいですね。今のうちに「僕らの悲願を・・・」では道連れになりたくない者は…困ります。